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zoom RSS 「スノーボーイ」8

<<   作成日時 : 2008/04/22 19:15   >>

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photo by Niseko Villageグルーミングされたゲレンデ



「スノーボーイ」8

 パーン! パーーン! パーン! パーーン!
 2日目の朝は、花火が上がるような音で目覚めた。音が山にこだました。
 カーテンから覗く二重窓の向こうは、まだほんのりの紫色。続けて、コンクリートを何かが引きずる音がした。
 なかなか止まないその音に、一旦は布団をかぶったものの眠れない。窓から外を覗いたら、ガレージ前の庇(ひさし)にライムグリーンが見え隠れした。タロー達だ!
 パジャマの上にウェアをはおって表に出る。

「さぶうっ!」

 たちまち後悔だ。とんでもない寒さなのだ。息をした鼻の粘膜が痛い。口呼吸になった。

「おはよう!」わたしが二人に言った。

「おはようさん!」元気良くジロー。

「おはようさん」タローが国語の教科書を読むように言った。

「ねえ、何してんの?」

「見ればわかるべさ」

 ジローが作業の手を休めて言った。雪かきだった。タローはこっちも見ずに、ガレージの前をかいている。それに向かってわたしが言った。

「さっきのさ。パーンて音、あれ何?」

「したからダイナマイトだべさ」タローの代わりにジローが答える。

「ダイナマイト?」

「慎二兄ちゃん達だべさ、なあ」ジローが相槌を求めた。それにタローが、「水野の沢だら(や)非圧雪コースで仕掛かさったんだべ」

「何の為に?」

「雪ば降ったしょ。したっけ、なあ」ジローが又タローの顔を見る。

「ほんとの雪崩(なだれ)になる前にわざと雪崩にすンべさ」面倒くさそうにタローが付け加えた。

「へえ〜。ハ、ハップション!」

 大量に鼻水が出て、見られたくないわたしは、慌てて中に入った。

 いけない。忘れた。

 今日、彼らと滑れるかどうかを聞くつもりだった。タローの滑りを見たかった。この目で確かめなければ気が済まなくなっていた。いいや、朝食の時に聞いてみよう。なのに、

 タローもジローは、朝食の時間にいなかった。おばあさんに聞いてみると、2人共スポーツ少年団の練習に出かけたと言われガッカリする。
 せっかくの冬休みも、子供達は子供達で忙しい。





 曇天(どんてん)だった。下調べの口コミサイトにあった。ニセコはスカッと晴れない。
 それでも、朝一でグルーミングされたゲレンデは美しかったし、平日のせいで斜面はガラ空(す)きだった。本州では有り得ない光景だ。
 午前中のレッスンを受けると言う紗季と景子と分かれて、下のゲレンデを2本滑った。それから、ふと思いついて、一番上までリフトを乗り継いだ。待ち合わせのレストハウスは昼までに戻ればいい。

 わたし達が滞在する東山は、林間コースが楽しめる比較的こじんまりしたスキー場だ。ニセコアンヌプリ山には3つのスキー場がある。山に向かって左からニセコアンヌプリ国際スキー場、東山スキー場、グランヒラフだ。この3つのスキー場は上で繋がっている。それも天気が良くて終点までリフトが動いていればの話。

 上は風が強かった。そのせいで何も考えなかった。前を行く人についたまま少し歩き、斜面をひとつ下りて気がついた。何かへん。ゲレンデのサイドで、写メの撮りっこをするカップルに聞いてみる。

「あのぅ。だべさコースに出たいんですけど」

「は? ここアンヌプリスキー場ですけど」

「ええっ?!」マツガエタ! 完全にマツガエタ。ここは東山じゃない。お隣だ。

 ああ、どうしよう。全山共通リフト券ならともかく、東山の5時間券しか持ってない。何故なら午後は早めにあがって、3人でホテルの温泉に入るつもりだった。朝起きた紗季と景子から、筋肉痛だと泣きが入ったからだ。
 このまま下っても、東山のリフト券ではアンヌプリのリフトは乗れない。今更、板を担(かつ)いで戻るのはシンドイ。だってゲレンデひとつ分を滑っちゃったのだ。困った。
 困った状況に置かれて、頭が猛烈に動きだした。そんなもん。

「どうもありが、きゃ!」

 わたしのすぐ横をかすめるボーダーにバランスを崩しかけた。スプレーの中を行く白いウェア。あぶないなあ。

「きゃっ!」

 もう一人かすめるボーダーに再びよろけた。白いウェアを追う猛烈な勢いのライムグリーン。ピンときた。
 反射的に板を谷に向けると、すぐに直下(ちょっか)った。胸がドキドキする。あのライムグリーンは、タロー達のそれと同じだった。

 前を行く白とライムグリーンが他のボーダーを抜いた。そのボーダーと比べてわかる。抜いた彼らの肩幅は大人のものじゃない。白はともかく、後ろのライムグリーンはタローとジローのどっちかだ。いや、タローだ。

 彼らはボードクロスのように競(せ)った。随所にできたコブで、何度も小さなジャンプをした。乱暴なターン。左右に流れるテールは、ほとんどドリフト。
 転ばないように2人を追うだけのわたしは、彼らからどんどん離された。

 おかしいな。
 朝のおばあさんの話では、タローとジローは、地元少年団の練習に行ったはずだ。だったら、何で東山ではなく隣のアンヌプリにいるんだ? そんなのってあるんだろうか? じゃ、百歩譲って少年団だとしたら、あれは練習なんだろうか? どう見たってバトルだ。しかも、後ろがタローだったら、ジローはどこにいるんだ? 
 
 とうとう途中で彼らを見失った。
 北海道のゲレンデは広大だった。広すぎて、どこを滑ればいいのかわからないくらいだ。

 こうなったら色、色だけで彼らを探す。





 いた!





<つづく>
 


グルーミング→ゲレンデを圧雪車などで平らな状態に整地すること。 
写メ→写メール。
スノボー用語集クリック。
ゲレンデ図クリック。見てるだけでも楽しいな。
北海道弁参考URLクリック。



 こんなに春めいてきたのに一体いつまでこんな話書いてるんだって思います。
 たぶん読者が10人もいないだろうこんなショボイ小説ブログだけど、それでも見てくださる方々にはいつも感謝です。
 ちんたらちんたらと思っていたより長くなりそうです。10話で終わる予定がその倍くらいでしょうか。よろしくおつき合いください。

 雪崩のことはココ(←クリック)でどうぞご覧ください。ニセコ東山で実際にパトロールをなさっている方々のブログです。ネタ元はほとんどそこ、あとはニセコで本当に遭難しかけた御仁の体験記を引用してます。パクリて言うな〜。

↓ライムグリーンてこんな色です。photo by Niseko Village
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<今日のBGM>
前半はこれかなぁ→クリック。ハトと少年
後半はこれだな→クリック。DESTINY


 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
おお!びっくりした。ダイナマイトですか?雪山ってそんなことするんだ。「だべさコース」ってホントにあるんですか?あまり知らないので、何でも実話だと思っています。長くてなっても大丈夫ですよ。スキーの様子も物珍しくて楽しんでいます。今日はつるセンセと編集さんの会話がなかったなぁ。アレも楽しみです。
ia.
URL
2008/04/22 23:27
見てますよ
( (ミ´ω`ミ))ジイィィーーー
いつ起きるか分からないなら、先に自分たちで雪崩にしちゃえという発想って乱暴だけど、実は凄く合理的ですよね。不測の事態を予測可能な範囲で処理するんだから。
タローと滑ってるのは誰?
ここに来て新キャラ登場?

URL
2008/04/23 00:01
ia.さん、いつもありがとう。
ダイナマイトのこと、上に追加しておきました。ほんとにあるんです。だべさコースもゲレンデ図をクリックして山にマウスを乗せるとでますよ〜。だけど、さすがのニセコも3月には−10℃以下にはならないらしく冬休みの設定にすれば良かったと後悔。そのうち無理がでそう。今のところ作り話はないけどウィークエンドの行事とかで嘘をつきそうです。
え?つるセンセと羽鳥君?そう言ってくださって嬉しいな。
つる
2008/04/23 00:35
鯨さん、いつもありがとう。
もうね。なんとか見てもらおうと必死ですよ。毎回来てくださる常連さんには、少しでもつまらないと申し訳ないくらいです。たぶんあれなんです。見始めた昼メロ、最後まで惰性で見ちゃうっていうアレ。途中でつまらなくても、盛り返せるように頑張ります。
>新キャラ
次で消えます。裏設定では男気のある子で、この子にも一応ストーリーがあるんだけど、そんなところまで手がまわんない。てゆうか寄り道が多いと終わるのが夏になっちゃう!
つる
2008/04/23 01:01
こんばんは^^うひゃー!滑りたくなるー。ニセコってヒラフしか滑ったことないんですよ俺。あーロングステイして全山滑り尽くしたいなー。
レイバック
2008/05/01 01:28
レイバックさん、ここにもありがとう。ヒラフに行かれたんですね。確かヒラフは2つのエリアに分かれているんですよね。広いヒラフで遊んでたら他に行かなくても十分かもね。東山は林間コースが多いみたいで、案外3つのスキー場の中では穴場かもしれない。
>ロングステイ
いいねいいね。五色温泉なんてのもあるらしいし、一週間いても足りないかもよ。それと山頂に登ってみたいな。天気が良ければ小樽や日本海まで見えるそうです。
つる
2008/05/01 02:31
遅れながらも、一応、読んでます(n‘∀‘)η
いつも文章に、読み手を楽しませようとする気配りを感じます。
スキーなんか、ほんと何年もしてないな。滑り方忘れた。まぁ、生きることに滑りっぱなしだから、ある意味、滑り慣れてるけどね(笑)
でも、いいのさ、人間、少し滑ってたほうが。
そのほうが、ひどく滑らないでいられるかも。
雪崩処理みたいに( ̄ー ̄)
火群
2008/05/06 01:37
火群さん、心強い応援ありがとう。
もうね。滑ってるのはわたしのほうよ。このブログもたぶん閲覧人口推定3人なのね。つまり小説が滑ってる〜。てことは管理人が滑ってる、そうとしか思えないわけです。
た、立て直せるのか、わたし?
でもいいや。一日のアクセスが2万超えた管理人が言ってたっけ。「最近、守りに入ってきた」って。そんなストレス、ナッシングゥ〜。
>雪崩処理みたいに( ̄ー ̄)
コメの〆方、うまいわあ。
つる
2008/05/06 22:54
そういや、ニセコは今やオージーたちの御用達スキー場だそうですね。
奴らがわざわざ飛行機に乗って来るんだから、やっぱりニセコのパウダーは最高なんだろうな。
なんかこの季節なのに行ってみたくなりましたよ!
銀河系一朗
2008/05/19 22:28
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
そうなんですよ。特に「アンヌプリ国際」に多いらしいです。カナダや北欧なんかから来て指導員をしてる方もいらっしゃるそうです。よほど雪質がいいんでしょうね。
>行ってみたくなりましたよ!
参考にしたサイトをクリックするたびに、わたしもそう思います。3泊4日でもホテル利用で5万円台とか。安くなったなあ。

それにしても季節はもう初夏。梅雨入り前に終わるかしらん。
あ〜海ものが書きたい。
つる
2008/05/20 00:40

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