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zoom RSS 「高円寺物語」4

<<   作成日時 : 2008/09/05 19:22   >>

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「高円寺物語」4

「あ、ラッキー! あそこ空いてる!」空席を見つけたあたしが大きな声になった。

 学校帰りのことだ。練習前の腹ごしらえのつもりで、志乃と寄ったファーストフード店は混雑していた。

「みー、先に行ってて」志乃がトイレに向かった。

「ほいよ」

 目指すテーブル席の手前から、

「なあ」

 いいタイミングで声がした。どうせあたしじゃない、とスルー。だって志乃がいない。彼女と一緒だと男子からよく声が掛かった。

「ちぇ。無視かよ。ひでーな」

 ひでーな、に振り向いたら夏服の男子と目が合った。あたしに言ったんだった。その怖い顔に見覚えがある。タカだと思った。彼の向かい合わせにいるのは、たぶんトシ。彼の含み笑いをした視線が、あたしとタカの間を往復する。

「……」

 椅子にもたれたニ人の前で、声が出ない。
 トレードマークの「お団子ヘア」ならともかく、ロングヘアのあたしに気づいて、びっくりしたからだ。今日の季節はずれの涼しさに、髪を下ろしていた。
 そのあたしを、斜(なな)めに睨(にら)むようにして、タカが言った。

「おまえ、今年、男、踊ンねえの?」

「な、なんで?」

「これ、おまえだろ」

 面倒くさそうに足元のサブバッグから取り出した団扇を、あたしの前でヒラヒラとさせた。はやくも振興協会から、例の団扇がお祭りの参加連に配られたようだ。

「それがなんかあんたに関係あんの?」おまえ呼ばわりとからかったようなヒラヒラに、思わず喧嘩腰になった。

「べつに」

 プイと視線を切った相手が、今度は自分に向けてヒラヒラとした。それを見たこっちの首が寝ちがえる。話も続かないようだから、そのまま空いてる席に向かい、ドスンと腰を下ろした。また面白くない。

「ごめんごめん。サンキュウでした」志乃が来て「あれ!? タカ・トシだ!」目がそう言うから、「そうみたいね」と目で返す。

「ささ、連絡連絡、と」

 席につくなり携帯を取り出した志乃が、忙(せわ)しなく親指を動かした。又いつかのように「タカ・トシ情報」を送ってるようだ。

「いつものやつでいいよね?」

 志乃に言い残して注文カウンターに向かうと、いやでも目の端にあいつらが映った。
 制服のYシャツにユルユルのネクタイ、腰履きズボンの姿勢はだらしのない大股開きだ。キンタ○蹴ってやろうか。

 ナニサマのつもりなんだろう。やだやだ。

「ご注文を伺います」店員の声に、

「あ、エッグマフィンニつと、オレンジジュースのSをニつ。氷、少なめで」注文を伝える。

 本当はえびフィレオにしたいところなんだけど、志乃がカロリーを気にするから、お付合いでこれにしている。「えび」だと355kcal(キロカロリー)で、「マフィン」なら296kcalだ。

 オーダーを持って席につくと、清算しようとした志乃の手元で彼女の携帯がブルった。

「ちょっと、ごめん」彼女が言って、

「うん、いいよ」あたしは、彼女が出した千円に、うまくお釣りがあるかと財布を探る。

「うそぉ?!」ディスプレイを見た志乃が大げさな声を出した。

「どうした?」

「来るってさ」

「誰が?」

「追っかけ。タカ・トシの。近くにいンだってぇ」

「えー? ひ、暇なんだね。かわいいの? その子たち」

「さー、どうだろ」

「どうって」

「ジャニーズの追っかけ、言ったらワカルかな?」

 それはキツイよ、志乃。

 店内は夕方のかきいれどきを迎えてザワザワしている。なんだか急に落ち着かなくなった。
 紙ナプキンで口を拭(ぬぐ)って、マフィンを包んであった紙を丸め、吸い込んだストローにベゴっとオレンジのカップが凹(へこ)むころ、

「来た来た」志乃が目配せをした。

 キャピキャピした女子の塊が、ちょうど店に入ってくるところだ。

 わ、若っ! 

「す、すごくかわいいじゃん……」

「ええ〜?! みーてば、視力、落ちたんじゃない?」 

 どうみてもあたしたちはオバサンだよ。U−23がオリンピック3連敗する勢いで 急襲する敗北感。

「志乃、行こう!」

 トレイを持って立ち上がると、通路を歩いてくるキャピキャピを押しのけるようにして表に出た。「待って」と言う志乃の声がすでに遠い。


 店を出て、ウィンドーのこちら側から店内に目をやる。
 ぐるりと囲んだキャピキャピに隠れて、あいつらは見えない。そのぐるりが、ワッというふうに華やいだ。



 なんだよ。


 ただのチャラオじゃん。





――つづく――




商品の栄養成分一覧表 クリック。
チャラオクリック。


「高円寺物語」2でコンビニの前にたまる中学生を書きましたが、外国ではこうした若者を店の前から立ち退かせるために不愉快な周波数の音を流すそうです。だけど大人には聞こえません。ココ。で、白枠の「猫」をクリックすると聴けます。わたし、11,000Hz(ヘルツ)でもうギブ!子供たちには聞こえるんですって!

 今日のBGM→クリック。恋はあせらず

 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。読みづらかったらごめんなさい。

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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
タカがイジワル系なんですね。トシはどうなのかなぁ?
ひとみちゃん、相当コンプレックスがあるみたいですね。でも気になるんだ、タカ・トシのこと(笑)カワイイ〜軽く萌え(^^
ia.
URL
2008/09/05 23:21
モスキート音やってきました。
15,000Hzギリギリ聞こえました。でも会話しながらだと絶対に無理。自信を持って聞こえると言えるのは13くらいまでです。

途中でタカ・トシが「トシ・タカ」になってるのは壮大な伏線だと睨んでます(`・ω・´)

URL
2008/09/06 00:19
ia.さん、いつもありがとう。
そうなんですよ。タカに比べたら、ずっとサービス精神が旺盛なトシのことがあまり出せてない。そういうのをもっと、しょっぱなに持ってきてもよかったかな。
そうそう、コンプレックス。きっと主人公だけじゃないはずです。
つる
2008/09/06 10:29
鯨さん、いつもありがとう。
え?15,000Hz?マジで?
こういうのがBGMに混ざって流れたら、やばいよね。若作りしてる人とか、バレバレで。
10代だと、かなりのところまで聞こえるみたいですよ。コウモリか!
>壮大な伏線だと睨んでます(`・ω・´)
赤面しました。
鯨さんは優しいね。
つる
2008/09/06 10:52
わざわざタカ・トシ情報を送るところが面白いです。
追っかけがいるタカ・トシ、なんかとっても気になる存在なのに興味なさそうなところがなんとも言えませんよね。

それからカロリーまで載せてくれてありがとね(笑)

URL
2008/09/06 23:10
マックのリンク→ホットアップルパイは意外に低カロリーなんですね。安心した(^^;

高音→つるさん、内臓スピーカーは性能がおいついてないかもよ。ヘッドホンで聞いてみたら!
変だな、17000Hzが 16000Hzより低く聞こえる。
一度突発性難聴になって、ぐぐって即医者に
行きました。おかげで完全復帰。この即が
すごく大事だそうです。
銀河系一朗
2008/09/07 00:26
舞さん、いつもありがとう。
物でも情報でも新しいほど人は飛びつきますからね。ただすぐ次に目移りする。
追っかけは、本当にいるそうです。阿波おどりのサイトに書いてありました。有名連に付いてまわるんですって。わたしも「天水」の太鼓を聞いたら納得しました。あとでYou Tube で紹介します。この話の中で、実生活まで追いかける部分はフィクションです。
つる
2008/09/07 10:44
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
ホットアップルパイ、実はわたしも好きなんです。おいしいですよね。
>変だな、17000Hzが 16000Hzより低く聞こえる。
若いな。どうあがいても、いいとこ12000Hzでした。浜崎あゆみでメジャーになった突発性難聴だけど、早い段階なら直るんだ。いいこと聞いたわ。耳鳴りがすると心配になることがあるもんだから。
つる
2008/09/07 10:53
おはようございます。
今日は校正野郎です(笑)

>席につくなり携帯を取り出した志乃が、世話しなく親指を動かした。
世話しなく→忙しなく

全体的に(これはクセなのでしょうが)、
>〜すると〜した。
>〜すると「〜」。
など、二つの文が「と」で繋がれる事がとても多いので、一本調子になりがちですよね。もう少し「繋ぎ」を考えて、リズムを変えていくと良いのではないでしょうか。

最近のつるさんは突っ込みどころが少ないから淋しいわー(笑)
レイバック
2008/09/15 10:08
レイバックさん、いつもありがとう。
>校正野郎
大歓迎です!ほんと、どれだけ皆さんに助けられていることか、有難いことです。
「忙しない」ソッコーで訂正です。「クセ」については気がつかなかった。そうなんだ、それが一本調子に繋がるんだ。以前も言ってくださった、長い文章を入れて、というのと合わせて心がけてみます。だから見捨てないでほしい。
>突っ込みどころが少ない
これは、
1ヘタクソな文章に対して
2笑いのツボ
1だったら嬉しくて、2だったら「いかんいかん、こんなことでは」
>モスキート音
知りたいわー。レイバックさんが何ヘルツまで聞こえたか。
つる
2008/09/15 20:08
文章は格段によくなってますよね。
今は安定感があるもん。
(えらそうでホントにスミマセン)
つるさんの書く物語が、活字になるまで、
僕は応援しつづけますよ。
もっと読みたい。本になったモノを読みたい。
そう思ってますから。心をオニにして厳しいことを、時々言いに来ます(笑)
>モスキート音
最近体力の衰えに凹み気味なのでパス!
レイバック
2008/09/17 23:08
レイバックさん、本当にありがとう!
今日はチト長くなってよろしいでしょうか。たまにはお喋りしましょ。
>活字
自分の文章が、ブログで活字になったときは、小躍りしました。
>モスキート音
2年前でしょうか。PC上で実際に流れる音を聞いたんですよ。それが紹介できたらよかったんだけど。それは、わたしが聞くと、ただの生活音が流れているだけの音なんですが、当時、十代の子ども2人は「うわああ!!!」ちゅうて耳を塞ぎました。二十代の子ども2人は「キーていうガラスを引っ掻いたような嫌な音」と言ってました。そのサイトによると、いいとこ20代前半までしか聞こえないような高周波だということでした。聞こえた子どもたちは得意そうにしていましたが、そのときに思いました。自分の努力が及ばない範囲の虚しさを。<つづく>
つる
2008/09/18 00:49
<つづいた>会社の健康診断に聴力検査があるんですけど、それは仕事に支障の出ない範囲の周波数1000〜4000Hz)の聞き取りで、「聞こえたらこのボタンを押してください。聞こえなくなったら、ボタンを離してください」と言われます。聞こえるんです、絶対聞こえてるんですけど、なんていうんでしょうか、老化っていうんでしょうか。指がすぐ反応しないから、聞こえてないみたくなりましたよ。たはは。話は変わりますが、先週から読んでいた村上龍に頭、ガツンされました。「五分後の世界」です。内容と後書きに、ヤられました。まず、内容はお話するまでもありませんね。これほど強く訴えたいものがなくては、書く意味がないんだな、って思いました。後書きはあそこです。「『書けるだろうか』とは、思わなかった。自分は『書くんだろうか』と、思った」どうです、これ。強気です。わたしなんて、ストーリーを思いついても、「書けるんだろうか」とかしか思いません。もうね。そういうところからして違うんだな、ってかなり落ち込みましたよ。自分て小さい。<さらにつづく>
つる
2008/09/18 00:53
<さらにつづいた>
まあ、そんなふうなことを話したかったわけです。「ものを書く」というテーマは、井戸端会議に存在しませんから、ここで話せてよかった。おつき合いくださってありがとう。
つる
2008/09/18 00:54
こんばんは。「五分後の世界」は面白かったなぁ。パラレルワールドものの傑作ですよね。村上龍なら、これと「コインロッカーベイビーズ」にはヤラれましたねぇ。(この時は、後に自分でも書くことになろうとは思いもしなかったけど) いやー、やっぱりみんな最初は「書けるだろうか?」なんじゃないすか。「もう書かなきゃ死ぬしかない」みたいなナチュラルボーン小説家は別として。書いてるうちにテーマなんてものは染み出てくるだろうしね。つるさんなら、たとえ親しい間柄でも「想い」がすれ違ってしまう。という日本人ならではのコミュニケーションに於ける「切なさ」や「おかしさ」が、物語から滲み出てるもんね。相手の心の中にまで、なかなか入り込めないじゃん。日本人て。シャイだしさ。その辺が上手く描けてるなぁ。って思います。やはり小説は人を描けないとダメですよね。僕も精進しよっと。
レイバック
2008/09/18 23:51
レイバックさん、お喋りにつき合ってくださってありがとう。
すごいですよね〜。「五分後の世界」あの戦闘シーンは50ページとかあるんでしょう?あそこで、読むのをやめられなくなりました。
>。(この時は、後に自分でも書くことになろうとは思いもしなかったけど) 
そうなんだ。皆さん、長く書かれている方ばかりと思ってました。意外でした。「ナチュラルボーン小説家」なんているんだろうか。羨ましい。まさに小説家のエリートだわ。
コミュニケーションね。現実は滑ってばかりです。今日、失敗したことを、夜寝る前に書き換えるんです。理想の形に。そういうのが、少しでも話に反映できたらいいんだけど、なかなかです。レイバックさんのように汲み取ってくださる人ばかりだといいな。
つる
2008/09/19 22:53

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