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zoom RSS 「スノーボーイ」16

<<   作成日時 : 2008/05/12 20:54   >>

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photo by ニセコ Walker山頂へ向かう人々の列。中央右に最終リフトの駅が見えます。


「スノーボーイ」16

 乾燥室は負のエネルギーに満ちていた。

 やっと気づいた。オセ〜(遅)

「言わさったべ?↓」タロー。
「何を?」
「俺らがアンヌプリさ、いたの、言わさったべや!」

 ええっ?! 

 どうやら少年団をさぼったのがバレたようだ。わたしのせいだと決め付けている。すれ違ったオーナーは彼らを叱った後だったのだ、と思った。

「言ってないよ」
「嘘だ! 父ちゃんがばあちゃんから聞かさったっちゅうたべ」
「おばあさんから?」
「俺ら、さっき、ばなな達がばあちゃんとくっちゃべってんの見たっけ」

 ち、違う! 誤解だ。

「あ、あれは――」

 レシピを聞いただけだ。

 タローの睨んだ顔に怯(ひる)んで、何も言えなくなった。

「大人は嘘ばっかだべ!」
「嘘ばっか、て――」

 さっき、おばあさんの言っていた事だろうか。

「今日、坂本って人が6分切ったんだと」
「さ、坂本? 6分?」
「ロン毛の人だべ」横からジロー。「あん人がてっぺんから下まで6分かかさらないで降りたんだと、ボードで」

 最終リフトを下りると山頂に続くゲートがある。そこから20分ほど登るとアンヌプリ山のてっぺんに出るのだ。天気の良い日は小樽や洞爺湖まで見渡すことができる、そうガイドブックに書いてあった。
 だけどゲートから上はスキー場管理区域外だ。自己責任エリアてやつ。

「それって速いの?」
「はんっ!」知らないならいい、とばかりにタローが鼻を鳴らした。
「嘘に決まってんべ」ジロー。

 すっかり大人不信のようだ。

「本当かもしれないよ」大人を弁護するようにわたしが言った。
「したら、証明しれ」

 久しぶりに聞いたよ、証明。

「何よ、証明て」
「ばななが6分切ったら信じんべ」

 ハア? 

 どうしたらそういう発想になるんだ。わたしが滑ることと、大人が嘘をつかないことが繋がらない。

 彼らはもう、冗談のひとつも受け付けない顔でいる。この沈黙は、きっとわたしが口を開くまで続くんだろう。
 
「わかった、やる」

 タローとジローは顔を見合わせた。わたしの返事が意外だったようだ。

 6分切ればいいんでしょう。6分。

 やってみようと思った。
 自信はないけど、わたし達が告げ口してないことも、ロン毛の人が言ったことも、大人が嘘をつかないことも、全てそれで解決する。 

「その代わり条件がある」タローを見て言った。
「なんだべ」
「そのスキーを貸して」 

 わたしは壁に立てかけられた2組のアルペン競技用の長い板を指した。K2。たぶん彼らのものだ。
 わたしのボード歴は2年。たったの3シーズンだ。スキー歴の方がずっと長い。スキーなら何とかなりそうな気がした。

「はん! スキーだらわけねえべ」

 そういうタローは、スキーでそのタイムをとうにクリアしているんだろう。わたしが黙っていると、

「したら勝負すんべ。俺が負けたら、それ(K2)、やる」と言った。

 賭けかよ!

 負けたら、とか言うくせに、これっぽっちもそう思っていない顔だ。すごい自信だと思った。ボードでスキーに勝つつもりだ。

「いいよ」その顔を見て思わず返事した。「だけど賭けはナシね。いい?」

 タローがコクンとする。

「じゃ、ブーツ、あるかな。スキーブーツ。22.5cmくらいの」

 わたしの言葉にタローが棚のブーツを指した。

「あんちゃんの、23cmだんべ」ジローが付け足すように言った。

「じゃ、それも貸りるよ」靴下を2枚履けば何とかなるだろう。

 タローが又コクンとした。 
 
 いつのまにかタイムアタックがバトルになった。

 負けられない。絶対負けられない。わたしと紗季の名誉だけでなく、大人の代表として負けられない。 
  
「オラも。オラも行く」なぜかウキウキとした調子でジローが言う。おまめの気楽さだろうか。

 だけど――

 相手はタロー。今日の彼のライディングが蘇(よみがえ)った。
 
「あのさ。タローはホームゲレンデでしょう。わたしにハンデ、頂戴よ」
「ハンデ?」
「そう。ハンデ。例えばタローが遅れてスタートするとか、スイッチ(スタンス)とか」

 どうよ!

「いいべや、スイッチ」

 あっさり承諾するタロー。
 
 それで気が済んだのか、彼らは中断していたワクシングの続きを始めた。アイロンまで使って手慣れたものだ。
 
 その作業を横目に、わたしは立てかけてあったスキー板に触れた。エッジが立ってよく手入れされている。子供じゃこうはいかない。きっとオーナーだ。それを見ただけで彼らがいかにオーナーから期待されているかがわかる。
 板を戻すとタロー達の脇にしゃがんだ。わたしは自分達3人のボードにベースバイオレットを生塗りする。
 
「押すな」
「あんちゃんだべ」

 タローとジローの小競り合いで何か落ちてきた。

 滑走用ワックス。しかもFFS10と25だ。




 ミックスかよ!
 



 向こうは本気だ。




 頭がカっとする。

 ニセコに来てから、わたしの怒りの沸点は低くなった。







<つづく>



6分で滑ったとか言ってる人クリック。 
おまめ→オマケで遊びに加えてもらえる小さな子。例えば鬼ごっこだったら、捕まっても鬼にならない。
スイッチスタンス→フェイキーで行うトリック。
フェイキー→後ろ足を進行方向に向けて滑走すること。スイッチスタンス。
アイロン→ホットワックス専用アイロン。
ワクシング→ワックスをかける作業。ワクシングの方法。
ベースワックス→ガリウムのベース用ワックスには、ピンク、バイオレット、ブルー、グリーン等があります。
滑走ワックス→ベース用ワックスの上に塗ります。
ガリウムクリック。
スノボー用語集クリック。
ゲレンデ図クリック。
北海道弁参考URLクリック。


担当編集者「滑走ワックスのFFS10と25ってへんじゃないスか?」
つる「そお?」
担当「春スキーでしょ。なら49と69じゃないかなあ。ちなみに僕、ボードやるんですよ」
つる「ふーん。でも3日目は−10℃のゲレンデなんだよ。10と25で合ってるし」
担当「は? いくらなんでも3月でそれ無理。ココの気象データベース見てくださいよ」
つる「へー。じゃ冬休みにする」
担当「ぁあっ?!」

 はい、ここへきて矛盾が発生しました。1月でなければだめじゃ〜ん!
 第一回の文中「春休み→冬休み」何がなんでも変更です。ごめんなさい。
 え? 矛盾はそこだけじゃないだろうて?うう、ご一報下さい。

今日のBGM→クリック。ロボコップのテーマ

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
おお。これはチャイニーズダウンヒル状態になるのでしょうか?楽しみだー。やっぱこういう好きなジャンルの話は面白いですわー。ささセンセ早く続きを書いてくだせぇ。細かい設定は気になさらずに(笑)
レイバック
URL
2008/05/12 23:38
レイバックさん、ありがとう。
ごめんね〜読む気なくなるような設定してしまって。
話に矛盾があると途端にドン引くわたし。そう言ってくださる心遣いが嬉しいです。
>チャイニーズダウンヒル状態
何だろ?ちょっとググってくる。待ってて。

p−−−−−−

「ファンスキーのレースの一つ。ゲレンデの林道コースや迂回コースなど比較的難易度の低いコースを
 使って行なう20〜50人単位で滑り順位を決めるレース。
 スタートは両手を着き、寝そべっての状態である。」
スタート、ビーチフラッグかよ!(一応つっこんだ)
あ〜、林間コースは滑る。だって、例のパトロール隊のブログを見ると、とても楽しそうなんだもの。
このあとのヘタクソな文章は、写真と皆さんの想像力頼みで書きます。
つる
2008/05/13 03:00
小学生の売り言葉を買ってしまうとはね。
車のことで元彼を思い出してイライラしてたような流れを出してもよかったですね。
地元の山猿?が出したタイムを普通の人間が破るのは大変そうですが、どうなるか?
銀河系一朗
2008/06/02 23:02
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
ここね。もっと自然にいくと良かったんだけど、ちょっと無理やりですかね。ただ実際のクソガキの発言にカチーンときたことあります。いざ自分の身に降りかかると冷静に対処できないもんです。車ね。うんうん、そんな感じです。あんまり書きすぎて彼女の嫌な面をだしたくなかった。でもちょっと足りないかな。
タイムねえ。このあと読んでくださればわかるけれど、ここの部分は強調しないほうが良かったのかもしれないです。そこらへんのところはまたあとで聞かせてください。
つる
2008/06/03 18:08

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