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zoom RSS 「高円寺物語」27

<<   作成日時 : 2008/11/18 17:59   >>

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「高円寺物語」27

「できたよ」

 やっと解けた紐。素直に相手に渡せないあたしが、つまんだ紐を大きな振り子にして言う。

「おう」

 振幅の向こう端で無造作に受け取った彼が、手馴れた動作で印籠の輪っかを角帯にくぐらせる。彼はそのまま背を見せて手すりに寄りかかった。収まるところに収まった印籠の長い紫の房が、嬉しそうにぶらんとしている。

 そのぶらんに向かってあたしが言う。

「ねえ、聞きたいことがある」

「なんだよ」

「何でいつもあたしが男踊りか女踊りか聞くの?」

 あたしのWHYにタカがフンと言った。フンは彼の癖なんだ。

「俺さ、4年前にこっち引っ越してきたんだ」

「うん」

「そんで見た」

「何を? 阿波おどりを?」

 おまえを。横顔を向けた彼の顎が言った。

 4年前、4年前。あたしが12歳のときだ。やだっ。ロリコン。

「へえ。あたしのこと、知ってたんだ」

「そんとき、今より髪が短かった」

 そう。ショートカットの男の子みたいな女の子だった。

 今わかった。
 口もきいたことのないクラスメイトが、久しぶりの同窓会にタメ口で話しかけてきたってやつだ。タカはあたしを知っていた。だからだ。だから馴れ馴れしかった。

「いつからやってるの? 阿波おどり」

 主語が使えないあたしが言う。タカはいつからやっているの? なぜ言えない。

「3年前。なあ。俺の名前知ってる?」

 やはりそこが気になるのか、タカが言った。

 ううん、あたしは首を振る。だってほんとの名前なんて知らない。

 ブルル、ブルル。「あ」野暮な携帯があたしの帯でブルった。

 そのコール音を合図に「じゃ、俺、行くわ」タカの肩が手すりから離れた。

 待って。

「お、置いてくんだ。彼女」引き止めるようにあたし。

「エ?」

「かわいい彼女」

「いるかよ。彼女なんて」

 うそばっか。沢尻エリカがいんじゃん。

「これ違うの?」

 あたしが、階段の下に置かれた長提灯を持ち上げて言う。

「あ〜」忘れ物かぁとタカが戻って、渡した提灯を後ろ手に収めた。

 聞いてない。まだ聞いてないよ。

「したら」あとずさりの彼が言う。

「うん」頷いてあたし。

 なんだよ。なんだよ。なんていう名前なんだよ。

 くるっとした喧嘩独楽が勢いよく水溜りを蹴った。

 その広い背に向かって、あたしの内耳が反芻(はんすう)する。



 いるかよ。彼女なんて。彼女なんているかよ。



 違うんだ。そうなんだ。そうなんだ。

 嬉しくて嬉しくて、

「きゃっほう!」

 雨をジャンプとかしてみる。 



「あ、そうだ!」志乃からメールだった。

《To:みー 
 From:志乃
 Sub:Where are you? 

フジテレビの取材を受けたよ〓みーもいたら良かったのに〓お礼にステッカー貰っちゃった〓フジサンケイグループのシンボルマーク、目ン玉ステッカーだよ〓これ見て思ったんだけどさ〓タカのフェイスペイントって目ン玉なんだよきっと〓目、眼、瞳〓つまり、みー〓だから「瞳、命」なんじゃね?〓あっ電池もうないや》
 



――つづく――


 今日の動画は北側商店街を流す「小兵連」みたいです。こんなふうに1つずつの演舞場に区切りをつけます。

 今日のBGM→クリック。ドゥー・ユー・リメンバー・ミー

 今日の動画→クリック。('08 Koenji Awaodori3 / 高円寺阿波おどり3〜いろは連@ルック第二演舞場/01:52)

 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
いろいろ謎が解き明かされていきますね。3年前から好きだったんだ。やだっ。タカったらロリコン。(←おばさんになってるよ)
雨が良い効果になってますね。水溜りをけって走って行くシーンなんか、すごく好きです。
ia.
2008/11/21 22:03
ia.さん、連コメありがとう。
おお、謎ね。そういえばほんとだ。もうひとつあるのね。タカがいつも怒ってる理由。それを含めて、あと2・3回の辛抱です。よろしくお付合い下さい。
ロリコンね。書いてから斜線ですよ。だってこの2人は同級生の設定(書けよ)だからタカも12才だったわけで。はは。
大人になると雨はうっとうしいだけなんですが、若い人たちはちっともそんなふうではないんです。そこんところが伝わったら嬉しい。
つる
2008/11/22 08:23
そうか。そうだったのか。えっちいマークじゃなかったんだ(笑) 日常系ミステリーの要素までしっかり入ってるじゃないですか^^
レイバック
2008/11/22 22:43
レイバックさん、ここにもありがとう。
「えっちぃ」いいですね。そうか。日常系ミステリなんだ。わーい。
女子は王子様が大好きですから、好きな男子がエッチて思いたくないんです。男子がもてようと思ったら、エッチに無関心を装ったほうが絶対お得なんです。簡単なことなのにねえ。
つる
2008/11/23 11:19
>主語が使えないあたし
あ、自分もそうかも。別に相手が好きとか、関係なく、話す時はなるべく主語抜きだな。

向こうが先手だったというわけか!
銀河系一朗
2009/06/05 02:33
★銀河系一朗さん★
同じです。主語を使うと、どうしても自分を強調したようになるので、それ抜きで、他人事のように話してしまう癖があります。
主語抜きで改めて思ったんですけど、小説の中で、話の部分はともかく、セリフの部分だけでもリアルに表現したいということです。実際の会話は、主語抜きだし、センテンスも崩れてるし、たくさんの小さなやり取りでなんとか成立してるようなところがあるでしょう。そういうのを凝縮して提供するのも小説のお約束なんだろうけど、なんか嘘くさいのよね。だから、セリフの部分は脚本のように流れる会話が理想。まあ、あちらは、映像あってのそういうセリフなんですが。なんていうか、「目指せ、セリフの簡素化!」これが今の命題。あ、主語抜きで語ってしまった。
つる
2009/06/05 23:59

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