「障子貼り」前編

 おつかいから帰ったおかあさんを待ち構えて虹子が言いました。

「ねえねえ。おかあさん。聞いて聞いて」

「帰るそうそうなんなの。あとにして頂戴。先にお肉をしまわないと悪くなっちゃう」

「今日ね。みんなの前で作文を読んだよ」

「あら。なんの作文?」

 スーパーの袋から買ってきたものを取り出す手を休めておかあさんが言いました。作文が苦手な虹子にしては珍しいことです。 

「冬休みにあったこと」

「冬休みにあったこと? なんかあったかしら?
 うちは服喪中で、どこにも行ってないわ。一体何を書いたの?」

「障子貼りだよ」

「あら。へえ。それってクラスのみんなが読んだの?」

「ううん。わたしとあと3人くらいかな」

「まあ。すごいじゃないの。選ばれたのね。読んで読んで」

 おかあさんがまるで自分の手柄でもあるように晴れがましい顔つきになって、引き寄せたダイニングチェアごと虹子の方に向いて座りました。

「うふん」虹子の小鼻が膨らみました。内心は聞いてほしくて仕方がなかったのです。「しょうがないなあ。じゃあ読むか。全部で5枚あるの」

「大作ね」

「障子貼り。4年1組 川原虹子」

「名前はけっこうよ」

 横やりを入れるおかあさんにもめげず、虹子が続けます。

「暮れの大掃除をしていたときのことです。
 
『うわあ。どうしよう。障子貼り』とおかあさんが言いました。

 障子貼りはいつもおばあさんの仕事です。おばあさんは、去年、夏の前に亡くなってしまったから、今年の大掃除で張替えする人がいません。

『ああ面倒くさい』とおかあさんが言いました」

「ちょっとタイム!」すかさずおかあさんです。

「なに?」

「あなた、それクラスのみんなの前で読んだの? おかあさんが面倒くさいって、本気で読んだの?」

「本気で読んだの。だって、おかあさんそう言ったじゃないの」

「……」



――つづく――


いえね。暮れに障子の張替えをしたものですから。
ブログでは新年出遅れましたが、リアルでは試写会が当たりまして幸先の良いスタートです。え?試写会?「ゴールデンスランバー」です。←勝ち誇ったように。
今年もよろしくお願いします。

今日のBGM:街でのひととき/ 夢幻黒姫




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この記事へのコメント

2010年01月20日 15:45
なんだかほんわか楽しそうなお話ですね。
どんな展開になるのか楽しみです。
身近な感じの話題が入りやすくていいですよね。

試写会おめでと~~♪
勝ち誇ってますね~新年から(^^v
七花
2010年01月20日 18:21
なんだかほんわか楽しそう……、って本当に思ったのですが、舞さんと同じなので書くのをためらいます。
「ゴールデンスランバー」ですか。伊坂さんですね。
いいな、いいな。とってもうらやましい。
銀河径一郎
2010年01月20日 22:42
障子貼りか、最近はマンションも多いからあんまり枚数ないのかな?
今時の障子はプラスチック入りがあって、ちょっと叩いてもびくともしませんね。そして糊じゃなくて両面テープを使うと、技術のない人間でもきれいに貼れます。
もちろん、こちらの話はオーソドックスな糊貼りですよね?
つる
2010年01月21日 00:54
■舞さん
ほんわかは、なんの破綻もないお正月らしいものを書きたかったからです。でも、その正月が過ぎちゃったよ。

宝くじは当たらないけど試写会だけは当たります。
新年早々自慢しちゃってごめ~ん。
つる
2010年01月21日 01:05
■七花さん
試写会はある意味フクザツな気分。そんでもコンパクトに良くまとめてあったわ。
映画を観るたびに話作りのヒントを貰います。早いうちに関心を引く小さなエピソードとか、当たりまえのことなんだけど、いざ見せつけられると、ちきしょうプロね、って歯噛みします。
スケールのでかい話を観て、スケールのちんけな話を書きます。中編後編もほんわかで。
つる
2010年01月21日 01:32
■銀河径一朗さん
ああ、そうか。マンションか一軒家か、書いてませんでした。掃き出し窓と腰窓で4枚あるの。ってここで説明してどうする。
プラスチックの障子、見たことないです。それだとお部屋に入っても木のにおいがしないんだろな。
そうそう、オーソドックスなほうです。糊作りからはじめるの。いってみれば、How to~ものよ。日本人なら誰でも知ってるって話。
銀河径一郎
2010年01月22日 01:07
説明不足でした。プラスチックは紙に練り込んであるみたいです。で紙が破れにくいんです。
枠は木でいいんです。
つる
2010年01月22日 21:29
■銀河径一朗さん
わたしのほうが早とちりでした。
「障子」とあって「障子戸」ではないんだから「障子紙」をイメージするべきでした。
紙にプラスチックを練り込む発想がすごい。わたしには決して思いつかない。サラダにりんごスライスくらい、ありえない。
ia.
2010年01月22日 21:35
あっ、新作だ(^^
つるさんの書かれるお母さんと娘さんの話、好きなんです。この二人は「おばあちゃんのミシン」と同じ親子なのかな?

障子貼りって年末の大掃除のクライマックスですよね。「そろそろお正月が来る~」と楽しい気分になる時期でもありますね。
うちには障子はなかったんですけど、一度だけフスマの貼替えを手伝わされたことがあります。
つる
2010年01月22日 22:08
■ia.さん
あ、そうね。「おばあちゃんのミシン」の子でもよかったわ。あの子は確か一人っ子の設定でした。今回は弟が登場するから違う家庭ということで。
いろんなこどもを登場させておこうと思うの。それで、最終的に書きたい「学芸会」のメンバーにするつもり。

お正月が来ると思っただけで気分が上がりました。それが億劫に思えてきたのはいつからかしら。

フスマのほうが上級者じゃん!

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