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zoom RSS 「毘沙門天AFFECTION」11

<<   作成日時 : 2009/04/27 00:55   >>

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 屋根瓦の縁で鳴く梟。それに、耳だけ傾けた長尾さんが、確信に満ちた声で言う。

「新兵衛じゃな」

 他に誰がいんだよ。

 ばさぁ! 薄闇を暗幕の塊が舞い降りた。

 長尾さんの足元に猫の着地を決めたそれが、すぐに面(おもて)を上げる。丸めた上半身は、それでも長尾さんの腰よりずっと上だ。それが新兵衛だった。

「な、なんて……」かっこいいの? 意表を突かれて、姉貴がニ・三歩よろめいた。

「たわけっ!」長尾さんの罵声。華奢(きゃしゃ)な体と不釣合いな、気合が入った声が続く。「おまえが遅いから、この姉様がわしの身代わりに襲われたぞ。ばかめばかめ!」

 どこから出したのか軍配のようなもので、びしいっ、びしいっ、何度も新兵衛を打ち据えた。うさ晴らしとでもいうんだろうか。長尾さんのご立腹に新兵衛はされるままだ。Mかい!

「やめて。なんでもなかったからいいの」気を取り直した姉貴が二人の間に割って入る。

 そんな姉貴を見た新兵衛が姉貴に向かい、申し訳ないというふうに頭を下げた。その新兵衛に長尾さんが説明する。「中澤心殿じゃ。馳走になった」それから俺を見て、「これはその弟の幸四郎じゃ。わしは、はじめ、おまえの弟と思ったぞよ」 

 今度は俺を見た新兵衛が、姉貴の半分くらいの下げ幅でどうもとした。なんだ感じ悪い。そいつは挨拶するのに目線も切らなかった。俺もそんな相手同様に顎だけで挨拶だ。どうも。

 そのとき、ジージーと切れかけの音を立てていた水銀灯が、ポンとついた。ご臨終を前に、ひと際明るくなったそれが、ゆっくりと立ち上がった新兵衛の風貌を照らした。
 油断ならない目で俺にメンチを切っていたのは鳶色(とびいろ)の瞳。束ね損ないの緩やかなウェーブが頬にかかっている。髪は俺より明るいブラウンだ。 

 全然違うじゃん。
 
 長尾さんは俺と新兵衛が似ていると言ったけど、それは背丈だけだった。顔も手足もまるで別人。袖のない着物からつき出たそいつの上腕と、短い裾からずどんと伸びた足の筋肉を見て、まるで鍛えあげられた短距離選手だと思った。
 そんな両手足は、薄汚れて蓑虫(みのむし)のような色をしている。はだけた彼の胸元から、じゃらんとした鎖帷子(かたびら)がのぞいて見えた。
 それからそいつは、ひと目でハーフとわかる細く尖(とが)った鼻と顎の先をしていた。

「して、あやつらはどうした?」長尾さんの言葉に振り返った新兵衛は答えない。「政景の回し者か?」 新兵衛が首を振る。「わからんのか?」新兵衛が頷(うなづ)く。「ばかめ。なんのために、おまえらを従えてきたのじゃ。『うつけ』以外の何者でもないわ」

 彼女の言いたい放題に、言い返せないでいる新兵衛。これが忠臣というものか。

「いい感じじゃない。あの二人」俺に寄ってきた姉貴が言う。

「どこが?!」

「だってほらほら」姉貴の目が二人を見ろといった。

 新兵衛が長尾さんを指して、その格好は? という仕草をした。「これか? どうじゃ?」長尾さんがヘッドフォンに手をかけ、コスプレを見せ付けるようにポーズを取った。それを見た新兵衛の瞬(まばた)きが増える。照れたようだ。「心殿に借りたのじゃ。ちいとばかしスースーするが、動きやすいことこのうえない」

 喋る長尾さんの前でぶっきらぼうに立つ新兵衛。彼は彼女の口元ばかりを見つめた。それで気づいた。

 聞こえない。 

 言い返さないはずだ。知った俺が姉貴を見る。頷き返す姉貴は、俺より前に気がついた。
 だからか。だから挨拶で視線を切らなかったのか。俺が何か言うかもしれなかった。そうか。それが彼の自然なんだ。

 ついこの前のことだ。俺たちのオフクロは福祉関係の公務員だった。その勤務先の福祉施設でクリスマス会があったから、ボランティアで参加した俺と姉貴は、トナカイ1とトナカイ2になった。そこで、新兵衛のような子供たちに会ったんだ。
 人と違うってことは、そうでない人からみたらさぞ不自由なことに見える。でも違った。同じだった。髪の色や顔形がそれぞれ違うように、それだけのことだ。だって、現に俺らは彼らとたくさんの話をして笑った。

 長尾さんと新兵衛もそうなんだ。






――つづく――



うつけ(空け/虚け)→1 中のうつろなこと。から。からっぽ。2 愚かなこと。ぼんやりしていること。また、そのような者。まぬけ。(大辞林より)
軍配→(軍配団扇の略) 中世末から近世、武将などが用いた指揮用の具。鉄・皮・木などでうちわ形に作り、日・月・二十八宿などを描き、全体に黒漆を塗る。陣扇。(大辞林より)
鎖帷子(くさりかたびら)→筒袖の帷子に鎖をとじつけた防御具。鎧(よろい)や衣服の下に着込むので着込(きご)みともいう。(大辞林より)
↓こんなの
画像







 えーと。新兵衛は城田優のイメージで。うまく書けなかった補足じゃ。
 どんどん書いてどんどん直す方向でいくことにします。びびってたら書けない。


今日のBGM→きみにしか聞こえない/ななまる
今日の動画→ないんだ。ごめん。

小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。

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コメント(12件)

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噂の新兵衛がいよいよ登場ですね。水銀灯のなかに浮かび上がる描写がカッコいいですね。お姉さんがよろめくのもわかります。
それにしてもこの姉弟、他人に対して偏見を持たないところが好感度高くて良いですね。
ia.
2009/04/28 02:11
城田くんかぁ。
私はウエンツかと思ってた(汗

さすがつるさん、各所に折り込まれた表現が効いてるね。
水銀灯が最後の命を燃やして
一際光を増す感じとか
猫のようにひらりと着地する感じとか
本当に随所にね、
すべてが目に浮かぶよ。
私の上辺だけの浅い時代物とは違って
のめり込んで呼んじゃいます。
続きが楽しみ(^O^)

2009/04/28 11:16
ia.さん、いつもありがとう。こうして当たりまえのようにつけてくださるコメントに、いつも感謝しています。
主要人物の登場が遅くなってしまったわ。連載だからね。毎回、原稿用紙2枚程度って自分で決めてたら、こんなです。
かっこいいコなんてそうはいないし、ふつうのコを書いてもいいんだけど、やっぱり、書いててわかったのね。かっこいいコのほうが全然いいんです。
>偏見をもたない
そこを、好感度高い、と取ってくださってありがとう。これは、そうしないとうまくストーリーが進められないから、ご都合主義でそうなっただけです。バランスを取るために、偏見を持った人を出したほうがいいかな。いや、そうすっと長くなるか?せめて今回は、20話で終わりたい。
つる
2009/04/28 22:59
舞さん、いつもありがとう。ほんとにありがとう。
鬼太郎(ウエンツ)は甘い感じがするね。ここはも少しクールで、人を寄せつけない印象の子がいいかなと、彼(城田優)にしました。
舞さんはコメントが上手です。すっかりいい気になってしまったわ。そんでも比喩の乱用は手抜きそのもの。やはりもっと自分の見たままを文章で綴らないとね。
舞さんの時代物は叙情的です。流れるように読みやすい。そういうのを読んでから自分の文を読むと、つっかかります。なんか雑なのよ。言葉も足りてないしね。凹みます。まあ、この話に関しては、男目線だから、大雑把でいいかなと。だけど、男はロマンチストですからね。決めるところは決めないと、って思ってます。うまくいくかな。
>呼んじゃいます
呼んで呼んで
つる
2009/04/28 23:20
あ、遅かった(>_<)

呼んじゃいます×
読んじゃいます○

2009/04/30 01:52
ごめんごめん舞さん。
なんかイタズラ心がおきたのよ。許されて。
つる
2009/04/30 23:11
新聞小説が600字くらいらしいですよ。
連載だとこれくらいの分量が読み易くて助かります。でも小説の長さを調整するのって大変でしょうね。
うちの読書系ブログは、あらすじ込みで400字前後。PCでスクロールなしで読めるサイズを心がけています。それでもケータイから見るとやっぱり長いんですよね。大した内容でもないので、もっと短くならないかと企んでいます(笑)
ia.
2009/05/10 02:15
★ia.さん
わー。こういう話がしたかったです。そっかぁ。スクロールなしは親切だなあ。行間、詰めよっかなあ。
え〜?あらすじ込みの400字前後は辛いなあ。それってすごいことだと思うわ。縮める作業のほうが大変だもの。
ia.さんの読書系ブログはウェブリブログのBBSリーダーに登録してます。だけど皆さんみたいにコメがつけられないの。読んでないんだもの。手帳にia.さんのお薦め本のメモが増えるばかりです。
つる
2009/05/11 02:10
行間は今のままのほうが読みやすいですよ。びっしりと文字が詰まっていると、なんとなく威圧感を感じますからね(笑)
うちのブログは「あの本が読みたいんだけど、面白いのかな?」という時にご利用ください。話題の本にはなるべく目を通すようにしています。「話題作なのに記事がない!」という場合は、"記事にできないほどのクソ本だった"という可能性があります(笑)
ia.
2009/05/12 00:22
★ia.さん
ありがとう。行間については、わたしもそう思いました。
「一記事、原稿用紙二枚程度を目安」な〜んていったけど、それは丼勘定でした。そのときの気分で長短あります。行間は今のままにします。長かったらごめん。スクロールしてちょ。
うん。ia.さんのブログを羅針盤として、話題作に付いていけるよう、心がけます。
>クソ本
そうかそうか。そういうケースもあるのね。
でも、ia.さんが「クソ」だなんてビックリ。そういうイメージないです。
つる
2009/05/13 01:50
新兵衛、当時では巨人ですね。
自分たちは変な顔だと信じてる美男美女の関係はどうなるか、興味津々です。
梟の声は笛でも使ったということですね。

ネットでは長いと読まれない(アクセス数減)というのが辛いですね。
銀河系一朗
2009/09/02 22:53
★銀河系一朗さん★
いつもありがとう。
うん。巨人ちゃ巨人。デカイのに忍者にしちゃった。これじゃ、天井板を踏み抜いてしまうわ、きっと。
新兵衛と長尾さんの関係はどうにもならない。主従関係だもの。梟はね、新兵衛の声帯模写ね。聴覚障害者の設定だけど、声はだせるんです。だけど声量の調節はビミョー。
そうねそうね。長いと、なかなか読んでもらえないわ。長くても読んでもらえるように精進します。
つる
2009/09/04 02:28

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