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zoom RSS 「スノーボーイ」4

<<   作成日時 : 2008/04/13 19:25   >>

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photo by Niente da fare


「スノーボーイ」4

「う、うん。お、おばさんね、好きだよ、ボード。何で?」

 おばさんの練習だと思った。どうせ夏には、本当の「伯母(おば)」さんになる。お兄ちゃんのできちゃった婚で、そうなる予定だった。
 小さい子が、あれ? というように大きい子を見た。その仕草で、さっきのセリフは大きい子が小さい子に言わせたんだと知れた。
 大きい子は、わたしの無反応が想定の範囲でもあるように、しれっとした顔でポスターを差して言った。

「なして(何で)て別に。それ、見てたからさ↓」
「ふうーーーーーーーーーーーーーーん」とわたしは確信する。

 この子たちはワザとと言った。「おばさん」、彼らがそう呼んだ相手が、確実にダメージを受けると知っている。何の為に?
 
 試(ため)されてるのかしら。

「あ、おばさんね。これ見に行ったんだ」
「ホントかい?!↓」小さい子が、屈託のない高い声で言った。
「ホントホント。見たんだから、本物のショーン・ホワイト」
「見たんかい?↓ ほんもの、どんなん?↓」続けて小さい子。
「すごいよ。エアなんてハンパなく高いよ」
「どんくらいさ?↓」
「そうだな。羊蹄山くらい?」

 な、わけがない。
 人のことを「おばさん」と言ったお返しに、真面目な顔で2人をからかった。

「蝦夷(えぞ)富士よか高いわけねえべや」案の定、小さい子が突っ込んだ。

 羊蹄山は、標高1898メートル。ここに来るまでのバスから見た。ケーキアイシングされた頂から広がるなだらかな稜線は、まるで富士山のようで、地元では「蝦夷(えぞ)富士」と呼ばれているそうだ。ガイドブックに書いてある。

「ふふふ」ムキになる小さい子の顔に、頬が緩んだ。
 
「何だべ。はんかくさっ」

 それまで黙っていた大きい子が、吐き捨てるように言った。その一言で、気を許した雰囲気の小さい子が、大きい子に取り込まれる。わたし達は、2対1で睨みあう形になった。

 彼らの真意を測りかねて、2人を交互に見比べる。細面の顔に、はっきりとゴーグルの跡が残っていた。クリンとした目と、それに不釣合いな凛々(りり)しい眉、大人しい鼻とピンクの唇、そして赤い頬。何から何までそっくりだった。
 違うとすれば、大きい子の上唇の先が少しとんがっていることくらいだろうか。それが、彼を不服そうにみせる。
 似てる。この子はわたしに似ている。わたしは少し三白眼(さんぱくがん)だ。芸能人で言うと鈴木保奈美フルッ香椎由宇(かしいゆう)見たいな感じ。よく言われる。冷たそうとか、何を考えてるのかわからないとか。勝手に決めないで。

 その不服そうな顔がわたしを、ちょっと来て、と顎で促(うなが)した。兄弟が縦になって廊下を進み、玄関脇の乾燥室へ入って行った。何の気なしにわたしも続く。パパッと、中の電気がついた。

「きゃあっ!」

 驚いて尻餅をついた。入ってすぐの右で、熊が立ったからだ。いや、正確には、大人ほどの背丈をした熊の剥製が置いてあった。
 
 尻餅の衝撃で、そばに立てかけてあった板がバラバラと倒れた。してやったりと、それを見て、兄弟が笑った。

「ビ、ビックリしたなあ、もぉ。何すんのよ!」
「俺ら何もしてねえしょ。そっちが勝手について来たさ↓」大きい子が言った。
「勝手にて……。そっちが来いって」
「言ってねえしょ」確かに。
「だって」
「したけどなに?↓ 言うちゃるけど、俺ら『かわいそう』なんかじゃねえべや!」

 あ〜、やっとわかった。彼はわたし達の話を聞いていた。それで「おばさん」と言ったり、こんな意地悪をした。でも、「かわいそう」と言ったのはわたしじゃない。濡れ衣もいいところだ。

「そんな意味で言ったんじゃないよ」
「じゃどったら意味さ↓」
「そ、それは――」

 大きい子のタメ口に言い返せない。
 この年頃でお母さんがいないのは寂しいこともあるだろうって、そういうことだ。だけど、男の子の強気に、説明できないでいるわたしは、いくじなしだった。

「母ちゃんだら入院しちゃるだけなんだわ↓」
「え?」
「赤ん坊が早く産まれるちゅうて、病院にいんだわ↓」
「あ〜」

 なんだ。女房が逃げた、という表現は、オーナー特有の照れだったのか。

「知らなかったんだよ。ごめん」

 わたしがそう言って立ち上がると、大きい子は返事もしないで、倒れた板を起こしはじめた。「あっ」そのソール(板底)を見て驚いた。そのデザインは、わたしの頭上を越えたあのバートンCUSTUM X。それは、元カレが2年目前に欲しがった、軽いけど硬い板だった。

「ねえ、それ誰の?」わたしが板を指す。
「あんちゃんのだわ↓」小さい子。
「だけど、それ大人用だよ」とわたし。
「したから〜、あんちゃんが賭けスノボーでバクって――」
「ジロー!」

 大きい子が制した。


 か、賭けスノボー? な、何なの、この子達? 



<つづく> 



アイシング→粉砂糖に水や卵白を混ぜて、菓子の表面を飾ったり覆うもの。乾燥を防止したり甘味を補う。ケーキアイシングのイメージ。
三白眼クリック。
香椎由宇クリック。
はんかくさ→アホらしい。
ばくる→交換する。
北海道弁参考URLクリック。


 前記事の続きです。よく遊んだ子供達の中に森君という少年がいました。近所のおばさん達の間で噂になるほど、かっこいい子だったんです。今ならそういうのがわかりますが、当時のわたしからすると、子供なんて皆同じ顔に見えたものです。その森君は、大人しい子でしたが、一緒に遊んでるうち、何度もその抜群の運動神経にビックリさせられました。あと、気遣いができる子でした。わーっと皆で走って、わたしだけが信号を渡りそこねると、向こう側で待っているような子でした。嬉しかったなあ。そんな森君達が使う札幌弁は、語尾が上がる言い方で、なんとも可愛いらしいんです。それを思い出しながら書いてます。おばちゃんの昔話でした。

今日のBGM→クリック。まほろDEまんぼー

今日の動画→クリック。(Shaun White 11 years old/01:37)


 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
小憎たらしいガキ――もとい、お子様は大好きですよ。自分が素直な子供じゃなかったからね。言われたことに「はい、はい」答えてるだけの子供を見ると、うっそ〜て思うんですね。

なまら期待しながら次回を待ちます。
p|  ̄∀ ̄ |q ファイトッ!!

URL
2008/04/13 20:54
鯨さん、いつもありがとう。
サッカー少年もね(シツコイ)フィールドでファンタジスタな子はやっぱり教室なんかでもファンタジスタなんですよ。クスクス。枠に収まんないのね。ハラハラもするけど、でも凄い楽しみもしょってくるべさ。まあ、そんな男の子たちなんだわ。かわいげのあるところをうまく書かさるべか。しばらくホッキャードー弁とおつき合いください。
>なまら期待しながら次回を待ちます。
ありゃー、けっこう言えてるしょや。
つる
2008/04/13 23:02
賭けスノボーいいなぁ。斬新なアイデアだわぁ。これだけで話がグッと膨らんでいきそうっすね。アメリカで賭けバスケとかやってるような、そんなイメージが沸きました。次回が楽しみ^^
レイバック
URL
2008/04/13 23:25
レイバックさん、いつもありがとう。
え〜と、賭けスノボーはね。仰るとおりバスケからです。漫画「リアル」のしょっぱなの賭けバスケがあまりにも強烈な印象で残っていたので、拝借してしまったわけです。だから全然斬新なアイディアなんかじゃないんです。でも健全なスポーツに不健全な賭博の要素はミスマッチで面白いかもね。でもそこあんまり膨らまないと思う。だって傷心の女子短大生と少年の心の触れあい物語なんですもの。ウソクサ。あ、でも少し書いとくかな。こうやって寄り道しながら10回で終わらなくなる〜
つる
2008/04/14 00:10
スノボのこととか、方言とか、ものすごくしっかり資料集めをされて書かれているなぁ、と思います。
子供って「本気の大人」を見分けるんですよね。その点、タローとジローに信用を勝ち得たのかな♪
賭けスノボ、危なそうだけど、面白くなりそうですね。
ia.
URL
2008/04/14 00:49
ia.さん、いつもありがとう。
スノボはカタカナが多くてむずいね。もうこの年になると横文字が覚えられないのよ。映画のタイトルも原題のままだと、なかなか出てきやしない。
方言はね。あんまり調べてない。なんちゃって方言です。父が北海道出身てことと、何回か行ったことあるという感じで書いてます。
子供ね。知識がないぶん、感が鋭いですからね。信用ね。もう少し書き込まないと、ご都合主義になっちゃうなあ。先、長いわ。
つる
2008/04/15 00:11
お、話が動いてきた。
しかし、つるさんは知的探究心旺盛っすね。
ちゃんと書こうとする姿勢が気分いい。

うちの父方の田舎が群馬の山奥、草津のほうなんですけど、幼いころその実家に行くと、タヌキやキジとか剥製が多くて怖かったの思い出しました。金持ちとかじゃなくて、じーさんが趣味で猟してたから。
(( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル(笑)
火群
2008/04/26 03:13
火群さん、いつもありがとう。
姿勢?ほんと?もっと書きたいけど、そうなったらくどくて誰も読まない気がする〜
>剥製
実家にもありました。鳥系。当時流行ったのかね?
熊はね。昔、飛行場に立ち上がったツキノワグマがあったんで思いつきました。あれって怖いだけ。なんか意味あるのかって思いますよ。ほこりもつくしね。
あと実家には木彫りの熊がありました。子供が乗れるくらいの。当時、北海道のお土産といったら、それとかマリモとかでした。(まだマリモが持ち出せたんですね)今、マリモッコリというお土産があるそうです。いらない。
つる
2008/04/27 01:01
出て行った謎はあっさり解決でしたね。
「だべ」「〜しょ」の北海道方言が、妙に心地よく響きますよ!
賭けスノボて、具体的にどうするんだろ?
銀河系一朗
2008/05/12 23:19
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
北海道弁はなぜか心地良いです。以前、倉本聰の「優しい時間」ていう富良野を舞台にしたドラマがあったんです。退屈という人もいたけど、あれには泣いた。叙情的なストーリーなんですよ。気候風土と方言がマッチしてましたね。
>賭けスノボ
簡単に流そうとしたけど、少しだけ書きました。まあ、子供のすることですから。賭けというより勝負の好きな子という感じですかね。

つる
2008/05/13 03:33

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