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zoom RSS 「スノーボーイ」12

<<   作成日時 : 2008/05/04 13:35   >>

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photo by Niseko Village



「スノーボーイ」12

 3人でリーシュコードをつけてる時、隣に腰を落としたタローが言った。

「なして『ばなな』言うん?」

 よく聞かれる。

「小学校のね、お楽しみ会の罰ゲームで男子が物真似やれって言ったんだよ」
「して、したんかい?↓」「どんなん? してして」
「こんなの」

 わたしはそのまま後ろに倒れると、カタカナの「ノ」の字になった。

「だははっ!」「ひゃはは!」

 なんか、ウケた。

「あんちゃんも、なあ。フライングバナーナー、呼ばさって」「言うな」
「バナーナー?」
「うんだ。外人に。どこだっけ」「おまえだら、覚えれ。フィンランド」
「へ〜きっと褒めたんだね。だってフライングトメートーて言ったら」
「トメートーだってえ」「ははっ」
「だって外国の人ならそう言うでしょ」
「知ってら」「ショーン・ホワイトだべ」

 フライング・トマト(The Flying Tomato)の意味は、空飛ぶトマト。モップのような赤い髪のショーン・ホワイトの愛称だ。ピクシー(Pixy妖精)と呼ばれたストイコビッチにしたって人気のあるスポーツ選手ほどニックネームがつくものだ。

「いいなあ。わたしなんてただの『ばなな』だよ。この先もずっと言われんのかなあ」
「あ、ずっと言うなら、おれらのクラスにもいんべ。1年の時、先生のことば『おかあさん』言うちゃった女子、そっからずっと『おかあさん』だわ↓ したから、俺、あいつのホントの名前ば忘れたさ」

 タローが言って3人で笑った。そう言えば、わたしを「ばなな」と命名した男子はタローに似てるかもしれない。

 

「したら行くべ」「行くべ」
「うん」

 気負いもなく滑り出す2人。圧雪コースをほとんど棒立ちで下りて行く彼らに脱力する。心のどこかでフライングバナナを期待していた。
 やがて彼らがわたしを取り巻くように弧を描き始めた。
 交差が繰り返される度に、改めて2人は兄弟なんだと思わされた。何故ならリズムの取り方が同じだからだ。
 わたしもピアノを弾くからよくわかる。お兄ちゃんと連弾する時はメトロノームなんていらなかった。

 そんなふうにゲレンデを一つ下りると、彼らはゴンドラ駅を越えた先の赤いロープをくぐった。

「あ! だめ!」

 水野の沢だ。そう思った。

「したけど、滑りたいって」「言った言った」

 タローは慣れた様子で急斜面に張り出した雪庇(せっぴ)を落としている。

「い、言ったよ。言いました。けど、立ち入り禁止区域だなんて知らなかったんだよ。だからやめて。危ない」
「なんもさ。朝、慎二兄ちゃん達が来てっから」「聞いたしょ。ダイナマイトの音」
「誰よ? 慎二兄ちゃんて」
「パトロール隊。少年団のOBだわ」「したから、大丈夫」

 本当にダイジョブなんだろうか。オイオイわたし。行く気になってる。

 だめだめ。ダイジョブとか以前にモラルの問題だろう。

 ああ、どうしよう。

「おっかねがっだら、来なくていいべ」

 タローの挑発。

「こ、こわくなんてないよ」

 嘘だ。モラルを破るのもクラックを越えるのも怖い。

「あっ! キタキツネ!」タロー。
「えっ。どこどこ?」 
「の足跡〜」彼がわたしの足元を指した。

 確かにそれらしきものが点在している。

「あ! こらっ!」

 わたしは叫んだ。足跡に目を奪われた隙に、2人が沢に飛び出したからだ。

「やっほーいっ!」「うっしゃーっ!」

 彼らは派手なスプレーの中にいた。

「もーっ!」

 何を考えてるのかしら。

 てゆーか、

「おまえもな」

 自分に突っ込みを入れてた。
 だってロープをくぐってる。 

  
 目の前はふっかふかのノートラックの斜面。 

 この誘惑に勝てるボーダーなんて、



 いないしょ!



 


<つづく> 


リーシュコード→流れ止め。
ドラガン・ストイコビッチ→旧ユーゴスラビア出身のサッカー選手。クリック。
ノートラック→誰も滑った跡のない雪状態。
雪庇(せっぴ)→屋根の庇(ひさし)のように雪が張り出した状態。稜線上などの比較的平らな位置から、急斜面へと切り替わる部分に風によって風下側にできる。足元の積雪の下に地面がある安定した状態から、雪だけが張り出して下が何もない不安定な空間になっている。上から見ても分からないことがほとんどで、踏み抜くと非常に危険。参考URL。
滑落や雪崩を誘発することもあり、雪山での雪崩遭難事故の代表的な原因の一つ。

クラック↓こんなの。
画像




スノボー用語集参考URLクリック。
北海道弁参考URLクリック。

 「完全立入禁止区域」良い子は真似しないでね。
 高校1年くらいまでですかね。わたしもマジメちゃんでした。「いけない」とされることができませんでした。そんなチキン野郎のわたしも、遅まきながら高2デビューです。初めて授業を抜け出した時の気分は、まるで「ローマの休日」のアン王女でした。(勝手に言ってろ)

今日のBGM→クリック。ついてゆくわ

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
正直言って、あの誘惑にはねぇ。負けますね。ええ負けてますよ。でもロープはくぐっちゃイカン!と言っておこう一応。分かってる奴なら問題のない場所でも、真似して入ってきちゃう人がいると危険ですからねぇ。今回もストレスのない長さで、文章も整ってるので読みやすいなぁ。今後どうなるんだろ。わくわくしときます^^
レイバック
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2008/05/05 00:28
そうなんですよ。1人がそういうことすると「横断歩道みんなで渡れば怖くない」になっちゃうんです。
で、考えてみました。

「あ! だめ!」
水野の沢だ。そう思った。
「したけど、滑りたいって言ったべ」「言った言った」
「言ったよ。言いました。けど、立ち入り禁止区域だなんて知らなかったんだよ。危ないからやめて。わかった?」
「……」「……わかったべ」
それからわたしは、口をとんがらせたタローと、未練たらしく振返り振返りするジローを連れて、じょっぴんからみそしるへと続くコースを滑り降りた。
夕食はジンギスカンだった。

つ、つまんねーっ!
そんなわけで「完全立入禁止区域」を滑り降りることをお許しください。
え、読みやすかった?嬉しいな。本当はこの倍の長さで書きたい。でもこれでいいのかもね。無駄に長いとダレるもの。
今後?滑って下りてジンギスカン食べるだけだ〜
つる
2008/05/05 19:14
ニックネームか。僕はホントいろんなあだ名つけられたなぁ。本名モロバレのやつを抜かすと「茶髪」「宇宙服」「ヴァンパイア」「まっち棒」「極道」「アメリカン」「寝技師」etc. ……ろくでもないものが多いけど、良い思い出ですな。

この話も長丁場になってきましたね。がんばってください。…なんて僕に言われなくても気合で書くだろうけど^^
火群
2008/05/12 01:31
火群さん、いつもありがとう。
うわ、両思いだわ。コメを知らせる「リンロン」が鳴った時、お出かけしてたんですよ。どこだと思う?白薔薇都市ニルダです。再訪して思った。印象が少し違う。二度読みの極意を発見!
>ニックネーム
「寝技師」は柔道からね。「茶髪」はサーファーだったの?「極道」と「ヴァンパイア」……ごめんなさい。ε=ε=ε=ε=(|||´Д`)ノ
わたしね、本名から二文字拾って「サル」呼ばわりされてました。だから小学生のクソガキは!
>長丁場
ほんと。皆さん、飽きてしまわれるだろうなあ。
>気合
こうしてコメくださる皆さんからいただいてます。
つる
2008/05/12 02:12
今年ありましたね。禁止区域に入って遭難。
禁止区域で遭難しても自己責任だから遭難自体はいいんだけど、救助隊が出動して、ヘリコプターが飛んだ暁には、後からウン百万の請求が来るそうではないですか。そっちがこわいw
「サル」→ 早乙女瑠璃? もう少しリアル狙いだと沢田瑠璃子あたりかな。佐藤は小説に書いたからないでしょ。大穴は佐川鶴 えー、ツルが本名かよ(笑)←この件、放置して下さい
銀河系一朗
2008/05/27 21:22
>遭難
そうなん(シャレ)です。このあとそんなシーンがでてきます。気軽に山も登れません。でも、始めから誰もそんなつもりはないですからね。大変です。
>早乙女瑠璃と沢田瑠璃子と佐川鶴
源氏名にいただこうかな。佐川鶴が一番ステキ。
「佐藤」はない、だなんてそういうものなの?みなさん、そうなのかなあ。じゃ裏の裏を書いて登場人物につかってみるかな。
by放置プレイは嫌い。
つる
2008/05/28 00:18

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