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zoom RSS 「高円寺物語」8

<<   作成日時 : 2008/09/21 17:38   >>

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「高円寺物語」8 

「――てことで頼んだよ」

「はい」

 晋さんの言葉に志乃が頷(うなづ)いた。

「え? なになに?」聞いてなかった。

「わたしたち、笛、やるんだって」 

「へ」
 
「ほら、ちびっ子連のお母さんで、篠笛(しのぶえ)担当の人、いるでしょう? あの人の旦那さんが秋に転勤するかもしれないんだって。そしたら来年は笛が一人になるから、今年から、わたしたちも練習しとくんだって、晋さんから頼まれた」

 どこの連も、踊り手に比べて「鳴り物」の奏者は少なかった。連によっては、当日だけ他から応援を頼むこともあるくらいだ。それを自連で賄(まかな)えるだけ、小兵は恵まれているのかもしれない。

「そうなんだー」

 相槌を打ちながら、なんかヒトゴトだった。





 阿波レンジャー特訓の3回目くらいだったろうか。

 19時から待っているのに誰も来ない。銀行前の植え込みを囲うレンガに腰掛けていると、隣のスペースに見慣れない男子たちがポツリポツリと集まりだした。ブーが言っていた、ストリートダンスの高校生グループだろうか。

 お腹空いた。

「日にち、間違えたかなあ」

 ミラーになったガラス面に、独り言を言う待ちぼうけのあたしは、まるでフラれる寸前の女の子みたいだ。

 もう来る、もう来ると、横で踊りだしたグループをボンヤリ見ているうちに、20時近くになって「遅れてごめんなさい」とコースチャがやって来た。それから、彼はお母さんのご飯支度(したく)が遅くなったと言い訳をした。

「そんで、祐二は?」思わず立ち上がって聞いた。

「さあ? 家にいなかったの?」コースチャが首を傾げた。彼はなんだかあたしと2人でいるのが照れくさそうだ。こっちからしたら図体こそデカイけど、脳みそは限りなく祐二だ。

「うん。部活からそのまま来ちゃったからね。ちょっと祐二に掛けてみようか」

 携帯のコール音が何度も鳴ってから《なに?》と祐二が無愛想に出た。たぶん、ディスプレイにあたしの携帯番号が表示されたから、でようかどうか迷って、しぶしぶとでたんだろう。身内の言葉にカッとなった。

「『なに?』 じゃないだろ。すぐ来い!」

《あ〜、もういんじゃね?》

「いい? なんで?」

《なんでも》

「ぁあっ!?」

《あのさー。言いたくないけどぉ》

「じゃ言うな」

《みーって、ウゼー》

「うざい? あたしが?」

 思わずコースチャの顔を見た。話の内容に想像がついた彼は、目を合わせないで横を向いた。

《だってそうじゃん。俺らまだ始めたばっかなのに、要求ばっかして》

「要求?」

《そう。マジメにやれ、手振りが小せえ、下を向くな、声が出てねえ、ラインを見ろ。オフサイドかよ! そんないっぺんにいろいろ、できっかよ。みんな、言ってる。そういうのなんだって》

 いつだって祐二は「みんな」だ。みんなが持ってるからゲームが欲しい、みんながやってる、みんなンちは違う。自分しか思ってないことでも「みんな」をだして正当化する。

「は? いやとかそういう問題じゃないから。責任だよ責任。男なら、やるって言ったことに責任持ちなさいよ」

《とにかくさー、今日はいいや》

「ちょっと。今日はいいって何。あ、待て、こら。ちょっと待ちなさい!」途中で切られた。振り向きざま、「コースチャ!」大声で使った腹筋が、グウ、と腹の虫を鳴かせた。

「……」コースチャが少し笑いそうになって我慢した顔になった。けど、こんだけ腹が立つと、もう、お腹の虫がどうとか、そんなの関係なかった。

「あたし、うざい? あんたもそう? そう思ってるの? だったら、何で言わない? そういうのって男らしくないよ」グウ。

「……」

「ああ、そうか。志乃ね」グウ。

 いつも特訓につき合ってくれる志乃が今日はいない。アニキとデートだ。
 いくらこの子たちがまだ中学生だとしても、美人がいれば、言いたいことも止むらしい。そういうとこだけは、いっちょまえに男なんだ。カッコつけもいいとこ。なんだよ、頭くるな。

「違うよ、みー」

「違わないよ。そうなんだよ。そういうことなんだよ。あたしをあたしを……」グウウ〜。

 なめてんだよ。

「……」

 可笑しさを堪(こら)えきれない様子で、コースチャが下を向いた。
 コースチャに当たったことを後悔して黙るあたしと彼が向かい合わせになった。

 ひゅうひゅう、囃(はや)し立てるような冷やかしが聞こえて、誰かの大きな声がした。

「わかったから、どっか他所(よそ)行って、やれよー」

 どっと横のダンスグループから笑いが起きた。なんか誤解されたようだ。

「 Нет. (ニェート)」

 咄嗟(とっさ)にロシア語になったコースチャが、慌てて両手を振って否定する。それから、「あ」と言って、グループの中に知り合いでもいるのか、顎でチャース!(こんにちは)というふうにした。


 いつのまにか向こうの輪にタカ・トシが混じっていた。





――つづく――




オフサイド→(第11条)相手側ゴールラインより前に相手側の選手が2人(GK含む)の時に、相手選手達より前、あるいは間に味方が立ち、その味方にボールを蹴り出す行為。または、ボールに関与する動きをすること。または、相手選手を邪魔すること。参考URL



 アンジャッシュのコント風になってしまった。

 今日は実在する「連」のぞめき囃子の紹介です。各チームでこんなに音色が違うんですね。
 阿呆連
 水玉連
 苔作鉦(かね)と太鼓の今風の力強いお囃子です。

 今日のBGM→クリック。The Locomotion/トランスアレンジ

 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。


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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
>美人がいれば、言いたいことも止むらしい。そういうとこだけは、いっちょまえに男なんだ。
ここにドキッとしましたよ(^^;
つるさんは自分が美人なのに(推測)、引き立て役の女の子の気持ちがよくわかるなあ!
銀河系一朗
2008/09/21 22:00
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
引き立て役以外に書けないでしょうがー。
このコメで昔読んだ「哀しみのステラ」を思い出しました。女性心理が巧みに書かれてるんだけど、実際、林真理子って意地悪そうじゃないですか。←ああ、ここ、忘れてください。もし、ドキッとさせることができたとしたら、たぶん、わたしがその分だけ、意地悪だってことです。やだやだ。
つる
2008/09/21 23:12
お子ちゃまは、ちょっとキツク言うと拗ねるんだよね。瞳ちゃん、可哀そう。
うわぁ。しかもタカ・トシ登場。腹の虫も聞かれたかな?タイミング悪ぅ。
つるさん、「哀しみのステラ」×、「星影のステラ」〇(笑)ステラ・バイ・スターライトだから。
林さんの最新作「RURIKO」が評判良いみたいです。早く読みたい☆
ia.
URL
2008/09/21 23:31
いるいる。
すぐに「みんな」って言うヤツ。
人引き合いに出して自分の意見を正当化するんだよね。
『言うなら自分だけの意見を言えや!』って思っちゃう。

今回のお話は笑えましたよ。
だって1人で腹が立って怒ってても
周りの人が真面目に相手にしてくれなくて
挙句の果てに「グー」って(^^;
なんか頑張ってるのが嫌になっちゃうよね。

それにしてもコースチャ、いい味出してるわ♪

2008/09/22 09:55
ia.さん、いつもありがとう。
やだよぉ。「星影の」といったら、「ワルツ」でしょーがー。ふるっっ。マジで間違えました。どっから出てくんだよ「哀しみの」が。
林真理子の最新作か、ちょっと興味が湧きました。ググッたら浅丘ルリ子を下敷きにした話だというじゃないですか。庶民と違う感覚とか、どう書いているのかすごーく気になります。
つる
2008/09/22 22:52
舞さん、いつもありがとう。
「みんな」いうのは、小学生で終わりにしてほしいです。ほんと。
舞さんには、このシーンがウケたのですね。誤解を招くところにしか神経がいってなかったから、そういわれると意外で、しかも嬉しいです。
コースチャはこのシーンのためだけに、登場したようなものです。あとフェイドアウト。
つる
2008/09/22 23:01

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