ハキダメにつる

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zoom RSS 「高円寺物語」2

<<   作成日時 : 2008/08/31 20:13   >>

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「高円寺物語」2

「何してんの?」メールを打ちだした志乃の手元に目がいった。

「うん。ちょっと待ってて。え、えきうら、で、でー、た、か、と、し、を、をー、み、みました、と。じゅうじ、じっぷん」

「何? それ?」

「へへへ。中学の後輩に情報提供したんだよ。タカ・トシの追っかけなんだ」

「へー。そんなのいるんだ、あいつらに。でも、マメだね」有名連ではときどき聞く。

「うーん、まあ、ちょっと弱みがあるからね」 

「ふーん」

 それ以上聞けなかった。志乃とは去年、高校に入ってからの友達だから、まだ少し遠慮がある。だけど、すごい美人。隣にいると自分が霞(かす)むのがわかる。そんな志乃は、なぜか先月からあたしのアニキと付き合いだした。小姑根性なんかじゃなく、やめたほうがいい、って言ったんだけど。
 5コ上のアニキ。今でこそマシになったけど、中高はハンパなく悪かった。おじいちゃんが、アニキとその仲間を小兵に入れた。血の気の多い連中には何か夢中になるものをさせたらよろしかろうという考えだ。
 いろんなことがあったよ。でもね、ときどき晋さんが言うんだ。その頃の小兵が一番活気があったって。そんなものなのかな。
 そのアニキの仲間も、高校卒業後はバラバラになった。今いるのは前歯のない仁丹だけだ。彼もアニキと一緒の大太鼓だった。



 もうすぐ家というコンビニの前、ウンコ座りの男子が数人で溜(た)まってる。知らん振りして通り過ぎたら声がした。

「みー、二百円貸して!」

 見たら、弟の祐二(ゆうじ)だった。

「やだよ」

「じゃ、百円でいいから」

「だめ!」

「なんだよ、ケチ」

「ケチと違うから。お金がないならコンビニなんて来んな。だいたい中学生が出歩く時間じゃないでしょう。もう十時過ぎてんだよ」

「言われた、言われた」

 コースチャが言うと、まわりが「あはは」と笑った。彼はロシア人だ。正式名コンスタンチン・ ガヴリーロヴィッチ・トレープレフ。愛称コースチャ。お父さんは新聞社の特派員。小学生の妹はプロテニス選手のシャラポアにそっくりだ。二人とも来日一年ちょい(ちょっと)で驚くほど日本語が上達した。

 あっっっ!!! あたしが閃(ひらめ)いた。

「ねえねえ、あんたたち、阿波おどり、やらない? どうせ暇でしょ? いつもここに溜まってんじゃん。そうだそうだ。
『キミたちのぉ〜、ありあまるかの、エネルギ〜、ぶつけてみよう、さあ阿波おどり〜』」瞳の短歌。

「やだ。ダセー」

 即答で祐二。三人兄弟の中でコイツだけは、阿波おどりの好きなおじいちゃんの血を受け継いでない。お父さんもそうだ。だけど、そんな祐二でも、小学校に上がるまでは踊っていた。

「じゃ、バイト代だすよ」

「いくら?」

「そ、そうだな。一日五百円とか。本番はニ日間だから千円」

 千円に、一瞬ぐらつく中学生。

「やすっ(安い)!」「流行(はや)ンねえよ」「やめとけやめとけ」野次が入る。

「やっぱ、いいや」野次に迎合する祐二。

「阿波おどり、ってこうだよね」

 コースチャが風に吹かれたコスモスみたいに、頭の上で手を振ったら、周囲で笑いが起きた。
彼はいつだって積極的に仲間の話に入ろうとする。確か去年の夏休みは家族でロシアに帰ったから、阿波踊りは見ていないはずだ。仲間についていけない、そういった話題がでると、さみしそうな顔をすることがあった。だから、チャンスだと思った。

「全然違うよ。こうだよ」

 あたしが上前をはねあげて、去年までしていた男踊りの振りをしてみせた。

「ふーん」言ったコースチャの表情は無感動に見えた。

「じゃあね。早く戻りなよ。もうすぐ期末(テスト)でしょ。いい加減にしときな」そんな彼らに、あたしが釘を刺す。

「でたー」「でたでた」 そいつらの、しょうもない声を背に歩き出す。


 そうだよ。

 うまくいくはずない。

 世の中そんなことばっかだよ。

 たかだか学校の部活にも熱中できないで、ゲームとファッションと女子の話しか頭にない男子中学生に、そんなのをふるほうが間違いだ。

 あたしは、いつのまにか若独楽に張り合っていた。とびっきり活(い)きのいい連中を引っぱりこんで、あいつらと対抗させようとしてた。


 無理なんだよ。はじめから決まってる。


 だって、


 ウチら、「ファミリー連」なんだ。 ヽ(*゜∀゜*)ノ



――つづく――



上前→浴衣や着物は左側の身頃が上になるように着ます。上にくる左側の見頃を上前、下にくる右側の見頃を下前といいます。着つけのときには、上前の脇線が右の脇にくるように着つけます。参考URL



 ここで4種類の踊りを見ることができます。

 今日のBGM→クリック。Don't Ask Me

 小学生も視野に入れてフリ仮名をつけます。夏休みですからね。読みづらかったらごめんなさい。

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コメント(10件)

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いくら暇でも中学生は阿波踊りしないでしょ(^^;
でもコースチャはまんまと食いつきましたね。

>風に吹かれたコスモス
 わかりやすい例えありがとうございました。
 思わず想像して微笑んじゃいましたよ。

なんとかなるといいですね。

2008/08/31 20:32
BGMが作品のイメージにぴったりで、聞きながら読むとさらに楽しめますね。
前回書きそびれたんですけど、「タカ・トシ」若さゆえの傲慢さが出てて、とっても良かったです。その傲慢さがカッコよさにもつながってファンも多いんでしょうね。
うちの近所でも白人の男子高校生を見かけるんですよ。しかも美形☆コースチャがどう絡んでくるのかも楽しみです。
ia.
URL
2008/08/31 21:50
こういう祭り前の雰囲気っていいな。まだ何が始まって、って訳じゃないのに。なんかわくわくしてくる。うちの地元は祭りの無い地域だったから(ショボイのはある)、だんじりとかね、阿波踊りとかね、大人も子供巻き込んで、町ごと血が騒ぐような「お祭り」に対する憧れがすごくあるんですよ。ああ、祭りのある町に生まれたかった(´Д`)
レイバック
URL
2008/08/31 21:56
舞さん、いつもありがとう。
コースチャで行を使いすぎた。だって、食いつくのが丸見えです。ははは。
初心者を入れないと、阿波踊りの説明がくどくなるから、こんなふうにしました。
中学生はねー、ほんと扱いにくいです。
つる
2008/09/01 00:09
ia/さん、いつもありがとう。
へえ、よかった。タカ・トシのいいところがあんまり書けてないなー、て心配してました。でも、男子って女子ほど繕わないから、こんな登場です。汲み取ってくださって嬉しいな。
そうなの。やけにかっこいい高校生っています。「栴檀は双葉より芳ばし」てやつね。
つる
2008/09/01 00:18
レイバックさん、いつもありがとう。
>憧れ
あー、わたしの実家のほうもそうですね。たまたま結婚して移住した地域で恵まれました。機会があったら案内したいくらいです。血が騒ぐよ。だって日本人なら、潜在的にそういうのってあると思うの。
わくわく感は嬉しいな。だって、書いててすごく楽しいんだもの。「人を笑わせようと思ったら自分が笑わない」を基本に、慎重に話を進めていきます。すぐ松岡修造になってしまいそうな自分がいるのよ。滑りたくないわー。
つる
2008/09/01 00:32
そういえば、以前、江戸っ子の年配の方にハチマキに法被姿の女性の写真を見せられ「うちの娘だ、どうだ?」と言われたことがありました。
どうだって、祭りの格好じゃピンと来ないw
やはり下町の方は祭り姿が世界標準晴れ姿なんすねえ。

テニスの錦織、ニュース見ましたか?
ジャンプスマッシュすごい、世界4位に勝つなんて!イケー!あ、松岡修造になってしまったw
銀河系一朗
URL
2008/09/01 23:38
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
そうみたいですよ。江戸っ子の粋てやつみたいです。わたしも最初は抵抗があったんですけど、サッカーのジャージと一緒で、見慣れてしまうとそうでもありません。
錦織すごいですね。テニスはよく知らないけど、彼まだ10台なんですね。
>イケー!
銀河系一朗さんでも熱くなることあるんだ。ちょっと意外だった。松岡修造はお互いやめておこう。
つる
2008/09/02 00:45
修造の暑苦しさこそ世界標準(゚ー゚;A
きっと祐二はやってくれるよ。人前で姉ちゃんの言うことを聞くのが照れくさいんだよ。全日本弟連盟の連盟員としての意見。
コースチャ踊ったら絵になりそう。ロシア人は手足が長いから踊ると大きく見えて迫力出る。というか日本人だとダメダメでも、あちらさんがやると格好よく見えることってありません?
主に通販のカタログなどでマジックを発揮するんですけど。

URL
2008/09/03 00:03
鯨さん、いつもありがとう。
>きっと祐二はやってくれるよ。
ああ、やっぱ鯨さんだわ。そうなのよ。バレバレの展開でもがんばるわ。
半天やパッチは、足の長い人は似合わないかもよ。腰帯の位置が決まらないからね。でも、顔はいいに、こしたことない。うん。通販はそれで騙される。

つる
2008/09/03 22:25

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