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zoom RSS 「スノーボーイ」20

<<   作成日時 : 2008/05/23 18:51   >>

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photo by Niseko Village

「スノーボーイ」20

 タローとジローの後ろに大きな(´・(ェ)・`)クマーが立っていた。そう、あの乾燥室にいた熊だ。「それ、生きてたんだ?」「そうだべ」「早く乗るべさ」ガフーン!わたし達3人を乗せた熊がひと鳴きすると、まるで猫バスのように飛び上がった。アンヌプリ山を時速60kmくらいで駆け下りて行く。しがみついた熊の下にガス(霧)に煙った水野の沢が見えてきた。その完全立入禁止区域にチラホラとボーダーの姿があった。「あっ!あれ、小久保て人だわ」ジローが言った。タローにビンタくれた奴だ。よーし。「ペッペッ」わたしは上から唾を吐いてやった。いい気味だ。それにしても「くっさーっ!」鼻がもげそうな臭いだ。「オラじゃねえべ」「俺も違うべ」おならじゃないのよ、おならじゃないのよ。熊が臭いのだ。あまりの臭さに目まいがした。掴んだ熊の背から手が離れていく。あ〜れ〜。BGM<つづく>ウソ。続きません。前記事のコメに「熊案」をいただいたので調子こきました。ゴメンナサイ。


「スノーボーイ」20

「お、おしょい(遅い)」

 何言ってんだ、わたし。しかも寒さで口がまわらない。

「ほれ、だから言ったべや。途中であんちゃんが小便するっちゅうからだわ」

 ジローがタローを責めるような口調で言った。

「は? おまえもしたべや」

「しょうねえべ。オラも満タンだったわ」

「したっけ、なげーんだわ、コイツ」

 そう言ってジローを指(さ)したタローがわたしを見た。こっちにそんな話を振られても困る。

「したら、かき氷レモンみたくなったさあ」

 あっけらかんとジローが言うと、2人で「ハハハ」と笑った。この吹雪の中でオシッコをしたというのだから呆(あき)れた。聞いただけで寒い。
 彼らは物珍しそうに小屋の中を歩き回ると、壁にイタズラ書きを始めた。小屋の内側にこんもりと霜がついているのだ。そこへグローブの先でバカとかアホとか書いては喜んでいる。たったそれだけのことなのに、わたしは死の淵から引き戻された気がした。

 寒暖計を見ているタローが言った。

「ここ、待ち合わせと違うっしょ」

 ちぇっ、気づいたか。
 
「そ、そだね。何でここがわかった?」

「ばなな、来なかったしょ〜。したから、ゲートのとこンであんちゃんが下りてくる人に聞いたんだわ。『ピンクの人知りませんか? ピンクの人見ませんでしたか?』ちゅうて」

 ジローの言葉にタローは知らん顔をしている。聞こえてないみたいだ。
 確かにわたしのウェアはピンクだった。しかも派手なショッキングピンク。
 
「したら、『山小屋で見ました』ちゅう人がいたんだわ。そン人達は、なんかアンヌプリさ行くのぉ、マツガエたとかでぇ、看板、見えんかったって、なあ?」

 ジローが相槌を求めるように言うと、タローが振返って言った。

「うんだ。して、『すげえブス』ちゅうしょ。したから、すぐわかったさ」

「えっ?! ひど〜い!」

「うそだべ」ほんと意地悪。

「だけど行き違いになるとか思わなかったの?」

「うん。思わね。したって、いくじなしだべ」

 あっ! と思った。
 この子はわたしが書いた宿泊ノートを読んだ。それはホールのローボードの上にあって、誰でも記帳することができる旅の思い出ノートみたいなものだ。

「して、来たっけが、小屋の前の板、雪掃(はら)ったら、やっぱ俺のだべ」

 そうだったのか。

「何してんべ」

 ウェアを持ち上げるわたしを見てジローが言った。

「携帯を温めてたんだよ」

「あっためてどうすんべ」

「電池マークが消えそうだったんだよ。温めて復活したら救助を頼もうと思ったんだ。遭難しましたって」

「はっ? 遭難て――ニセコルール知ってんべや」

「ニセコルール?」

「お金さ、かかんべ。場所がわがれば何万、わがんなけば何十万て。慎二兄ちゃんが言ったっしょ」

「そ、そうだっけ」

 なななな何十万て――

 ゚・:,。★【冷凍電池】★,。・:・゚

 ――そんなことガイドブックに載ってないよ。
 
 それからタローとジローはバックパックをおろすと中から水筒を取り出した。タローから水筒の蓋を受け取ったわたしは、2人から代わる代わるお茶を注がれた。

「ありがとう」

 お茶のお礼と来てくれたお礼だ。2人の口元が緩んでそれが伝わったのがわかった。
 きっとおばあさんが持たせたお茶。この寒さですっかりぬるくなっていた。それでも咽(のど)が潤(うるお)ってひと息ついた。
 タロー達はボトルのまま残りを飲み干している。
 それを見て短大の実習を思い出した。子供は大人よりずっと水分を必要とする。なのに彼らはわたしに分けてしまった。あれだけじゃきっと足りない。
 その気持ちがいじらしくて、予備のホカロンの封を切ると、2人の背にすべりこませた。「やめて! もちょこいから」くすぐったがりが肩をすくめた。せめてものお返し。

 バックパックをしょった(背負った)タローが立ち上がった。わたしは慌てた。

「ちょ――」

「なん?」

「もうちょっとだけ待ったほうがいくない?」

「何でさ?↓」

「止むかも」

「今、何時?」

「へ?」

「何時だべ」

「2時」

「3時さなったら、日が暮れんべ」

 ――そうだった。


 表の猛吹雪の中で2人は黙っている。さっきまでのお喋りが嘘のようだ。彼らから緊張が伝わってくる。
 立ててあったスキー板にもスノーボードにも雪が張り付いていた。彼らが雪を掃うと下からバートンのステッカーが覗いた。昨夜わたしが渡したものだ。それが仲直りの印に思えた。


 まっ白い世界。5m先も見えない。たちまちゴーグルが凍った。外しておでこだ。タローとジローもそうした。
 履いたばかりの板にみるみる雪が積もっていく。

 つけ終えたタローがバン、バン! と跳ねると、力強い声で言った。

「おしっ、行くべ!」

「行くべっ!」

 ジローも気合が入っている。2人の頼もしい声に、

「うんっ!」

 わたしも大声だ。

 でないと風にかき消されそうだった。


 


<つづく> 


もちょこい→くすぐったい。
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ゲレンデ図クリック。
北海道弁参考URLクリック。

担当編集者「あっ!と思った宿泊ノートって、何が書いてあったんですか」
つる「そこなんだよね〜」
担当「とか言って書き忘れでしょう」
つる「なんとでも言え」
 
今日のBGM→クリック。ウルトラマンメビウス

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(8件)

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( ^ω^)久しぶりの一番?

タロジロ格好良いよ。そして南極探検隊みたいだなと思ったら、やはり名前の由来はそこだったんですね。前記事のコメント欄で知りました。
「タローとジロー」と書かれるたびに高倉の健さんがチラついてチラついて。

URL
2008/05/23 21:33
乾燥室の熊が伏線で、実はこんなところに絡んでくるとは!(違)
……冗談はさておき、タロージロー、グッドタイミング! さすが雪国育ち。ホームグラウンドとあって、テキパキとした行動が頼もしいですね。ばななが渡したステッカーをつけていたという描写に、にやり。細かな設定が効いてますね^^
さぁ、三人がどう和解してくれるか……それとも、まだ意外な展開が隠されていたり? 楽しみです。
shitsuma
URL
2008/05/23 23:25
鯨さん、いつもありがとう。
>タロジロ格好良いよ。
え〜?立ちションしちゃったのにぃ〜?
やっぱり実際の男の子ってカッコいいかと思うとそうでもなかったりするんですよね。下系のものを書くとへんなトラバが怖いんですが、思い切って書いてしまいました。
うん。南極物語はいい。人間の身勝手さを浄化する。そして犬達はたくましい。都会は人も動物もひ弱にしてしまうね。
つる
2008/05/24 00:33
shitsumaさん、いつもありがとう。
熊、いいでしょう。出しといて良かった〜。

雪国といえば、ニセコは氷点下10度くらいみたいなんだけど、富良野だと氷点下20度くらいまでいくそうですよ。超ビックリ。
ステッカー、ニヤリとしてくださってありがとう。和解はね。この時点ですでに会話しちゃってるからないです。誤解も解きません。子供って言いっぱなしで、なんとな〜く終わりにしませんか?親しい友人や家族にきちんと謝れる子なんているのかな。少なくとも自分はできなかったからこんなです。展開?ひゃあ。ミステリじゃないからドンデン返しなんてとんでもない。
つる
2008/05/24 00:45
(´・(ェ)・`)クマーだ!!(´・(ェ)・`)クマーだ!! ワッショイ。ワッショイ。超展開したー!!!
……と思ったら違かった。残念のような残念ではないような…(笑)おならじゃないのよ、おならじゃないのよって…(爆)つるさんのノリのよさに白旗です。

行動で仲直りか。じつに男の子してるキャラクターですね、タロジロ。なんかいきいきしてて、気持ちいいですね。
火群
2008/05/24 01:51
火群さん、いつもありがとう。
>ワッショイ。ワッショイ。
持ち上げられて続きが書きたくなった〜
>違かった
若いね!わたしも使ってみよう。
>おならじゃないのよ
これ知ってる?既存のギャグなんです。
今回は勝手にキャラクターが動いてくれました。始めと終わりの部分は違うことを考えていたのに、いつのまにかタローとジローが喋りだしてたって感じです。こんなことってあるのね。そして彼らは謝らない〜

つる
2008/05/24 19:28
レースはまだかと思って読み進めたので、遭難の危険の展開は予想外だったな。
滑りなれてるタロジローなら、視界悪くても通常コースなら楽に降りて来れるような気がします。
ステッカーが仲直りのしるしってのは、いい絵になりますね!

銀河系一朗
2008/06/05 23:32
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
バレバレの展開かとオモタ。わたしの中では遭難メインだったので勝負はとってつけた感が拭えなかったの。でも、コメントをいただいてわかったことがひとつ。ストーリーは何かと重複させて進行させるのがベストなのね。
>ステッカー
いつもそんなようなことで家族に騙されてます。こちらのアンテナの感度が悪かったらどうするつもりなんでしょうね。たまに良くとりすぎちゃったり損します。
つる
2008/06/06 21:08

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