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zoom RSS 「高円寺物語」21

<<   作成日時 : 2008/10/30 23:20   >>

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「高円寺物語」21

「昨日、志乃と分かれてから、タカ・トシに会ったよ」

 すれ違う人と傘を傾(かし)げあって、上がったほうにあたしが話しかけた。
 セシオンから演舞場に向かうあたしたちは、蹴出しの裾をまくって青梅街道を歩いていた。どんなに気をつけても、下駄の反(かえ)しで上がる泥ハネがお尻のあたりで灰色のシミになった。

「え、マジ? どこでどこで?」志乃が食いついてくる。 

「牛丼屋の横を入ったとこ。抜けるとレンタルビデオ屋に出る道」

「へーっ。で、何だって? 何か話した?」

「話したとか、そういうんじゃないけど、トシに言われた。あたしがやさしくないとか、ウンコしたとか」

「うそー?」

「ほんとー。前に志乃が言ったじゃん。トシが、感じがいい、って。でも、そうでもなかった」

「ふーん。タカは? タカは何だって?」

 あー、タカね、とあたし。確か「『女、なんだ』」と答える。

 女なんだ女なんだ、を志乃が繰り返す。「あとは?」

「『ふざけんな』『べつに』」

「ふざけんな、べつにぃ?」志乃が呆れたように言って溜息をついた。 

 雨ガッパの警察官が、地下鉄の階段から吐き出される傘の波を誘導している。街道から駅に垂直に伸びる高南通りを迂回させようと、何本かの脇道に分散させているのだ。
 あたしたちは、それを無視するように大通りへ折れた。すでに交通規制が始まり、ピリピリと吹かれる笛で、ものものしい雰囲気になっていた。

 大通りの入り口、両側に大きな警察車両が駐車していた。右車両の屋根に電光掲示板が設置され、デジタルな案内文字が左から右に流れていた。
 その少し先に簡易ゲートが設置され、2人の警察官が立っている。その横の立て看板には。「ここは出口です。ここからは入れません」

 ゲートから先の空間は、もうメインストリート会場だ。
 車のないポカンとした車道に点在するのは、やはり雨ガッパの警察官たちと、彼らに許されるぎりぎりのところまでゴザや青いビニールシートを広げようとする観客だった。

「こっちこっち」歩道に回りこんであたしが言った。

「なんだ。通れるじゃん」志乃も付いてくる。

 駅が近づくにつれ、さらに人が増えてくる。不案内な地理にマップを広げる人。屋台で買った物をほおばる人。最前線のシートは引けなかったけれど、せめてガードレールを死守したい人。店先で商品の売り込みする店員。

 車道のビニールシートが切れるのは、紅白幕を背負った2段の桟敷席のせいだ。長い板を渡しただけのそれが少し続いて、何張りかの本部テントが見えてくる。審査員席という名のVIP席だ。

 それを横目に、駅前の噴水のあたりに作られた数段の桟敷席の裏を通る。鉄骨の足場が剥(む)きだしになったその向こうが中央演舞場だ。しとしとと降り続く雨の中に陣取る傘の先がたくさん見える。

 あたしたちは駅のコンコースを通り過ぎた。改札前にあるのは、天井を支える銀の太い円柱。上部に取り付けられた時計の下は、待ち合わせの人たちでいっぱいだった。携帯の着信音があちらこちらで鳴っている。

「皆様、本日はお足元の悪い中、東京阿波おどりにお越しくださいまして、誠にありがとうございます。ここ、高円寺で、昭和33年に始まった阿波おどりも、今年で52回を迎えることができました。これもひとえに皆様のおかげでございます。今年もたくさんの一般参加連を迎えまして――」

 街頭マイクが、明るめのテンションで来場を感謝する。ヒーローショーの司会のお姉さんかと思った。


 ああ。本番だよ。


 ふだんと打って変わったあたしたちの町。昨日から、よそゆきの顔をする町。

 映画のような巨大セットの一角で、あたしたちはエキストラの一員になる。

 胸の鼓動が二拍子と一拍子を繰り返す。
 




――つづく――




 描写って苦手。

 今日のBGM→クリック。P.S. I LOVE YOU

 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
自分の地元も夏になると大きな祭りがあるんですけど、その時期だけは町がいつもと違うんですよね。浮ついてるというか何というか。

20でタカをいやらしいと言ってましたが違うんですよ。彼は「ともだち」の信者なんです。

URL
2008/10/31 00:11
鯨さん、いつもありがとう。
あの三大祭りのひとつですね。いつか3ついっぺんにまわるツアーに参加したいと思ってます。そう、祭りのときと雪の風景は、町が違って見えます。
>「20」
そうね、そっちのほうがよかったわ。「二十世紀少年」の「ともだち」のしるしですね。あれも目ン玉マークでした。鯨さんにはもう読まれてるだろうから言っちゃうと、タカは瞳をシンボル化したフェイスペイントをしているということです。要するに両思いなんですよ。瞳がそれを見て誤解したら面白いかなあって思ったんです。ネタバレだって?いいのいいの、まだネタ、あるから。余裕よ。ほほほ。ホントカヨ
つる
2008/10/31 00:55
沿道の見学者の高まりとか
参加者の緊張感とかちゃんと伝わってますよ。
いつも生活している街とは違った空気が
流れているのですね。
最後のほうでは私にまで始まりのドキドキが
感染してきました。
お次が楽しみです♪

2008/10/31 22:52
舞さん、いつもありがとう。
沿道の雰囲気は「20」の動画と合わせ技で見てね。文章だけではとても伝えきれないです。とほほ。
頭の中は、ずっと阿波おどりで少々飽きてきました。それに、本番の一日目と二日目の違いをどこに出すんだ、なあんて考え始めたら、漫才の「地下鉄をどうやって地下に入れるか」くらい眠れません。
ああ、しんど。
つる
2008/11/01 00:26
せっかくのお祭りなのに雨模様なんですね。ヒーローショーのお姉さんw 雰囲気、わかりますよ
。祭りの始まり、賑やかさと緊張感が良いですね。
ia.
2008/11/01 02:03
ia.さん、いつもありがとう。
それから、雰囲気、わかると言ってくださってありがとう。
そうなの。せっかくのお祭りなのに雨だったんです。でも、そう考えるのは部外者で、参加者はそうでもないようでした。彼らの気迫に押されて、見物のわたしも途中で傘を放り投げました。ウソ、投げてない、畳みました。
あとたった2日間の話なのに、書いても書いても先が見えない。いつ終わンだろう。
皆さんのコメントがなかったら、傘みたいにとっくに放り投げてます。だから、いつも感謝感謝です。
つる
2008/11/02 02:09
描写が続くシーンいいじゃないですか。自分ではごくごく短く終えちゃうことが多いので、長いのも書いてみたいと思いました。傾げた傘とかね、さりげないけど、観察力のいる描写だよね^^
レイバック
2008/11/07 06:32
レイバックさん、いつもありがとう。
ほほほ、ほんとに?
わたしね、レイバックさんの作品に「BOX」て、あったでしょ?あれ好きなんですよ。主人公の視線に、読んでるこちらが連れていかれる。そういうのが理想。
「傘かしげ」は外国人が日本人の奥ゆかしさに驚く風習らしいですよ。向こうは知らない人にも「ハーイ」ですもんね。言葉を交わせばいいってもんじゃないです。
>長いものも書いてみたい
見たい見たい。人の連載ってすごーく気になります。是非、お願いします。
つる
2008/11/07 22:59
ふっ、ようやく季節が追いつこうとしてきたな。
↑オメエが遅れてるだけだろって?
さすがに冬は読む手が止まってしまって申し訳なかったです(^^;

祭りの雰囲気出てきましたね。
高円寺は数回しか降り立ったことがないですが、あの狭い道に溢れる熱気が文面から伝わってきますね。
わが田舎も昔はなかったのに、今は毎年祭りに下駄踊りをやってます(たけしの座頭市に出てきたやつ)、なかなか迫力あって踊りは街に活気をもたらしますねえ!
銀河系一朗
2009/05/17 00:36
★銀河系一朗さん★
いつも丁寧に見てくださってありがとう。どうかお気遣いなく。
へえ。下駄踊りか。面白そうだな。祭りはいいね。発散する。昔の人の知恵だと思うわ。
今年は、この季節に品川神社大祭の話を書こうと思っていたの。だからなんか予定狂いました。自分で残念。
昨日、銀河系一朗にいっぱしのコメントをしてしまったけれど、この話はここにくるまでが間延びしました。そんなわけで、てきとうに読み飛ばしちゃってください。


つる
2009/05/17 01:56

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