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zoom RSS 「スノーボーイ」23

<<   作成日時 : 2008/05/31 19:20   >>

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photo by 北海道森林管理局


「スノーボーイ」23

「へ〜新しい彼女なんだ?」「……」「だったら、アタイはどうなるんだい?」「……てか俺らつき合ってなくねえ?」「あ〜そう来る?そうかいそうかい。そりゃ悪かったね〜アタイの勘違いだったんだ」<つづく>終わらね〜

「スノーボーイ」23

《わたしはいくじなしです。
 何故なら、わたしはつき合っていた彼が他の女の子と車に乗ってるのを見て、何も言えなかったからです。
 彼から来る電話の間隔が空(あ)き始めていたから、ああそういうことなんだなってすぐわかりました。それに、よく考えたら「つき合ってくれ」なんて言われてなかった。何となくでした。何となく始まった交際が何となく終わった、それだけです。
 その彼のハンドルネームがスノーマン(snow man)でした。

 毎日がつまらなくて、そんな時です。友達が旅行に誘ってくれました。旅行会社からペンションの名前を聞いた時はドキンとしました。わたしに又スノーマンが現れたって。
 でも、来てみたらそこにいたのはスノーマンじゃなくてスノーボーイでした。しかも2人組。だからスノーボーイズ(笑)
 彼らのジャンプを見たら、ボードを始めた頃に知った一人のプロボーダーが浮かびました。
 そう、テリエです。テリエ・ハーコンセン。
 わたしは彼を尊敬しています。そのスタイルはもちろん、考え方もです。彼にとってスノーボードとは「自分自身になる事」そして「パウダーを友達と滑るもの」だそうです。だから彼はオリンピックの参加を拒否しました。

 わたしも彼と同じで、友達と滑るのが好きです。会話をしなくても通じ合えるから。
 ここで知り合ったスノーボーイズとも友達になりたいな。そして一緒に滑りたいな――》





 ゴンドラの始発駅が見えると、斜面にできた自然のポコジャンで一度だけタローが飛んだ。3D(スリーディー)系のトリックだった。クラッシュ! 深雪に埋まった彼を覗き込むと「練習中だべさ」雪の結晶を乗せたまつ毛で、はにかんだ。

 ハーコンセン?

 それはスノーボードの神様と言われる、テリエ・ハーコンセンが編み出した技だ。
 偶然じゃない。山小屋での彼の言葉といい、今のワンメイクといい、この子はわたしが書いた宿泊ノートを読んでいる。ハーコンセンを飛んで「元気だせ」て言ってる。

「Great!」 傍にいた外国人の一人がわたし達に言った。「What do you call that trick you just did?」

 「パードン?」聞きとれなかったわたしが聞き返す。北欧の海賊を思わせるような風貌の外国人が、ゆっくりともう一度同じセンテンスを繰り返した。
 タローがわたしを見て「なん?」という顔になった。「『今の技は何て言うんですか?』だって」と答えると、彼は白い歯を見せた。

「フライング・ばなな・スペシャルだんべ。やってみっかい?↓」

 わたしが訳して伝える。「イッツコールフラインバナーナースペシャル。シャライティーチューハウトゥドゥイッ。(It's called Flying Banana Spesial. Shall I teach you how to do it?)」

「Are you kidding me?(冗談でしょう?)」

 海賊がオーバーに肩をすくめると、訳す前にタローも皆と一緒に笑った。





 それから、ジローが待ってるというパトロール隊本部のあるプリンスホテルに向かった。
 ストックを漕ぐわたしの横にスケーティングの彼が並んだ。

「俺、フリースタイルの選手になりたいんだわ」

「タローならなれるよ。きっと」

「したから、少年団辞めんべ。父ちゃんさ言うちゃる」

「えっ」

「して慎二兄ちゃんのチームさ入んべ」

「ボードの?」

「うんだ」

「少年団じゃだめなの? お父さん、いいって言うかな。期待してると思うよ」

「父ちゃんだら自分が競技スキーだったっけ、そったら言うけんど、俺はボードがしたいんだわ。少年団はスキーっかねえしょや」

 同じだ。母とのやりとりを思い出した。それは去年の今頃の話だ。
 わたしは親の言いなりに5才からピアノを習っていた。特別にピアノが好きとか才能があるとか、そういうことじゃなかったから、ずっと辞めたかった。
 タローのお父さんと同じように母にとってのピアノも、自身がやりたかったことだ。子供は親の身代わりではない。そんなことわかりそうなものじゃないか。
 短大進学を前にそれを告げると、母は感情的になった。「幼稚園児に聞かせる為に13年間も高い月謝を払ったんじゃない」そう言うだろうと思ってた。だから18まで言えずじまいだった。

 なのに、タローはこの年でそれをする。

 わたしより全然大人だ。

「そっか。うまくいくといいね」

 口角が引かれた彼の横顔は希望に満ちている。

 今頃になって痺(しび)れていた頬がじんじんしてきた。ネックウォーマーで覆いきれなかった部分だ。触れた皮膚は、解凍された冷凍バナナのようだ。





 凍傷だった。







<つづく> 




ハーコンセンこんなの。
テリエ・ハーコンセン→スノーボード界の神と称されるテリエ・ハーコンセン。 一昨年に引退を発表した彼は、「The OAKLEY Arctic Challenge」(2007)でクォーターパイプ世界記録(9.8m)を打ち立てました。参考URL彼のイメージはOAKLEYのCMでどうぞ。もっと詳しくはココ
ポコジャン→ちっちゃいジャンプ台のこと。参照URL
フリースタイル→用具は主にフリースタイルの用具を使用する。キッカーを用いたワンメイク・ジャンプ、ハーフパイプ、ハンドレールなど、主に設備を利用するのが特徴。例外的に施設を使用しない、「グラウンド・トリック」と呼ばれる滑走技術も一般にはこの中に入る。
3D(スリーディー)→縦回転と横回転の混じったトリックエア。
スノボー用語集クリック。
ゲレンデ図クリック。
北海道弁参考URLクリック。

 はい。今日、気がつきました。「スノーボーイ」ぢゃなく「スノーボーイズ」だって。バカ〜
 そして、書き散らかしたネタの回収作業は辛い……。

今日のBGM→クリック。ずっと一緒さ

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
テリエキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
まさに神様ですからねぇ。
一度はお会いしたいもんだ。
ハーコンフリップは基本パイプの技なんですが、ストレートでやるとキャブコーク5になるのかな。でも動画のように縦が強いのはハーコンで通用しそうっすね。次回も楽しみにしてますぜ。
レイバック
URL
2008/06/01 00:24
もうすぐタロー&ジローとお別れだと思うとさみしいですね。
ミステリは「人殺しの小説」じゃなく「謎解きの小説」ですよ(笑)スノーボーイの場合だと「タローがハーコンセンスタイルを見せてくれた謎」や「タロー&ジローがイジワルな謎」などを前面に出して書くと、もうミステリになります。
ia.
2008/06/01 00:32
レイバックさん、いつもありがとう。
テリエ、凄いね。調べていてワクワクしちゃった。わたしでさえテリエに会ってみたいんだから、ボーダーさんならもっとでしょうね。会ったらオーラ出てるね、きっと。
>ハーコンフリップ
え〜?「ハーコンセン」ぢゃなくて「ハーコンフリップ」て言うの?
>キャブコーク5
顔洗って出直します。知らないことばかりだ〜
>縦が強い

もうムリ……

期待に添えなくても大目に見てね。今から言い訳しておこう。それでも持てる力MAXで頑張ります。
つる
2008/06/01 02:10
ia.さん、いつもありがとう。
ia.さんはやさしいね。コメ見ていつもそう思います。
>ミステリ
犯罪が絡むものがミステリと思い込んでいました。難事件を解決するイメージがあったんですもん。敢えて「日常のミステリ」とか言うでしょう?だから「非日常」がミステリだとばかり。しかもすっきり解決をみなければならないって。でもね。「チルドレン」の「バンク」を読んで、本当のところはうやむや(ネタバレ)みたいなのも「あり」なんだ、て開眼した。
皆さんと比べたら寿命が断然短いわたし。欲張りにならないようにジャンルを絞って、それでも時々は違うものに挑戦してみたいな。
つる
2008/06/01 02:23
うん、子供にどういう未来が選択できるかって示してあげることは重要ですよね。それもひとつに決め付けるんじゃなくて、いろいろあるんだよって。
偏差値上げて難しい大学入るなんてところに目標おいたら、後はしらけそうだし。
銀河系一朗
2008/06/09 22:50
銀河系一朗さん、連コメありがとう。
ほんとにそう思います。日本人はひとつのことに偏るケースが多いかなと思います。外国の選手てオフなんかには他のスポーツにも経験しますよね。中にはサッカーの選手でありながら弁護士だったりするそうです。
五月病がまさにそうですよ。大学のその先の展望が見えないから、きっと気持ちが切れてしまうんでしょう。
偏差値かぁ。昨日も嫌な事件がありました。
つる
2008/06/10 01:26

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