![]() photo by 全力オレゴニアン 「スノーボーイ」25最終回 なんと彼女は一千年先の未来へ時の流れを越えてやって来ました。そこには、果てない空を駆け巡る知恵と力と勇気の子、スーパージェッター君が住んでいました。もちろん2人は一目で恋に落ちると結婚しました。「よし! 行こう!」2人がマッハ15の流星号に乗リ込むと新婚旅行に出発です。ジェッター君が頼もしい声で言いました。「エネルギー全力噴射! 自動操縦スタンバイ!」めでたしめでたし。(歌詞まんまやん)<おわり>エンディングテーマ曲「スーパージェッター」「GO」をクリックすると聞けます。ふう、オワタ。 「スノーボーイ」25最終回 カーテンの向こうがオレンジの朝は、スコップの音が聞こえなかった。 昨日より寝坊だ。 下に行くとジローが一人で食事していた。 朝食サービスをするおばあさんが、タローは少年団の早朝練習に出かけたと言った。それを聞いて、彼がまだオーナーに例の話をしていないのか、と気が揉(も)めた。 それから、わたし達は10時を待たずにチェックアウトした。この日はギリギリまで滑ったら、そのままホテル前2時のシャトルバスに乗るからだ。 「お世話になりました」玄関に見送りしてくれるオーナーとおばあさんに挨拶していると、奥からケンケンでジローが出てきた。 「ジロー君、またね。赤ちゃんを可愛がってあげてね」 さっきオーナーが取った電話で、彼に妹ができたことを知った紗季が言った。「うん」ジローは嬉しそうに答えた。 「カッコいいボーダーになるんだよ」 景子が彼に両目をつぶって見せると今度はめちゃめちゃ照れた。景子スゲー。 「……」 わたしの番なのに「さよなら」が言えなくて咽が詰まった。口にしたら最後、もう会えない気がした。だって、「また明日ね」のそれじゃない。 「したっけ」 ジローは道産子(どさんこ)の「さよなら」だ。 「……うん、したっけね」 わたしも真似っこする。だってそれ以外の何が言えるっていうんだ。 右手で繰り出したわたしの 「あらーっ! なんじゃこりゃあ」 紗季が素っ頓狂な声を上げた。 雪だるまの代わりに乾燥室の熊が立っていた。首から「ペンション スノーマン」のプレート。横には飛び蹴りをくらったような胴体と青いポリバケツが転がっている。マジック書きの「りゅうたろう」が半分見えた。 「ふふっ」 彼だ。 「これ、シャレになんないでしょう」 景子が呆(あき)れたように首を振った。東京のド真ん中ならともかく、このロケーションだ。 「叱られるんじゃないのぉ?」 何故だか紗季がわたしを見る。「たぶんね」とわたし。たぶんそう。少年団のことがうまくいかなかった。 でも、この爽快感は何だろう。 宿泊ノートを読んだ彼が、いくじなしのわたしの代わりに snow man をやっつけた――そう思うのは自惚(うぬぼ)れだろうか。 「なーんてね」 青空の下で午前中いっぱい滑ると、バスを待つ僅かな時間に「パトロール隊本部に行く」と言う紗季につき合わされた。 「お世話になりました。これから帰ります……」 慎二さんにそれが精一杯の紗季。頭を下げた彼女が、わたしを小突いた。だから紗季のあとを受けて慣れないセリフを口にした。 「メメメメメメ、メールアドレナリン――」アドレナリンだしてもらってどうする。 「メアド、いい?」すかさず景子のフォロー。小さな両目ウィンクがオマケについた。 慌てた慎二さんと、その横の同僚も釣られて携帯を出した。やっぱ景子スゲー。 定刻の10分前に千歳行きのシャトルバスが着いた。 乗り込んで発車を待つ間に景子はメールを打っていた。相手はきっとひと足先に帰った常連さんだ。 紗季が、ウーン、と伸びをすると「あー、旅行も終わりだあ」と溜息をついた。「まだニセコだよ」お終(しま)いにしたくない自分がいる。 「結局、もてあそばれたってことなのかなあ」紗季の「もてあそばれた」発言に、携帯から顔を上げた景子とわたしが「意味違うし」と笑った。 「だってぇ、こっちが聞くまでメルアド教えなかったわけでしょう? だからそういうことなんだよ、きっとぉ」駄々をこねるように紗季が体を揺すった。 「とか言ってて、するくせに、メール」景子の突っ込みに「(そう)なんだけどね〜」と紗季はぺロリと舌を出した。 ブルルンとバスが身震いすると、いよいよ発車だ。タローは来なかった。バスの時間をおばあさんに伝えてあったから、どこかで期待していた。それももう時間切れだ。 いちいち宿泊客の見送りでもないよね。あの子だって忙しいんだ。そうだよ、赤ちゃんも生まれたし少年団だし――。 お別れのひとつも言えなくて胸がチクンとした。 バスが国道を走り出した。はじめのカーヴに差し掛かると、下に湯煙の温泉街が見えた。 「きゃあっ!」 急ブレーキをかけたバスに前倒しになった乗客が悲鳴を上げた。大きなフロントガラスを 中腰で窓にへばりついて、目がそれを追う。 タロー? てかタロー。 グラブでバックフリップした彼が、縦回転の後半で横回転に入る。ゆっくりとしたメイクは、 ハーコンセン。誰よりも誰よりもハーコンセン。谷を飛んで行く。 「あっぶねえなあ、もおっ」運転手の舌打ちが聞こえた。 違う―― 滞空時間を持て余すようにもう一度横回転が入る。終盤で丸まった体が伸びると、鉄棒から飛び降りるような格好になった。あっ! フライング・ばなな・スペシャル! 白銀をバックに、大きく反(そ)ったライムグリーンがバナナになった。まだ青いバナナ。 それが斜面に落ちた自分の影を踏むように着地すると、ふわっと王冠が上がった。そこから抜け出てラン(run)をするタローの細い腕が、何度何度も突き上げられた。「ヤター!」と言ってる。 フィニッシュが決まると、「ヤター」が「さよなら」に変わった。下からこちらに向けて大きく手が振られる。 「したっけーっ!」 タローの声が聞こえた気がした。 わたしは硬い窓をこじ開けて身を乗り出すと、 「うんっ! したっけねーーーっ!!!」大声で叫んだ。 エンジンをかける音。バスが動き出した。車内に「やれやれ」という乗客の安堵のざわめきが広がる。 窓枠にしがみついたまま胸のドキドキが修まらない。すぐにタローは見えなくなった。後ろで紗季の声がした。 「びっくりしたねえ」 「ふふふ。やっぱね」景子がお見通しだよとでも言わんばかりの声で続ける。「カッコいいとこ見せたかったんじゃない? ばななに」 「ちょっとぉ、いつまで開けてるのん。寒いやんか。閉めてぇ」 背後から迷惑そうな声がした。見るとパンチパーマのおばさんだ。ツアーの一人なのか、まわりに同調を求めるようにしている。 「すみません」 慌てて窓を閉めながら思った。板を買う余裕があったらもう一度ニセコに来ようって。 持ってる板は元カレが選んだものだった。それが癪(しゃく)に障(さわ)ってシーズン中に買い替えるつもりでいた。だからバイトしてた。 でも、そんなの関係ない。今はそう思える。 帰ったら店長に頼もう。時間の延長を頼んでみよう。深夜ならバイト料金だって割がいいはずだ。コンビニ強盗クソくらえ。なんなら出勤日を増やしたっていい。 そうだ、そうしよう! そうすれば春休みにまた来れる。絶対来るってもう決めた。 「わたし達3人はさぁ、3泊4日で恋をしたんじゃない?」バスに揺られた声で紗季が言った。「わたしは慎二さんに、景子は坂本さんに、ばななは――」 「え? わたしも?」 いつまでも窓ガラスにおでこのわたしが彼女達に向き直ると、景子が「もちろんだよ」当然のように答えた。 「誰に?」わたしは景子の顔を見る。 彼女の指がピストルになると、わたしの心臓で止まった。 パン! サイレンサー付きの銃口が跳ね上がると、 「うっ」わたしは二つ折りになった。 美しいスナイパーが冥土の土産(めいどのみやげ)に教えてくれる。 「スノーボーイに」 やだっ! 景子も読んでる! ガバと体を起こしたわたしの目に、フウと硝煙を消す彼女が見えた。 「あ、エゾ富士」 誰かの声がして、窓に青い羊蹄山が映った。 その頂の遥か高みに、いつかのタローのメソッドがある。 そうか。 2人が言うんなら、そうかもしれない。 ![]() ![]() <おわり>![]() ![]() ヤター! スノーボードの技「ハーコンセン」又は「ハーコンフリップ」はハーフパイプの技です。だからタローのようにワンメイク(ストレートジャンプ)の場合は、そう言わないみたいです。でもテリエ・ハーコンセンの名前を出したから、ここでは「ハーコンセン」を使いました。 調べていくと、 ワンメイクのハーコンフリップ→「スイッチマックツイスト720°」 マックスツイスト→「ハーフパイプトリック。バックサイド180°とフロントフリップを合わせた、ワンメイクで言うミスティフリップ」 ミスティフリップ→「ワンメイクトリック。通常、ブラインドサイド180°+フロントフリップを指すが、時々720°回ってしまうツワモノもいる」はあ? です。 又、他のサイトではハーコンフリップを「ロデオ」「スイッチOP540か720でバックフリップ」「OPミスティー」等の解釈をしているものもありました。.OP? ミスティ? Σ( ̄ロ ̄lll) もうね。理解不能。終いにはワケがわからんごとなりました。 スナイパー→狙撃手。 バックフリップ→後方宙返り。 スノボー用語集→クリック。 ゲレンデ図→クリック。 北海道弁参考URL→クリック。 ありえない。ありえないんだけど最後に大嘘(タローのジャンプ)こきました。これが書きたい!もうそれだけでここまで来ました。 最後までおつき合いくださって本当にありがとうございました。 次回は「読書感想文/『スノーボーイ』メイキング」です。要は言い訳と反省です。 今日のBGM→クリック。 オマケ→北海道弁検定 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。 |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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良かったです〜!さすが映画好きのつるさん、ラストシーンと言い、前回の花火のシーンと言い、演出がうまいですね。 |
ia. 2008/06/06 23:14 |
ia.さん、いつもありがとう。 |
つる 2008/06/07 00:28 |
いやー良かった。すごく良かった。 |
レイバック 2008/06/07 01:27 |
レイバックさん、いつもありがとう。 |
つる 2008/06/07 09:59 |
連載お疲れ様でした。 |
鯨 2008/06/07 21:17 |
ごめんなさい。 |
舞 2008/06/07 21:46 |
鯨さん、いつもありがとう。 |
つる 2008/06/07 22:54 |
舞さん、来てくださってありがとう。 |
つる 2008/06/07 23:01 |
連載無事終了、おめでとうございます! |
shitsuma 2008/06/07 23:03 |
shitsumaさん、いつもありがとう。 |
つる 2008/06/07 23:40 |
よかったです! |
銀河系一朗 2008/06/10 23:38 |
銀河系一朗さん、連コメありがとう。 |
つる 2008/06/11 00:04 |
こんばんはー。お久しです。まぁ、あれだ、僕は、好きなものは最後に取っておくタイプなんだなー、ハッハッハ…(汗) |
火群 2008/06/16 18:39 |
火群さん、いつもありがとう。 |
つる 2008/06/16 22:35 |
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