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zoom RSS 「毘沙門天AFFECTION(びしゃもんてんアフェクション)」1

<<   作成日時 : 2009/01/24 20:44   >>

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 あぢー。

 あっちーな。

 なんなんだよ。くそっ。

 焦げ臭いのは太陽が肌を焼くから、川向こうのバーベキューなんかじゃねえ。

 河川敷に近いグラウンドは容赦ない熱気を帯びて、散水なんかとっくのとうに蒸発した。スパイクの底が乾きすぎたグラウンドに砂埃をあげた。

 試合中だった。

 俺が送ったボールの視界の隅に立ち上がった監督が見えて、そろそろ前半終了かなと思う。
 すぐにピッピーとホイッスルが鳴って、俺らはベンチに戻った。

 前半を1−2で折り返す。
 
 真夏の地区予選。第7地区の勝ち残りを決める最終試合の相手はアホチャウカ高校。

 俺らナンジャラホイ高校は試合開始5分に1−0で先制したものの、ソッコーでアホチャウカに逆転された。




「おまいら、川中島の戦いを思い出せいっ!」10分のインターバルに監督が言った。

 工エエェェ(´д`)ェェエエ工

 フォーメーションのことかと思ったら、そんなのだ。給水中の本田が吹き出して、みんながそれから顔を背(そむ)けた。奴に同調しないよう首筋に水をぶっかけたりして必死に笑いを堪(こら)える。

「四度目でどした? 毘沙門天(びしゃもんてん)は武田軍に負けたかっ?」監督は日本史の教師でもあったから、河川敷というロケーションに、俺らを上杉軍に見立てた。それと、アホチャウカと試合であたるのは、関東選手権を含めて四度目のせいもある。

 武田軍と上杉軍は、五度に渡り戦っている。いわゆる川中島の戦いと呼ばれるのは、中でも一番壮絶だった四度目の合戦を指している。そんくらいは知ってた。戦場で上杉軍が掲げる旗には、毘沙門天の「毘」の字が書かれていたという。
 
「中澤!てめっ。また、ガム噛んでんのか!」欲しい答えが引き出せなくて、監督が俺に八つ当たりだ。

「噛んでません」俺が舌を出して見せる。

「違うだろ。少ない軍勢でどうした? え? 言ってみろ! 何だ? 何が上杉軍を駆り立てたんだ?!」俺をスルーした監督が、さっきの続きを言った。

 少ない軍勢、のところで松岡が下を向いた。前半のイエロー2枚で退場をくらったからだ。だけど、松岡のファールがなかったら、俺らは確実に追加点を許してた。
 無名都立高の悲しさ、ナンジャラホイに補欠部員はいねえ。後半は10人で戦う。

 監督が言いたいことはわかった。ここまできたら戦略うんぬんよりモチベーションだ。
 俺だって、トルシエみたいに試合中にボードでポジション確認を促すのはどうかと思うよ。けど、川中島はねーよ。昔過ぎだろ。

 おかげさまで久しぶりに思い出した。おまえのこと。
 
「ちったあ、頭、使えや。あたま。ついてんだろ。頭がよ! こ・こ・に・さ!」

 監督の人差し指が、何度も自分の頭に刺さるようにしたから、俺は本気で監督の突き指を心配した。 




 後半5分、松岡が抜けたところをつかれて、俺らはあっさりアホチャウカに1−3と突き放された。だけど俺らも意地がある。すぐに巻き返して2−3。サイドチェンジからの攻撃がうまくいった。

 残り時間15分。バックスの俺らが前線に送るボールがことごとくカットされる。その度に俺の頭に血が上った。仲間内の小さな舌打ち、無駄にスパイクを蹴り上げる仕草、みんなも相当熱くなってるのがわかった。

 パスが通んねえのは、手の内が読まれてるせいだ。燐校のアホチャウカは格好の練習試合相手だったし、地元だから情報なんて筒抜けで、勝ったり負けたりのゲームに、互いに目の上のタンコブ的な存在だった。
 この試合には、都予選出場がかかっていた。全国高校サッカー選手権大会。東京には、300近い学校のエントリーがある。そこを8つに区切って前年の8月から地区予選が始まる。

 そこから抜け出た50余りの学校が、秋からの都予選に出場できる。そして、それらがAとBの2つのブロックに分けられ、それぞれの優勝チーム2校が晴れて全国に行けるわけだ。全国大会が開催されるのは真冬の年明けだった。

 我慢しどころの時間帯。向こうは逃げ切りたいし、こっちは追いつきたい。追いつけば同点でPKが狙える。逆転するには時間がなさ過ぎた。PKは時の運とかよく言われる。だけどやらないよか全然ましだ。

「サイドチェンジ! サイドチェンジ!」

 バカの一つ覚えみたいにタッチラインから監督が怒鳴る。やれたらとっくにやってんよ。もう通じねえんだよ。
 相手ベンチが動いて新戦力が投入される。戦車みたいな野郎が2人、ピッチに入ってきた。守備を固める気だ。

 なあ、

 こんなとき、おまえだったらどうする?

 そういえば、おまえ、正面から切り込んだんだってな。あれから姉貴と「You Tube」見たよ。

 おまえ、スゲー。ほんとスゲーよ。

 真ん中。俺もそう思う。

 監督はああいうけど、真ん中しかねえんだよ。 


 
 遠藤と中村が囮(おとり)になってアホチャウカの中盤を揺すぶってる。

 俺の左手が、ずれた右腕のキャプテンマークを押し上げる。








――つづく――



affection→(人に対する)愛情。(学研 スーパーアンカー英和辞典)
インターバル→前後半の試合の合間。
トルシエ→フィリップ・トルシエ。元日本代表の監督。こんな人。
PK→ペナルティキック。高校生の試合時間は、その大半が40分ハーフの80分です。稀に決勝とかだと90分ある。時間内に点差がつかなくて同点なら、ああっメンドクサ!ここ見て。
サイドチェンジ→攻めているサイドと逆のサイドに出すパス。参考URL
川中島の戦いクリック。




 こんにちは。
 やっぱ連載です。「上杉謙信女性説」を下敷きにしたお話が浮かびました。コンセプトは特になし。強いて言えばなんだろ。ねえよ。暴走の予感すらあります。サッカー色も薄いわ。  
 主人公は「理想の高校生」の中澤先輩です。使いまわして言うなよ。新たな設定ってメンドイのよ。彼が一年生のときのお話です。

今日のBGM→Johnny B Goode/京ちゃん
今日の動画→THE GEESE−卒業式のフォーメーション/05:35

小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
トルシエは極端だけど、日本にはああいう口やかましく言ってくれる監督が向いてると思います。日本人は「自由にやれ」と言われるとYeah!じゃなく、そんな見捨てないで下さい! て悲観的に捕らえるから。
言われたことを集団の中で実行するのは得意だけど、自分で切り開くのが苦手って面もあるし。

川中島の謙信?
敵の作戦を逆手に取った奇襲戦法を期待しろということですね。

URL
2009/01/24 22:46
鯨さん、いつもありがとう。
コメにちょー嬉しいんですけど。サッカーネタ、人気ないから。
トルシエのネタは子供から仕入れました。でもさ、当時の日本代表は監督の言うことなんて、全然聞いてなかったそうですよ。そうやってYeah!の人口が増えていくといいね。
>奇襲戦法
あんまし期待しないで。がっかりするから。
川中島はそれほど関係なかったわ。上杉謙信をイメージさせたかっただけなのよ。もしも上杉謙信がカワイコちゃんだったらコスプレさせたくね?
つる
2009/01/25 00:32
ようやく突入!
なにやら面白そうな書き出しですね。
上杉謙信女性説がどう絡むのか、まったく想像もつきませんが、期待します!

上杉謙信は戦国ゲームでは軍神なのですよ。敵は近寄るだけで戦意がみるみる落ちてしまうのです。だから少人数でも勝てる。
しかし、中澤君は軍神ではなさそうだし、どうする?
そういや今の大河ドラマ、アベカンの上杉謙信はカッコよすぎでしたねえ!
銀河系一朗
2009/08/09 01:00
★銀河系一朗さん★
いつもありがとう!
うん。こことラストのサッカーで上杉謙信をサンドイッチにするの。
期待してくださって嬉しいけど、このあと迷走。タイムスリップした二人のカルチャーショックが書けてないし、話のテンポももたついたわ。それでも書き進めて終わらせます。終わってから整えていこうかなという算段。とにかく形にしなければ何も始まらないもの。
>大河ドラマ
アベカンかあ。最期は凄みがありましたね。

わたしのお気に入りは「天地人」の真田雪村役です。
つる
2009/08/09 23:03

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