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zoom RSS 「毘沙門天AFFECTION」6

<<   作成日時 : 2009/02/21 00:29   >>

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 馬の話は本当だった。

「――今日午後三時過ぎ、赤信号で停車中のトラックから、大井競馬場に搬送予定の馬が一頭逃げ出しました。馬は――」

 夕方のニュースだった。みんなが集まりだして誰かがつけたホームカラオケ用のテレビが映しだしたのは夜の第一京浜。新米アナウンサーがカメラ目線で伝える現場中継のバックを指した遠藤が、

「ここ、ここっ! 俺が見たとこっ。青物横丁に入る銀行の角――」

 一人で大騒ぎだ。

 表通りの第一京浜を川崎方面に向かって少し行き、立会川の信号で左折したところに大井競馬場があった。東京には二つの競馬場がある。ひとつは府中競馬場で中央競馬、大井競馬場は地方競馬だ。

「あーあー。ただいまマイクのテスト中マイクのテスト中」

 カラオケマイクを目ざとく見つけた金子が音量を最大にして言った。もうひとつのマイクに遠藤が「ぶんぶんぱっ! ぶんぶんぱっ!」ボイスパーカーッションで唾を飛ばす。

「うるせー!」俺が二人に怒鳴ってから、

「叩いてんじゃねーよ! 早く用意しろ!」隅っこの太鼓の達人にも声を張り上げる。

 他にもまだいた。長卓を拭くはずの奴らが、布巾の投げ合いになって、それがプロレスごっこになった。「てめえら殺す! ここにある飾り物、ひとつでも壊したらぶっ殺す!」なんだか俺は忙しい。

 そこに、青白い顔したコンドーが、ラジカセを手に現われた。

「なんだよ〜。なんで俺を仲間外れにするかな〜」 

「わーっ! インフルエンザキター!」みんなしてコンドーから逃げ回った。

「直ったんだよ〜。入れてくれよ〜」俺らを追い駆けてくるコンドー。

「聞いてねえよ」「コンドー。またコンドー(今度)」「帰れよ」誰かの一言で「カ・エ・レ! カ・エ・レ!」手拍子の帰れコール。踏んだ地団太に、畳から埃が舞い上がった。

 新年会とかいったけど、新年会じゃなかった。三学期になって一週間も経ってた。
 それに、俺ら、もうサッカーなんてしてなかった。中三だったし、正月が高校受験の冬期講習で潰(つぶ)れたから口実は何でも良かった。みんなでバカ騒ぎしたかっただけだ。

「さあさあ、湯豆腐ですよ。どいたどいた」

 そう言って土鍋を持った長尾さんが入ってきた。小袖をまとった体つきがさっきよりひと回りも大きくなっている。よく見たら姉貴だった。ダイナマイトボディの姉貴。そのコスプレ癖を知っているサッカー部の連中は気にも留めない。キッチンに戻りかけた姉貴が鍋つかみの片方を落とした。拾った鍋つかみを渡して俺が聞く。

「どしたの。それ。あいつの(着物)だろ?」

「うん。借りた。だって、カワイイんだもん、これ。だから、あたしの服を貸しといた。ねえ。それよかあの子、女の子だったのね。びっくりしたわあ。それでね。頭巾を取ったらこ〜んなところまで」自分の踝(くるぶし)あたりを指して姉貴が続ける。「髪があるの。百人一首のお姫様みたいなロングヘアなのよ」

「あ〜」驚かない俺に、姉貴がガッカリした顔になる。

「知ってたの? なんだ。つまんない。でも何で(女って)わかった?」

「何でて。な、なんとなくだよ。なんとなく」まさか、狭い毘沙門堂で肩が触れたとき、その感触が柔らかかったからだなんて言えなかった。また誤解されるだけだ。

「ふうん。ああ、そうだ。なんか楽しそうだから、あたしたちも混じるね――」

 勝手に合流を決め込む姉貴の言葉に被せて、「遠慮しとく」即答だった。

「あれえ。今、何て言ったのかな?」

 姉貴の視線が意味深にテーブルのオカズたちに注がれる。そう借りがあった。

「わかった。わかりました。だけど食ったらすぐ行けよ」

 誰だって身内に宴会芸なんて見られたくないだろう。

「さあ、どうでしょう?」

「勘弁しろよ。あれ?」

 まわりが静かになっていることに気づいて俺が振り返る。

 いつのまにか所狭しと持ち寄りの食いもんや飲みもんがテーブルの上に並べられている。それを前に、騒いでいた連中が妙にかしこまって、電線の鳩みたいに一方向を向いていた。

 その先にお誕生席に鎮座するツインテール。それを見て俺がコケる。
 姉貴が貸したのはさっきまで自分が着ていた巫女の衣装ではなく、いわゆる二次元の世界の人の衣装だった。アニメキャラでフィギアにもなってる、あの有名なアイドルのコスプレ衣装だ。

 ツインテールがおもむろに立ち上がった。とんでもないミニスカート。そこから内股のニーハイソックスが伸びて、向こう側の景色が見えた。

 その彼女が片手に持った長ネギを差し上げて、

「皆の者、今夜は無礼講(ぶれいこう)じゃ!」って言うから、

「「「「「「「「「おおーーーっ!!!」」」」」」」」」

 鳩が一斉に飛び立ったみたくなった。


 無理もない。


 初音ミクが言うんだもの。


「ああいうのを緑の黒髪って言うんだねえ」

 そんな長尾さんの揺れるツインテールを見て、姉貴が呑気な声を出した。





――つづく――



ニーハイソックス→ひざ上まである長さの靴下のことです。
無礼講(ぶれいこう)→上下の別をたてず、礼儀ぬきでする宴会。(新選 国語辞典/小学館)
初音ミククリック。

 長尾さんにコスプレさせたくて、こんなです。ああ満足満足。
 それにしても、ミクミクはかわいいですねえ。ネギがツボだわ。

今日のBGM→みくみくにしてあげる♪【してやんよ】/ 誠☆氏
今日の動画→知ってるつもり「上杉謙信」D(10:01)

小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
この馬の話って、もしかして長尾さんが乗ってきてしまったんでしょうか?
新年会、異様な雰囲気ですね(笑)
初音ミクって、ブログのテンプレで見たことがありますよ。お姉ちゃんのコスプレに付き合わされて、長尾さんもノリノリですね♪
でも長尾さんが女で武田信玄ってことは?謎がいっぱいです〜!
ia.
2009/02/24 03:26
ia.さん、いつもありがとう!
馬ね。長尾さんか新兵衛を乗せたくて出してみた。もしかしたらスノーボーイのときの鷹の剥製と同じで、使わないかもしれない。いや、使う。使わなくては。
初音ミクって可愛いね。見たら、わたしでも萌えました。だから、タイムトラベルした長尾さんに着せるならこんなのって決めてました。その長尾さんの謎なんだけど、説明しなくてはならないことがいっぱいあるわ。ちびちびと言い訳していこうかと思っていたけど、そういうのってラストでいっぺんにしたほうがいいのかしら。わからないわ。ほんと、そこ、悩みどころです。
つる
2009/02/24 22:53
ラストまで謎が伏せられると、読み手の興味を誘って引っ張っていけるというメリットがありますよね。ただ長くなると前の方を忘れちゃいそうです。印象付けが大切ですね。
一つずつ説明する場合は、謎を見失うことなく追っていけますが、説明が繰り返されるので冗長的になってしまう可能性もありますね。見せ方が大事になってきそうです。
大きな事件が起こってその解決方法として謎が明かされていく、などという方法もありそうですね。少々こじつけっぽくなりそうですが。
結局は作者の方がどんな演出をしたいか、それに尽きると思います。頑張ってくださいね♪
ia.
2009/02/26 02:16
ia.さん、ありがとうありがとう。こういうの嬉しいです。それで、迷ってたけど決めました。ちびちびと小出しにします。それが一番わたしらしい。そもそもが、大したお話じゃないです。お正月だったから、楽しい新年会を思いついて、たった一晩のできごとを十話程度に書きたかっただけなの。なのにまた長くなる。
演出かあ。狙ってうまくいったらどんなにいいでしょう。いつもみたくラストだけ決めて、あとは思いつくまま書くだけよ。へんだったらあとで直す。最近思うのよね。力みすぎると何も書けなくなる。てきとうに脱力して流すこと覚えました。あとでそちらに伺います。
つる
2009/02/26 23:09
それにしてもこの長尾、ノリノリである。
お前らミックミクにしてやんよ
 ∧_∧
 ( ・ω・)=つ≡つ
 (っ ≡つ=つ
 /   ) ババババ
 ( / ̄∪

URL
2009/03/08 20:34
鯨さん、いつもありがとう。
やっぱ鯨さんには読まれてるわ。そのセリフ、夜の第一京浜で長尾さんに言わせます。
AAっていうの?うまいね。わたし、コピペしてもすぐ崩れちゃう。なんか足りないんだな。
つる
2009/03/08 22:34
謙信が初音ミクとは、すごい展開です(笑)
そのまま、川中島にタイムスリップして、信玄にねぎとツインテールの三連打で斬りつけてほすいです(爆)

銀河系一朗
2009/08/18 01:25
★銀河系一朗さん★
ここにもありがとう!
そうよ。インパクトないとつまらないからコスプレさせました。
ていうか、しまったー。ここいらへんはコソコソと書き直しを目論んでいる箇所だったんです。先に読まれた!
このへんは読んでいてつまらないです。テンポが悪いのかな。
>川中島
逆タイムスリップは考えてなかったなあ。
つる
2009/08/19 01:52

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