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zoom RSS 「スノーボーイ」6

<<   作成日時 : 2008/04/18 18:11   >>

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photo by スキー場クチコミガイド
ニセコアンヌプリ山 標高1308m


「スノーボーイ」6

 壁付けの蛍光灯も消されてしまい、目の前は真っ暗だ。僅かに子供の背丈ほど開けられたシャッターの隙間から外の明るさが覗くだけだ。
 ようやく目が慣れてから、膝と手をついたロフトを見回した。ガレージとばかり思っていたそこは、納屋も兼ねているようだ。雑多なもので溢れている。
 はじめに手が触れたのは、たくさんの雑誌と付録のピンナップだった。目を凝らして見たら、スノーボードのものばかりだった。

「あれ?」

 ショーン・ホワイトだ。全部彼の表紙だったり特集だったりした。タローは彼が好きなんだ。

 違う。見せようとした。

 さっき、わたしはポスターの前でショーンの名前を口にした。だからタローが、わたしも彼のことが好きだと思っても不思議じゃない。きっとそう。

 なのにわたしはなんて言った?

「やだよ。また熊の剥製とかあるんじゃないの?」「騙そうたってそうはいかないわよ」

 タローは悲しい顔をした。さぞがっかりしたんだろう。外された梯子がそう言ってる。

 わたしは自分の言葉に泣きたくなった。


 コの字型のロフトを這った。壁伝いに右サイドの縁まで進み、そこからぶら下がって、止めてあったワゴンの屋根に足が届いた。ワゴンに並んだ軽トラの荷台に飛び移って、地面に降りることができた。
 シャッターをくぐった先に、ペンション前にいるタローとジローが見えた。
 彼らは階段の途中で、薪の束に腰掛けている。わたしが出て来るのを待っていたようだ。
 
 わたしを見る彼らから、わたしは目を離さない。彼らもそう。お互いの胸の内を探るように近づいていくけれど、お互いに黙ったままだった。
 人を置いてきぼりにしておいて「ごめんなさい」が言えない彼らと、人の気持ちも知らずに疑いの言葉をかけた「ごめんなさい」が言えないわたしと、どちらも意地っぱりだ。

 彼らの前を素通りしたわたしは、階段下に立てかけた自分の板を音を立てて倒した。
 2人の視線を十分に意識して、両脚を板に乗せる。右足のブーツだけビンディングにかけて、弾むようにそこを蹴って軽いジャンプをする。そうすると、手前のエッジを軸に、雪面から板が跳ね上がって回転した。
 ダン! 一回転したデッキのフラット部分を、雪面に踏みつけるようにして着地した。

「あっ!」「すげっ!」

 キックフリップ。ワンシーズンかけて会得したオサレ小技だ。本来ならスケートボードの技だけど、元カレから教わった。
 デッキから下りたわたしが、反りあがった作りのテールの片方を踏んで、板を立ち上がらせる。タローとジローを見るわたしの顔は「できるもんならやってみな」だったろう。

 タイミング良く出て来た紗季と景子に、わたしは「行こう」と促して、階段前の彼らを残し、ゆうゆうとゲレンデに向かった。

 どうよどうよ、なめるんじゃないわよ。そんな気持ちでいた。

 いったいわたしは彼らと何を張り合ってるんだろう。





 ゲレンデは最高のコンディション。積もりたてのパウダースノーを流すと、自分が巧(うま)くなったと錯覚した。そう、気のせい。雪のせい。

 でも何だろう、この気持ち。

 スカッとしたはずでいたつもりなのに、胸には、タローとジローが引っかかていた。

 こんなに楽しいのに、早くペンションに戻りたい気分だった。







 「「きゃぁあああっ!」」

 帰って来たペンションの乾燥室で、紗季と景子が同時に悲鳴をあげた。

 いけない! 熊のこと、言うの忘れてた。

 謝るどころか、飛びのいて抱き合う彼女達を見て、さっきのタローとジローのようにわたしは腹を抱えて笑ってしまった。





 ごめん。






<つづく> 



スノボーのキックフリップ動画クリック。02:32レイバックさんのリンク先である「sound of mountain」のtindy148さんから教えていただきました。どうもありがとうございます。

ビンディング→ブーツとボードを固定する締具のこと。
デッキ→スノーボードの表面のこと。
テール →ボードの後端部分を言う。以上参考URL
フラット→ビンディングのない平らな部分。
ショーン・ホワイトクリック。

北海道弁参考URLクリック。


 ばななもね、ムキになってます。
 ゲレンデのスノボシーン? うん、あんだけです。そこ膨らますと終わらない。ばななが紗季と景子と3人で滑る部分は極力カットです。カットしなくても長い〜。

今日のBGM→クリック。素直になりたい

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(8件)

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ばなな、やるじゃん!
スノボーのキックフリップ。板の弾力とタイミングで飛ぶのかな?
サラッと決めたらカッコよさそう。オサレだわ〜。
タローとジローも少しは見直したんじゃないですか。

URL
2008/04/18 20:25
イジワルされたのは、そういうわけだったのか。「大人をなめんじゃないわよ」というばななちゃん、カッコイイ!でも、大人気ないぞ(^^
ia.
URL
2008/04/18 20:34
鯨さん、いつもありがとう。
今回はキックフリップの動画が一番のお薦めですよ。なにせ書き手に表現力が欠けてますからね。写真や動画、或いは読み手さんの想像力にすがるしかないんです。
>タローとジロー
タローが黙ってるわけねえべさ。
つる
2008/04/18 22:36
ia.さん、いつもありがとう。
イジワルはそういうわけだったんです。子供はコロッと気分が変わりますからね。毎回小さなwhyを残しつつ、引っ張りたいんだけど、難しいわあ。
ばななも大人げ、ないんだけどね。へんに大人対応しないで子供心を掴む設定です。それで仲間にしてもらえる予定。のはず。たぶん。
つる
2008/04/18 22:42
はじめまして(笑)
キックフリップ。いいところで使いましたねぇ。コレ僕も少し練習したんだけど出来ね〜〜^^;小技のクセにでら難しいすよ。あと、もやもやとするばななの心理描写がいい感じでした。
Tindy
URL
2008/04/20 00:15
Tindyさん、はじめまして(ペコッ)。来てくださってありがとう。そして楽しい動画を紹介してくださって本当にありがとう。使わせていただきました。
練習しても難しい技だったのね。ばなながそう簡単にできるわけなかったかな。サッカーで、リフティングだけが異常に巧い人っているじゃない?あんな感じで「あり」でお願いします。
>もやもやとするばななの心理描写
すごく悩んだ。ほんとは事実を淡々と書く物語が好きなんです。読み手の想像力が膨らむでしょう。でもせっかく一人称にしたから、書きました。失恋のことも、当初はもっとさらっといこうと思っていたけど、どうやら読み手によってはウザイ感じで入りそう。そこんところと子供達との関係がいい感じでバランス取れればいいなあ。
つる
2008/04/20 11:19
ばなながタローの意図に気付くところ。
説明が多いともっさりしてしまうし。
こういうところが難しいんですよね。
銀河系一朗
2008/05/15 22:48
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
もっさりしてた?もっと簡潔でも良かったかな。こういう感想は嬉しいです。参考にして続きを頑張ります。
つる
2008/05/16 02:04

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