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zoom RSS 「毘沙門天AFFECTION」2

<<   作成日時 : 2009/01/31 01:12   >>

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 満月が毘沙門堂(びしゃもんどう)に続く小径を照らす。

 俺の家は真言宗の流れをくむショボイ寺だ。第一京浜と、それに並行した旧東海道の間にある。この辺りに社寺は珍しくなかった。
 この寺の敷地の半分は立ち枯れの林で、少し行くと毘沙門堂という名の俺んちの物置があった。それが子供の頃からの俺の秘密基地。笑うな。

 ギィと開けた扉の先で何かが飛びのいた。その気配に腰が抜けそうになる。お化けがだめ。トイレの窓から見える満月はのっぺらぼう、幼稚園のころ兄貴たちが言ってるのを聞いて未だに信じてる。六畳ほどの暗闇から低く抑えた声がした。

「なに奴じゃ?」

 ふう。人間なら問題ねえ。

「びびったー。シャレになんねえよ。遠藤」

 これからサッカー部の新年会だったから、近所の遠藤が来て隠れてんのかと思った。

「名を名乗れ」

「いい加減にしろよ。おまえさー」

 薄く目が慣れて、ガラクタを跨ぎ、中央にぶらさがる裸電球のスイッチに手をかける。あれ? おかしいな。何度捻ってもつかない。球切れだ。その姿勢のまま固まった。目の前に伸びた切先が、扉から差し込んだ月明かりをリアルに反射した。その刀身を辿(たど)って、


 だwwwwwwwwれwwwwww(誰)?


 暗闇に「てるてる坊主」がいた。遠足前に作るにしてもでかすぎだろ。そいつが俺の鼻先に突きつけた刃をクイっとして、

「名を申せと言っとる」 

 ああ、姉貴のコスプレ友達か。プッツンが多くて困んだよな。ここは合わせとこ。ガバっと体を開いた俺が額を床にこすりつけて、

「申し訳ございません。わたくしは弟の幸四郎と申します。どうかお手打ちだけは勘弁してくださりませ。わたくしには、そう、夢がございます。全国制覇です。それが叶うまでは死んでも死にきれませぬ。それは大切な仲間との約束でございましゅる」最後、噛んだ。

「ほう。そなたがしんべえの弟か。おもしろい奴じゃのう」

 いや、あんたもかなり。

「して、いかように全国制覇をするのじゃ? 聞かせてもらおうか」パッツンと刀を鞘に収めるような音がした。
 すぐに衣擦れがして鼻先の埃にむせたのは、てるてる坊主がそのへんのガラクタに腰掛けたんだろう。

 もう、やめようぜ。

 顔を上げた俺の前に時代錯誤な奴がいた。
 カラフルな小袖に大きな白衣(しろぎぬ)を被っている。そのぐるぐるとした被り物の下の顔は姉貴が持ってるお雛様だった。白くて小さくて均整がとれている。

 あれ? 姉貴のダチ(友達)で、こんなかわいい子いたっけ?
 
 コミケで知り合った新しい面子(めんつ)だろうか。
 漫画から始まった姉貴のコスプレ。今は「キター!  犬夜叉ブーム!」だそうだ。

「申せ。なに、遠慮はいらん。此度(こたび)は世話になる。わしは長尾景虎(かげとら)じゃ」

 



 あ、長尾さんね。





――つづく――



コミケクリック。
犬夜叉漫画です。
↓春日神社にある上杉謙信公像。頭巾巻は「行人包」というそうです。
画像






それにしてもベタな出会いだわ。

 上杉謙信は四男または三男といわれています。使いまわしキャラの中澤先輩は、四男の設定でしたから、ちょうどよろしい。名前も決めてなかったから幸四郎ってしました。
 このあたりの歴史に詳しくないから、そのうち綻(ほころ)びが出るわ。きっと。

【補足】上杉謙信は、享禄3年(1530年)1月21日、越後守護代長尾為景の四男(または三男)・虎千代として春日山城に生まれました。14歳で元服し、初名は景虎(かげとら)のちに上杉政虎、最終的に上杉輝虎または上杉謙信となります。



今日のBGM→にんげんっていいな/Yasu-K
今日の動画→知ってるつもり「上杉謙信」(10:01)@今日から6回に渡り、お送りします。ネタはほとんどここ。


小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶりです。
新作はスポーツものかと思いきや、SFタッチの歴史ものなんですね。
戦国武将といえばNHK大河の「ちょっとイケてる風の武将」というイメージがありますが、実際は現代人とは顔立ちも違うし、体も小さかったんだろうなぁ。このギャップがたまらなく面白いですね。
余談ですが、フィギュアスケートの織田信成くんが教科書に出てくる織田信長の肖像画にそっくりで、当時の画家の画力と遺伝子の底力に驚きました(^^
ia.
2009/01/31 13:39
ia.さん、いつもありがとう。
来てくださって嬉しいな。そうなの。スポーツものじゃないの。SFタッチの歴史もの、まあ、そんなふうに書いてくださるとかっこいいわね。でも時代考証とかあんまりしてないの。ia.さんが言われる通りよ。現代人と顔立ちも体つきも、それから寿命も違うから大人になるのが早いのよ。
織田選手の話は面白いね。確かに似てるかも。この時代は魅力的ですよ。下克上とかってアメリカンドリームみたいな感じですもんね。
そうそう、お薦めくださった「桃山ビート・トライブ」半分ほど読み進みました。タイムリーだったわ。やっぱあれね。当時の単語や言い回しをよく調べてあるわ。例えば「御土居(おどい―洛中と洛外を分ける防壁)」とか、そういう単語ひとつとっても、そう書いたと書いてないじゃ雰囲気が全然違うもの。ほんとそこ大事だと思った。この本を教えてくれてどうもありがとう。
つる
2009/01/31 23:47
む、毘沙門堂にいたんですね、謙信公が!
そういう流れですか。
でも女性なんですよね。
どう展開してゆくのか楽しみです!
銀河系一朗
2009/08/12 00:25
★銀河系一朗さん★
いつもありがとう。
そういう流れなんです。上杉謙信を名乗る前の、元服まもない影虎にして、上杉謙信女性説を考証していきます。なんちゃって。
展開はベタです。出会いと別れ。知り尽くした品川を舞台にしました。
全然関係ないですけど「地下鉄(メトロ)に乗って」の中でちらっと新中野が舞台になってました。そこいらマイ実家テリトリー。「鍋横」の呼称は駅にも住居表示にも残ってませんから、やられた感でいっぱいになりました。悔しかったわあ。
つる
2009/08/12 21:19

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