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zoom RSS 「毘沙門天AFFECTION」19

<<   作成日時 : 2009/08/25 00:53   >>

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「何したよっ?!」 

 幟旗(のぼりばた)を揺らした男が怒鳴った。背に差した旗には、《銀輪部隊 阿修羅》

 その男はチビ。そのチビより少しだけ大きな二人が、チビの突き出した金属バットにかたまっている。
 一人は八重歯で一人はメガネ君だ。二人の小豆色のスクールジャージは、隣の中学校のもののように見える。

「ななな何って」八重歯が、どもった。

「言ってみ。何したか言ってみ」

「ななな何も」メガネ君も、どもった。 

「なにも。じゃあねえよ。こっちはテメエらが何かしたから言ってんだろーが。撮ったんだろ? オレらを写しちゃったんだろ?」

「「写してません!」」八重歯とメガネ君が、ハモった。

 まわりの注目が二人に集まった。

「俺らじゃありません。ほんとです。だって電池ねえし。ほらっ」八重歯が自分の携帯をかざして無実を訴えた。そこは譲れないという意地。

「ほらっ、じゃねえしっ!」

 引っ込みがつかなくなったチビがバットを振り下ろした。地面を叩くいやな音、バットの先が僅かに跳ね上がった。

「ネットとか流されたら困んだよ」チビのバットが真犯人を探す。「ほんじゃ、おまえか? おまえか? うわっ!?」

 チビが慌てた。自分の首筋を抑えている。背後に、馬上から手を伸ばした長尾さんがいた。旗を抜こうとしている。

「ほう。見たこともない軍旗よの。どこのものじゃ」

 よく見ようとして彼女が馬をまわした。抜かれまいとしたチビは踏ん張りの甲斐もなく、天を仰いだ恰好で引きずられていった。それをアホのように見送る仲間。

「待てよ」「てめ。ふざけんな」「こらっ!」気を取り直した仲間がパラパラと駆け出した。野次馬の関心もそれに釣られて移った。 

「あぶねがったー」

 胸をなでおろした八重歯が後ずさりした後ろで何かがゴロンとする。「やべえ」スタンドをかけてあったバイクだ。

 驚いた八重歯が倒れたバイクを起こしにかかる。メガネ君もだ。俺も駆け寄った。八重歯の意地に共感したからだ。

「すいませんすいません」

 八重歯が俺に謝ってくる。俺をバイクの持ち主だと勘違いした。

 すぐに起こさないとプラグがかぶる。「こなくそっ」俺らがしゃにむに持ち上げようとしたのは、走り屋御用達(ごようたし)のカワサキ・ゼファー(ZEPHYR)1100モデル。2008年9月から強化された自動車排出ガス規制のために、2006年末のファイナルエディションをもって生産中止としたシリーズだ。そいつは容易に持ち上がらない。

「どけっ。コツがあんだよ」

 本当のバイクの持ち主みたいな男がでてきて言った。ライダースジャケットにカーゴパンツ。体に馴染んだジャケットの下の肢体は逆三角形を思わせる。ドレッドヘアは、頭頂部にトグロ調でまとめた不思議ヘアだった。
 反対側からフロントフォークをむんずとして難なくを引き起こす手があった。新兵衛だ。そのバカ力に目を丸くした逆三角が「あんがとよ」新兵衛が頷いた。

 ゼファーを跨いだ逆三角が、中央の長尾さんを横目に「誰だよあいつ?」リラックスしたかんじで新兵衛に聞いた。新兵衛は答えない。それを見た逆三角が、今度は小指を立てて、「おまえの、彼女?」
 意味が通じたのか、新兵衛は困ったように首を振った。

「照れんなよ。大変だな。おまいも」

 言ったそばから逆三角がエンジンキーを回す。転倒で濡れたプラグを心配した。一発でかかったエンジンに「フン」と言ってからアクセルを長回しした。マフラーから後方に勢いよく白煙が吐き出された。あたりがもうもうとする。

「すいませんでしたすいませんでした」

 アクセルをふかす本来の持ち主に向かい八重歯が平謝りになる。

 そこに、八重歯をどすんと押しのけた仲間が押し寄せた。八重歯、バランスを崩して場外。

「アスラ。どうします、アレ」「アスラ。このまま黙ってるんすか」「アスラ!」

 アスラを口にする彼らは、チビを引き回す長尾さんのことを言っている。アスラと呼ばれた逆三角は空ぶかしを繰り返した。

 それはアスラの奇抜なヘアスタイルのせいだ。頭頂部に乗った円錐状の突起はドレッドヘアをトグロ状に巻き上げたもので、その突起物はきっと、中肉中背の彼を実際よりも大きく見せるんだろう。黙している彼の佇(ただず)まいは、カリビアンの海賊のようでもあるし、興福寺の阿修羅像のようでもある。どちらにしても時代がかっている。

「やだっ! 修ちゃんっ!」

 今度は姉貴がゼファーの周りのライダースジャケットを押しのけた。「やだあっもおっ! 全然わからなかったよお! あたしよ。あたし。わかる?」

 へえ。これ阿修羅っていうのかあ。俺と同じ字なんじゃん。あ、俺、阿部修(あべしゅう)ね。ヨロピク。  

「あーっ?! 修ちゃん?!」

 俺が素っ頓狂な声になった。





――つづく――



フロントフォーク:前輪のタイヤを挟み込んでいる2本の棒のような部分。
押しがけ:自動車やオートバイなどに搭載されたエンジンを、車両を押して始動させる手段。今ならgyaoの昭和TVで「汚れた英雄」が見られます。草刈正雄ってかっこいい。
↓興福寺の阿修羅像参考URL
画像












やっと登場人物が出揃いました。おそいよ。
なんでここで阿修羅といわれても困る。時代モードに染めただけ。

【今日のBGM】おおシャンゼリゼ/ DUALSHOCKER
【今日の動画】

お断り:小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


【お知らせ】
今週末(8/29,30)高円寺の阿波踊り開催でーす。
以前、これを題材にした話を書いたのでお知らせしました。

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
暴走族vs暴走娘(笑)
また一波乱起きそうですね。バイクと馬の競争とか。

登場人物が増えてきましたね。
一人ひとりのディーティルは個性が出ていて良いと思うのですが、全体の流れがちょっとつかみにくい気がしました。映画のロングショットみたいに全体の位置関係の描写もあるとわかり易いかも、と思います。
ia.
2009/08/25 02:25
★ia.さん★
さっそくありがとう!
ここね。ほんと書けなかった。前回からずいぶん間が空いてしまったのは、アスラの登場にぐだぐだと悩んでいたからです。

>全体の流れ
>全体の位置関係
こういう意見助かります。どこに入れたらいいの?全然わからない。わかってたら書いてるちゅうの。自分で考えろなんて言わないで。教えて〜

>バイクと馬の競走
近い!
これだから本読みさんは!
つる
2009/08/25 22:05
私の理解力が足りなかったようです。12章くらいから読み返したら、ちゃんとわかりましたよ♪
『馬の周りを暴走族のバイクが囲んでいて、その周囲に見物人がいる(主人公たちもそこにいる)。のぼりを持ったチビは見物人のほうに行ってメガネ君たちと争いになった。アスラは馬を囲んでいる暴走族の輪の中に最初からいた』
こんな感じですよね。あれ?バイクはいつ倒れたの?
ia.
2009/08/26 01:34
★ia.さん★その1
わ!「12」から?申し訳ない!ほんと恐縮です。
もっとわかりやすく書けるように頑張ります。それでもね、言っていただいてよかった。この「19」は、国道のはじっこで起きたエピソードみたいなかんじなんだけど、そこが足りないかもって思えました。センターラインとか、そんな表現を足してみました。どうもありがとう!
バイクは、後ずさった八重歯が倒しちゃったんだけど、そこがうまく書けてないね。ちょっと検討してみます。
そうそう、この八重歯とメガネ君は「理想の高校生」のじゅんぺいと直毅の中学生版です。反骨精神はあるけどオッチョコチョイみたいな。

ところで、せっかくia.さんが来て下さったから、今日は本の話をしてしまおうかな。
今夏は、わたしにしては、たくさんの本を読みました。つづく
つる
2009/08/26 23:57
★ia.さん★その2

わたしはどうやらオッサンの書くもののほうが好きみたいです。
稲見一良、森博嗣、東野圭吾のそれぞれ何冊かと、いまさらですけど村上春樹の短編を読みました。男性の書くものは社会と深く関わりあってるから面白いです。それにタフにみえてものすごく繊細。そのたったの一文が読みたくて、ページをくくってしまうんだな。
ミステリの面白さもわかってきましたよ。
東野圭吾の「容疑者Xの献身」を映画と本の両方で見ました。映画は、偶然、YouTubeにあったのよ。10分ずつ小分けにされてたけど(笑)映像を先に見たから、一番驚く部分が文章で読めなくて残念だったけど、ああいう驚きって物語に必要なのねえ、と思いました。堤真一もかっこよかったし。それ関係ないか。
ia.さんの読書プログに「容疑者X〜」があったから、あとで寄らせていただきますね。

個人的には湿っぽくなりすぎない稲見一良の大ファンになりました。この人の書いたものって少ないのねえ。それがすごく残念。

なにが言いたいのか散漫になりました。ああ、そうそう。オッサン系でお薦め本があったら教えてください。それが言いたかった。
つる
2009/08/27 00:43
>オッサン系でお薦め本
オススメというより私の好きな本ということになりますけど(^^
宮本輝さんはどうでしょう?「優駿」や「流転の海」などは私の大好きな作品です。「優駿」は競走馬の話。「流転の海」は戦後の日本を舞台にした物語です。
東野圭吾さんなら「手紙」も良いですよ。「容疑者X〜」はトリック重視のミステリですが、東野作品はトリックだけでない驚きも魅力の一つです。「手紙」も映画化されています。
ia.
2009/08/27 02:14
★ia.さん★
わわ。さっそくありがとう!
さっそく2冊とも図書館に予約しちゃいます。タイトルに惹かれたのは「流転の海」のほう。こっちから先に読むって決めました。
彼の「泥の河」は読みました。以前、銀河系一朗さんに紹介してもらったんです。昭和のだるさを表したような作品だったわ。そうかあのへんを得意とする作家なのね。

東野圭吾は「手紙」も「白夜行」も映像から入ってしまったからな。すっかり知った気で本に手が伸びませんでした。そんでも「容疑者X〜」のこともあるから、「手紙」からチャレンジ。うわあ。忙しくなった。することがあるって素晴らしい。
ほんとにありがとう。
つる
2009/08/27 23:02
新兵衛、排気ガスの匂いが気に入ったのか(笑)

暴走族に知り合いがいたのか。
先の展開が楽しみです。

え、容疑者Xの献身が動画で観れたの?ラッキーですね!
銀河系一朗
2009/09/19 00:59
★銀河系一朗さん★
とうとう追いついちゃいましたね。
いつもありがとう。

新兵衛か。男子はメカに弱いのよ。
知り合いがいたんです。だって暴走族との抗争なんて書けないですから。

>容疑者Xの献身
ラッキーにはラッキー。でも疲れました。DVDのほうが楽チンだったと思うわ。
つる
2009/09/20 01:35

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