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zoom RSS 「スノーボーイ」3

<<   作成日時 : 2008/04/10 22:46   >>

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photo by Niseko Village


「スノーボーイ」3

 乱暴に階段を降りる音がして、ホールに「ああ、どうもどうも」ガテン系のひげ男が入ってきた。年齢は、その髭のせいでわからない。まるで雪男。あ〜「スノーマン」て、雪だるまのことじゃなくて、そっちね。妙に納得したわたし達が、顔を見合わせる。

「すいませんね。お待たせしちゃって。ペンションスノーマンにようこそ。森と申します。え〜と」

「ペンション」に吹き出しそうになって下を向いた紗希に、軽い肘鉄をくれて、わたしが言った。

「工藤です。東京からナンジャラホイツアーで予約した――」
「あ〜はいはい。女性3名さんですね。聞いてます聞いてます。もういつでもお部屋の方にご案内できますよ」
「ありがとうございます」
「なんかバタバタしちゃってすいませんね〜。なんせ女房がいないもんで」
「奥さん、いらっしゃらないんですか?」聞きにくいことを景子。
「ははっ! 逃げちゃったんですよ〜」

 困った。ここは笑っていいものかどうか、わたしと紗希は思わず景子を見る。彼女はわたしたちよりずっと大人だった。なんせ中学でステディな彼が、高校ではひとまわりもふたまわりも年上の男性と交際していたというのだから驚く。大人と対等に会話する彼女は処世術に長(た)けている。彼女が曖昧な笑みを浮かべて相槌の代わりとしているので、わたし達も慌(あわ)ててそれに倣(なら)った。

 紗希と景子が宿泊名簿に記帳している間に、わたしは横の北欧調のローボードの前に行ってみる。
 その上にたくさんのトロフィやカップ、ケースに収められたメダルたちが並べられていた。目の前の壁面は賞状やパネルなんかで埋め尽くされている。ほとんどがアルペンの競技スキー関係だった。

「もしかしてお子さんですか?」

 スプレーをあげて滑降する1枚の大きなパネルを差して、わたしがオーナーを振返った。

 ああそれね、というふうに「上の、タローです」と彼がが答えた。

「すごーい。じゃここにあるのもみんな彼のなんだ」ぐるっとそのあたりのものを囲んでみせる。

「ええまあ。下の子のもありますけど」
「わあ、2人してスキーするんだ。将来が楽しみですね」大人のお愛想を言うわたしに、
「う〜ん。まあ、なかなか親の思惑(おもわく)通りにはいきませんよ」

 嬉しくなさそうにオーナーが答えた。意味がわかりかねているわたしにオーナーが続けた。

「お客さんはスキーですか? スノーボードですか?」
「ボードです。ホントはスキーもするんだけど、ボードのほうがトレンドだし」

 わたしはスキーのほうが得意だ。毎年家族で行っていたスキー場で、偶然クラスメイトの元カレに会った。その彼と付き合うようになってスノーボードを始めたのだ。

「トレンドね。はは。若い人はそうなんだろうな」

 口元だけで笑って、オーナーが奥へ引っこんだ。それと入れ違いで、野菜のダンボールを抱えた男の子が2人、ホールに入ってきた。お揃いのウェアはさっきのライムグリーン。やはり、このペンションの子供だった。
 大きいほうがあのパネルの子かな。

「こんにちは。偉いね、お手伝い?」

 さっきの名誉挽回とばかり、さっそく紗希が声をかける。なのに男の子達はチラ見で通り過ぎた。彼らからしたら、わたし達は珍しくもなんともない宿泊客の一部なんだろう。

「何よ、アレ。感じ悪〜い。お母さんがいなくてかわいそう、と思ったのに〜」紗希は少々お冠だ。

 しょうがないんだよ、紗希。子供は天使ばかりじゃない。なつく子はなつくけど、そうじゃない子は何してもだめだ。わたしもそういう子供だったからわかる。

 部屋に案内されて階段を上がりかけた。
 わたしは壁のポスターの一枚に足が止まった。それは、昨年のアルツ磐梯で行われていた「日本オープン2007」で、彼と観に行った大会のものだった。スーパーパイプを制したのは、あのショーン・ホワイト。
 後ろで子供の声がした。

「おばさん。スノーボード、好きなん?」

 振り返るとさっきの子供達だ。2人ともひびが切れたような赤い頬をしている。

「へ?」

 どこかにおばさんがいるのかとキョロキョロする。横にいたはずの紗希と景子もいない。ひと足早く上ったようだ。だったら、

「わ、わたしぃ?」

 お、おばさんて―― 
 
 初めての「おばさん」呼ばわりに、



 すっっっっっごいショック!



 わたしは19だった。





<つづく> 



日本オープン2007クリック。


 わたしが高3の夏の話です。札幌に住んでる伯母の家から予備校に通いました。駄菓子や生活雑貨を扱う伯母の店に、毎日のように小学生が何か買いに来るんです。その中の4,5人の子供達とよく遊びましたね。予備校終わって帰って来ると待ってるんです。美園っていう中心部から少し外れた所なんですが、当時はまだ空き地がいっぱいありました。中でも、おあつらえ向きの空き倉庫とかある場所が陣地でした。
 それが、わたしが小学生にはまるキッカケです。それを思い出しながら、クソガキの話を。ええ、大人好みの子供なんかじゃありません。

 今日のBGM→クリック。尻取りRock'n Roll

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
小学生からすると20代は“おじさん、おばさん”なのかもしれませんね。干支が一回り違うんですから。

マッチ――近藤真彦さん――は海で溺れてる子供に「お兄ちゃんが助けてやるからな」と言ったら、「ありがとう、おじちゃん」と返されたそうです。
子供って残酷( TДT)

URL
2008/04/10 23:47
鯨さん、いつもありがとう。
子供の頃って大人が何才なのか気にもしませんもんね。わたしは年寄りなんて年寄りのまま生まれた、ぐらいに思っちゃってました。若かった頃の話なんてされてもピンときませんし、もちろん自分が大人になるだなんて思ってもみませんでした。
マッチもね。おじさんになったんですね。
世の中のおじさんもおばさんも自覚が足りないと思います。ちゃんと自覚しようよって思います。自覚してるおじさんやおばさんはかっこいいもの。
つる
2008/04/11 00:38
うーむ展開が読めん(笑)僕も20代で近所の子に「おっちゃーん」って言われましたねぇ^^; 締め方がいいすね。次回がとても気になります。

>ここは笑っていいものかどうか相槌に困って、わたしと紗希は景子を見る。景子はわたしたち2人と違って大人だ。なんせ中学ですでにステディな彼がいて、高校ではひとまわりも年上のサラリーマンと付き合っていたという彼女。そんな彼女の対応は曖昧な笑みを浮かべ返事の代わりとしている。その様子にわたし達2人も倣(なら)った。

☆そんな〜、その〜、と表現が若干曖昧なまま続くのでイメージが沸きにくいかな。文章も少し引っかかるかも。僕ならこう書いてみる。

>ここは笑っていいものか?わたしと紗希は相槌に困り、景子に助けを求めた。景子はわたしたちと違って大人だ。(なんせ中学ですでにステディな彼がいて、高校ではひとまわりも年上のサラリーマンと付き合っていたのだから!)彼女の対応はさすがだった。余裕しゃくしゃく。曖昧な笑みを浮かべ、返事の代わりとしている。わたしと紗希は彼女に倣い慌てて微笑みを取り繕った。

(長文レスでごめんね^^;)
レイバック
URL
2008/04/11 22:30
レイバックさん、いつもありがとう。
>「おっちゃーん」
レイバックさんにもそんなことがあったのか……
お悔やみ申し上げます。慣れちゃうとそうでもないんだけどね。初めての時は消化するのに時間がかかりますよね。
>僕ならこう書いてみる。
どうもありがとう。音読しなかったから、引っかかりがわからなかった。でも毎回ほんと不思議なのは、根っこの文章がわたしなのに、手直ししてもらうと見事にレイバックさんの味付けになる。さっそく見直してみよう。
あとね、今悩みどころは、読者の立場だと説明のくどい作者に対して「そこまでバカじゃないよ」って思うんだけど、今度自分が書き手側になるとやっぱり説明が足りない気がしたり、その裏を読み込んでもらえてなかったりすると、もっと書きたくなっちゃうのよね。そのさじ加減が難しい。自分の文章が客観視できてないということが一番の問題なんだけど。気軽に始めたブログ、登りはじめた山の頂が案外と遠いことに気がついた今日このごろ。

つる
2008/04/12 00:30
男の子がストーリーの重要人物なんでしょうか。どう絡んでくるんだろう……。ぼくもまだ想像がつきません^^;
男の子といっても、いろんな性格の子がいますからね。ぼくも昔はどちらかといえば、あまり愛想のよくない子供だったと思います^^;ウチの甥っ子は小学校低学年のころから、物怖じせずに初対面の大人とも平気で話したりしちゃうんですけどね。
あ、ちなみにぼくは、甥っ子にはまだ「兄」扱いされています(笑)
shitsuma
URL
2008/04/12 00:47
shitsumaさん、いつもありがとう。
>どう絡んでくるんだろう……。
あのオ、そんな大した話じゃないんで……なんか恐縮しちゃう。ミステリーじゃないから、ふーんそんなことがあったんだ〜くらいな感じなんですよ。
愛想と言えばね。子供のことを「素直じゃないわね」って言う人いるでしょう。あれって大人の都合で見た「素直」だから、子供の「素直」は、我儘言うしフテくされるし泣くし、そういうのが本当の素直なんだと思います。たぶんタローのほうがshitsumaさんで、弟のジローがその甥っ子さんに近いと思われます。
>「兄」扱いされています(笑)
あら、じゃ見た目が実年齢よりずっと若いんだ。ふーん。甥っ子さんが真実を口にするのはいつだろう。心構えはOK?
つる
2008/04/12 02:20
山は高ければ高いほど登りがいがある。なんつって(笑)そうだなぁ、どこまで書くのかって難しいけど、自分の中にあるイメージ、情報を100%書いちゃうと、途端に面白くなくなるんですよね。100書けるけど80に抑えて書く。そこにある隙間が読み手の想像力を喚起するんじゃないかな、と個人的には考えてます。取材や資料に当たった時でも、敢えて全部は書かない。本当に歌唱力のある歌手もそうですよね、100%で歌ってる人は二流じゃないかな、なんて思います。あくまで僕の考えですが^^;
レイバック
URL
2008/04/12 22:58
ありがとう、レイバックさん。
確かにそうだよね〜。
説明箇所って自分のイメージならいくら削ってもいいんだけど、下調べしたものって使いたいんだよね〜。だけど実際使うのって10分の1とか20分の1とかそんなもん。そこ悔しい。
でもね、長くてもそれを読ませちゃう作家もいるわけでしょう。最近思う。文章を書くのって、お弁当作りと同じで、ある程度は慣れかな〜と勘違いしてるところがあった。間があくとだめだ、みたいにね。でもやっぱ才能だわ。こればっかりはどうしようもない。
わたしは、本を読んだら読んだで感化されやすいし、どうもなりませんわ。オリジナリティってなんなんだろ。面白さってなんなんだろ。真面目に考えだすと、書けなくなります。凡人だわ。
才能がある人って悩まないんだよね。サッカーうまい子を見てて思います。先に進むだけだもの。ふぅ〜。あ、ちょっと脱線しました。
つる
2008/04/13 01:24
↑小説は正しさというものがないので、難しいですネ。

うーん、僕はまだ、おじさんとかは言われたこと無いかな。
ちなみに僕は、ガキのあつかい上手いですよー。
内気な子は、あまり言葉でせめると畏縮するから、丁寧に喋りつつ動きでボケるとハートを掴みやすいみたい。
元気なやつなら話は早い。この前、友人の子供(男、小学・低)が、いきなり「ち○こキッーク」(笑)って必殺技を繰り出してきたから、つかさず「ち○こキック返し!」って必殺技で返した。まさに必殺技の応酬。「やるな!」「おまえもな!」の男の世界。
女の子はストレートな質問してくるので、ちゃんと理屈的なボケで返す。「なんで、お兄ちゃんの髪、茶色いの?」「実は……僕の父ちゃんは、タワシなんだ……」
ウケた。

子供は楽しいネ。ああ、僕も早く結婚して…以下省略。

よくわからん長コメですいません(笑)
火群
2008/04/18 21:39
おじさん未踏峰の火群さん、いつもありがとう。
子供、好きだったの?ポイント加算しとくね。エヘ。
内気な子からクソガキまでレパートリー広そうダー。ちなみにわたしはクソガキ専攻です。女子は難しいよ。すでに女ですから。
>「ち○こキッーク」(笑)
ち○ことか、う○こ、を記事に出すとね。コメはそこんとこイジってくれません。チビッコには当たりまえのことなのに大人は自粛するんでしょうかね。
>僕の父ちゃんは、タワシなんだ
受けた!わたしも。
火群さんが子供と遊んで楽しいように、たぶん、わたしもばななと少年が絡むシーンを書いている時が楽しいです。うちの子はもうわたしと遊んでくれませんから。その代償です。この話は、まあ鎮魂歌とでも言いましょうか。火群さんの子供もミニ火群さんみたいできっと愛すべき子供なんだろうな。
つる
2008/04/18 23:37
雪男が妻に逃げられた理由が少し気になりますが、後から明らかになるシーンはあるのかな?

最後の「おばさん」はインパクトありますね。
最初はショックのあまり、呆気に取られて、このクソガキッ!ていう感情を起こすのを忘れてるんですね!

銀河系一朗
2008/05/11 10:29
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
理由は次回で。大したことでもないんだけど、それがきっかけで、そのあとにうす〜く繋がってく感じです。けっして骨太なテーマがあるわけじゃありません。
ショックな出来事があった時、その心象を表現するのに漫画や文章は便利ですよね。現実はノーリアクション。目撃した人も案外そう。映画やドラマの映像は見ていて「ウソ」と思っちゃいます。
ショックのあとは怒りか笑いがやってくる。でも怒りの方が多い気がする。

そしてクソガキ、ほんとにいる。
つる
2008/05/11 15:28

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