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zoom RSS 「高円寺物語」24

<<   作成日時 : 2008/11/12 20:17   >>

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「高円寺物語」24 

 タカを無視して、トシが何度も仕切り直しては命を繰り返した。

「おまえなー、いい加減にしろよ」

 はじめはトシを横目で睨むようにしていたタカも我慢の限界なのか、持っていたおでんの器をあたしに押しつけてきた。
 それを見たトシが慌てて逃げる恰好になった。

「ふふっ!」志乃が笑った。

 トシが、その志乃の後ろに回り込んで「わーっ、勘弁勘弁!」彼女を盾に、タカの攻撃を避けようとした。志乃を軸にしてニ人の鬼ごっこが始まった。タカがうまくトシの袖を掴んで引き寄せると、彼の頭を肘で抱え込んだ。

 アホ。ほんとアホ。

 家でアニキと祐二のじゃれあいを見てるみたいだ。

「ふざけんな!」

 横で違う怒鳴り声がした。見たら大太鼓の止め具に手をかけたアニキ。移動中だった小兵、通りかかったアニキが完全にあたしたちを誤解した。あっという間にベルトから外された太鼓が後ろ手に投げられる。それのキャッチに小兵の誰かがダッシュした。

「てめえ。人の女に手ぇだしてんじゃねえよ!」
 
「やめて、祐太! 違うの!」

 止めようとした志乃を、アニキが腕で振り払った。ビリッ。片袖を手にした志乃が尻餅をついた。
 呆気に取られるタカ・トシに飛びかかって、このやろう、とアニキが掴んだのはタカの衿元だった

 ち、違うって。

 衿を取られたタカの前がはだけた。それを見たらあたしの頭がカッとなった。思い切りおでんを持った右腕を振る。白い発砲スチロールとおつゆが無重力になってアニキに降り注いだ。

「どわっ!」ひるんだアニキが手で振り払った。

「きゃあ!」飛び散ったおつゆに、周りから悲鳴のブーイングが上がった。

「行って!」

 タカ・トシに向かってあたし。

「え?」

「いいから、早く行って!」

 だって、こうなったらアニキは止まんない。
 その間に、仁丹がアニキに飛びついた。アニキを引き倒して馬乗りだ。すぐに晋さんたち大人も追いついて、何人かで敷石にアニキを押え込んだ。皆、アニキの気性をよく知っている。「ちきしょーっ、ふざけんなっ!」仁丹の膝の下でアニキが暴れる。おまえがふざけんな。

「早く!」あたしが大声だ。

 柴田恭兵みたいに後ろを気にしながら駆けてくタカ・トシに向かってもう一度言った。

「おでん、ごめんねっ!」





 いやな気持ちいやな気持ち。
 いつだってそう。早とちりのアニキはこうして人を不愉快にさせる。 
 ラストのスタート地点まで志乃と黙って歩く。彼女は何を思っているんだろう。
 いっしょに移動する小兵の皆も、たった今の出来事に触れようともしない。



 

 それから青梅街道に向かう演舞場を踊った。
 みなみ演舞場の終点に、白いクロスが掛けられた長テーブルがあった。たくさんの紙コップが並んだテーブルは、町内の婦人部が参加連のために作った給水所だ。演舞場の区切り毎にこうした配慮があった。
 ゴールしたちびっ子たちが、紙コップの麦茶を飲み終えるそばから、お迎えの家族の傘で帰って行く。

「咽、渇いたー」「おれもぉ」「死ぬ死ぬ」

 阿波レンジャーも、次々にコップを飲み干した。

「ああ、しんど」

 テーブルに手をついた志乃が言う。よほど足が痛かったんだろう。

 そんな給水所のまわりでフラッシュがたかれた。珍しくもない光景だ。プロアマを問わず、カメラマンがそういう何気ないシーンを好んで撮ったりする。阿波おどり振興協会のHP(ホームページ)で、スナップ写真を募集してたりするくらいだ。

「ちょっと、アイツじゃない?」「ほんとだ。さっきの変態だ」

 OLのカオリさんたちが、志乃の後姿にカメラを向ける緑のパーカーを指した。
 雨で、女踊りの蹴だしが下半身に張り付いて下着の線が見えている。それを狙ってるのだと思った。

「ちょっと、やめてください」

 カッとなったあたしが言う。
 緑のパーカーのレンズがこっちに向けられた。そっちに歩み寄ろうとしたあたしの足にも蹴だしがまとわりついて、上前に手を入れたところにバシャバシャとシャッターが切られた。



 ニャロー(コノヤロウ)!






――つづく――




 

担当編集者「ここでアニキ登場ですか?」
つる「うん」
担当「いまさらだなあ。なんか無理ありませんか?」
つる「うん」
担当「しかもバカそうだし」
つる「うん」
担当「言い訳しないんですか?」
つる「うん!」


 ジュリーにマイブーム。今日のBGM→クリック。危険な二人

今日の動画→クリック。(これも危険/00:48)>誰かとオモタ。

 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


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コメント(6件)

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お〜お〜アニキ若いねぇ(笑)

男の同士のふざけ合いって
なんか見ていていいんだよね。
ワクワクしちゃう。

いるいる必ずこういうカメラ小僧。
それにしてもシャッターシャンス与えちゃったんだ。
悔しいー(`д´)って感じだね。

えーっと柴田恭平⇒柴田恭兵でして……
細かくてごめんなさい。

2008/11/12 21:33
舞さん、いつもありがとう。
>柴田恭兵
知らなかったあ。すぐ訂正します。ありがとう。

アニキね。実際こんなこと言うのかなーって思う。でも、言ってくれないと話が進まないからね。
そうそう男同士は、ほんと楽しそう。ガキよ、ガキ。いつまでたってもガキ。
うん。悔しいから、カメラ小僧はコテンパンです。
つる
2008/11/13 00:38
つるさんの小説にでてくる「アニキ」は、バイオレンスな感じが多いですよね(笑) 次回は花を愛でるインテリ風アニキとか、汗臭くない爽やかスポーツ系アニキなんてどうですか?
でも「志乃・命」って感じで結構好き。瞳ちゃんもタカと仲良くなれたし、こんなアニキも役に立ったみたいですね。
カメラ小僧って視覚的痴漢ですよね。痴漢は死ね!って伊坂さんも書いてるよ。
ia.
2008/11/14 02:09
ia.さん、いつもありがとう。
そうね、そうね。ほんとだわ。バイオレンスなアニキ。ここにわたしの願望があるような気がします。
穏やかな人も書いてみたいけど、そこをどうやって読ませるかが、腕のみせどころね。
>瞳ちゃんもタカと仲良くなれたし、
主人公の瞳が、タカから器を渡されたシーンを読み取ってくださってありがとう。こういうふうに言ってくださるから、書くのがやめられなくなるのね。本当に感謝です。
え、伊坂氏(いつも呼び捨てだから敬意を払ってみました)、そんなこと書いてるんだ。男性でもそんなふうに思うんだ。すごく嬉しいな。女性に共感する人って素敵だわ。
つる
2008/11/14 23:18
ご無沙汰してました! こちらには訪問いただいていたのに、ずっと読みに来れず、すみません・・・。今から全部読みますので^^
事件ですね! もしや瞳ちゃんをアイツが助・・・!? いやいや、楽しみにしておきます(^-^;)
伊坂さんは「強盗は○、痴漢は絶対に×」という独特の価値観を持っているようで、それは作品にもよく表れてますよ。
そういえば第23話の返信にあった『恋はフルスイング』。読みたい人なんて、いるのかな・・・?^^;
shitsuma
2008/12/07 19:54
shitsumaさん、いつもありがとう。
そして、気を遣ってくださってありがとう。これからプロになろうかという方に、お目汚しも甚だしい。申し訳ないくらいです。
そう!いい勘してるわ〜。アイツがきちゃうのよ。だってお助け物が大好きなんですもの。伊坂さん(「さん」、つけちゃったよ。わたし作家に「さん」付けしないの。だって太宰治や司馬遼太郎に、「さん」付けしないでしょう)の価値観が作品に一貫しているなら、わたしも信条として、お助け物でいく決心をしました。
>『恋はフルスイング』
読みたいに決まってる。shitsumaさんが書かないなら、わたしが書くよ。瞳にフルスィングさせようって、今、思いつきました。

つる
2008/12/08 00:26

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