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zoom RSS 「高円寺物語」20

<<   作成日時 : 2008/10/27 23:33   >>

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「高円寺物語」20 

「ただいまー」

 家に帰ると、リビングでバスタオル一枚の祐二が死んでいた。
 その横で父が10時のニュースを見ている。犯人は父なのか?おじいちゃんとおばあちゃんは早寝だから、とっくに下にいない。

「祐二、祐二。風邪引くよ。上、行きなって」

 あたしが足袋の先で祐二をつつく。

「もういいわよ、そのままで。おかえり」

 ニ階から降りて来た母が、手にしたコットンケットを祐二に掛けて言った。 

「だって、邪魔だよ。あたしが(同じこと)したら怒るくせにー」

「どうせ、上で寝たって祐太が帰ってきたら起こされちゃうでしょ。かわいそうだから」

 よくわかってる。祐二と相部屋のアニキは、酔って帰るといつだって大騒ぎだ。

「ここだってわかんないよ。この前はお父さんがお兄ちゃんに踏まれたし」

 自分の話なのかと父が振り返る。それを無視して母は続ける。

「いいから先にお風呂入んなさい。元栓は止めてね、あんたで最後だから」阿波おどりに興味なんてない母が「あらっ」となった。まじまじとあたしを見るから「なによ」ってなった。

「やっぱ、かけ過ぎなんじゃない? まつ毛パーマ」

「いんだよ、これで」

「おっきな目が余計おっきく見えるわ。ビックリしたベティちゃんみたい」

「(ベティちゃんて)誰だ。ねえ、それよか夕飯〜」

「茹(ゆ)でとうもろこしと、サラダうどんよ」

「やったね」サラダうどん、大好き。

 ふんふんふん、脱衣場で帯を解いた。ぶわっと全身から汗が噴出してくるのがわかる。締め付けてる間も汗はかいていたけど、それほど自覚がなかった。
 浴槽に浸かっているうちに、だんだん調子がでてくる。

「♪ヤワなハートがしびっれるぅ〜 ここちよい針のシゲッキィ〜♪」

 反省点の多い一日だったな。ブクブクブク。息が続くまで潜って、

「よっしゃー!」ザバーッと浮上した。突き上げる拳。今日は今日、明日は明日だ。 



 ぎゃぁあああ! 

 真夜中に断末魔の悲鳴。夢うつつでアニキの帰宅を知る。





 朝から雨が降る土曜日の午後。ウチラ小兵連はセシオンという地域ホールにいた。ここは阿波おどりをじっくり観賞したい人たち向けの会場だ。

 ロビーは出番待ちの連や観客の人いきれで賑(にぎ)わっていた。

 ウチラの出番も終わり、鳴り物衆がロビーで雨対策をしていた。雨は、ときどきゲリラ的に降ったから、楽器をビニールで覆う必要があった。
 阿波レンジャーもヤキトリをビニールに包んでいる。さすがの渋柿団扇も、明日までもちそうにない。
 女衆もソファに腰掛けて、下駄の歯につけた舞台用の滑り止めゴムを外したり、前ツボにクッション代わりの包帯を巻いたりしていた。

 そのうち、ガーっと入り口が開いて、外の湿った空気と一緒に、ドヤドヤした一団が入ってきた。

「うひゃー! いきなしあれ(雨)はねえよなあ」「びちょびちょだよ」「たまんねー」

 若独楽連だった。
 
 ぶるん。先頭のタカがショートヘアを強く振った。彼の撒き散らした水滴がこっちまで飛んできた。インタヴューに答える前の北島康介みたいだ。

 ドスッと志乃に肘鉄をかまされた。
 タカがこっちを見たからだ。彼と目が合った。というより睨(にら)まれた。

 いつもの追っかけはいないようだ。もう一度ドスッ。志乃があたしに話しかけろと言ってる。
かまされた肘鉄に揺れながら思う。


 いや、ムリだから。 


 タカがあたしから顔をそむけた。あからさまなその行為に、


 い、いやらしい!


 凹(へこ)むどころか、彼を軽蔑した。

 だって見えちゃったのだ。反対になった頬にあるフェイスペイント。丸印に毛が生えていた。公衆トイレの落書きみたいなそれ。


 

 サイテー。






――つづく――


ベティちゃんBETTY HOUSE
「ヤワなハートがしびれる〜」クリック。歌詞の一部を使用しました。
セシオンセシオン杉並地図。
人いきれ→人が多く集まったため、からだから出る熱やにおいで、むんむんすること。(新選 国語辞典)
北島康介→言うまでもなく水泳選手。アテネ・北京オリンピック競泳男子100・200m平泳ぎで、日本競泳界初となる2大会連続の2冠を達成した最強スイマー。


 入浴シーンはサービスです。「水戸黄門」だってやってるもんね。
 

 今日のBGM→クリック。愛のしるし
 今日の動画→クリック。(高円寺阿波踊り/00:38)本番前の大通りの様子です。
 
 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。
 

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コメント(8件)

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懐かしい歌まで飛び出して
ちょっとご機嫌だね。
着物を着てたときに脱ぐ感じの開放感よくわかります。
ほんとふわ〜って感じ。

この短い文の中に家族の関係がよく描かれていると思いました。

肘てつで「話しかけろ」とか「それは無理」とか
仲良しの関係だから通じるんだよね。
話しかけろって言われても
それが出来れば苦労しないってねぇ。

2008/10/28 10:16
舞さん、いつもありがとう。
うん。主人公、ご機嫌です。男兄弟の中で育ったから、さっぱりした性格に書きたかった。おお、家族関係、タナボタだわ。ありがとう。
そうそう、肘鉄ね、これだと相手にもわかっちゃいますね。
>苦労
してみたいわぁ。だってもう、そういうところにいませんからね。
つる
2008/10/28 22:03
つるさん、こんばんわ(^^ゞ
筆力ありますね。尊敬します。
高円寺物語、また時間のあるときゆっくり読ませていただきます。
がんばってくださいね。
あ、ボクもがんばりますよ。へへ。
ガバチャ
URL
2008/10/29 22:18
あっ、ガバチャさん、ありがとう。
来てくださって感謝です。いえいえ、ゆる〜い連載ですよ。またのぞいてやってください。
ガバチャさんの小説「神無月の頃」はこれからの展開がすごく楽しみ。「ごりやんくんありがとう」は個人的に設定がツボ。どちらも気になります。よかったらリンクお願いします。
つる
2008/10/30 00:38
本文2行目で「まさかの殺人事件!?」「本格ミステリーに突然移行か!?」とミステリー好きの血が騒いでしまいました(^-^;)
前章「19」のコメントに書いた「10年くらい前の経験」は、また機会がありましたら・・・って恥ずかしすぎて、書くのにかなり気が引けるんですが(笑)
shitsuma
2008/11/11 20:22
shitsumaさん、いつもありがとう。
ミステリーかぁ。ふざけてごめんね。どういうわけか、この話を書いていて、マジメになりきれない自分がいる。許されて。
>「10年くらい前の経験」
ちょー気になるんすけど。書いちゃえ書いちゃえ。
わたしだって、バレンタインデーのことを書きましたよ。作家はね、プライベートを切り売りしてナンボよ。中村うさぎを見てごらんなさい。
つる
2008/11/11 22:49
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!

入浴シーン、由美かおる系よりもコメディ系ですね(^^;


>浴槽に漬かって
浸かってという字もありますが、あえて漬かってのもありなのか
銀河系一朗
2009/01/01 08:13
銀河系一朗さん、あけましておめでとうございます。そして、いつもありがとう。

>漬かって
とほほ。漬物になった。ほんとアホ。
てか、入浴シーンの必要性があったのかと、連載終えてみて、モーレツに後悔。長編て難しいのねえ。

ええ、ええ。こちらこそ。今年もこんな感じですがよろしくお願いします。
つる
2009/01/01 20:19

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