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zoom RSS 読書感想文/桃の木の下で〜前編

<<   作成日時 : 2008/02/20 19:15   >>

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photo by [ 越智桃園/桃天国 ]


桃の木の下で〜前編
担当編集者「きっと直毅は佐藤さんに逢えましたね。よかった、よかった」

つる「いんや、逢えねえ」

担「ハ? 逢えましたけど」

つる「この二人はね、十年後に新橋駅前の雑踏で偶然に再会するんだよ。それまでは逢えねえ」

担「いんやっ! 逢えました! ほんと意地が悪いなあ」

つる「逢えるわけないじゃん。岡山がどんだけ広いか知ってんの」

担「どんだけて。そうだ。ほら、酒井さん。佐藤さんの親友の酒井さんが住所とかメルアドとかをカレシのニイケンに言って、それでニイケンから直毅は聞いたんですよ。そうだ、きっとそうに違いない。そして――



 のどかな桃の畑がどこまでも続いている。蕾の微(かす)かな甘い香りのつづら折りをバイクが走って行く。
「ここかなあ」
 やがて一軒の農家の前でBALIUS(バリオス)を止めると直毅は独り言を言った。母屋の前庭で日本てぬぐいを姉さまかぶりにしたおばあさんが何やら作業をしている。バイクを降りると思い切って声を掛けた。
「すいませ〜ん。ここに佐藤ゆみこさんていらっしゃいますか」
「あ〜?」
「佐藤ゆみこさんて――」
「あ〜おるよ。おるけどおらんよ。誰?」『う〜ん』とおばあさんは腰を伸ばすような仕草をすると、直毅をジロジロ見て言った。
「あの、東京から来たんですけど、松本って言います」
「ゆみちゃんのカレシかね」
「ち、ちがいます。同級生です」
「ほ〜そうかね」またジロジロ。
「あの、おるけどおらん、て」

「個人情報だからそれ以上は喋らんよ」

「えっ!?」

「帰った、帰った」 そう言うと直毅に向かって追い払うように手の甲を振った。

「ゴルァ! このクソばばあっ! 『帰れ』だとぉ〜? てめっ、もういっぺん言ってみろっ! こっちが下手に出てりゃいい気になりやがってっ! 黙って質問にだけ答えてりゃいいんだよっ!」

 直毅はグローブも取らずにおばあさんの胸ぐらを掴むと、目の高さまで宙吊りにした。

「アワワ」

「言えっ! 佐藤がどこにいるか言えってんだよっ! オレは佐藤に会いたいんだ! わかったか! さあ、サッサと吐けっ! それともてめえの残り少ねえ寿命をトリックなしで『あっ』ちゅー間に消されてえか。えっ? どうなんだよっ!」

「アウアウ……。う、裏の畑ですぅ……」キュウと絶命したかのように崩れ落ちるおばあさん。

「バカめ。はじめから素直に吐きゃ、手荒な真似もしないで済んだものを。とんだ災難だったな」 

 そう言うと、直毅はポ〜ンと絞められたおばあさんを土間までブン投げた。

「どうもオレのライダーグローブは気が短くていけねえや。 ペッ!」




「佐藤ーっ!」 

 桃畑の簡易柵をその黄金の左足で蹴り飛ばすと直毅は声を張り上げた。畑で作業している人がその大声にチラホラと振り返るがそんなの関係ねえ。

「どこだーっ! 佐藤ーーっっ!! 」

 愛(いと)しい人を探し回る直毅の声に、少し上で『あっ!』と言って振り向く人がいた。佐藤さんだ。彼女は被(かぶ)っていた『Far(ファー)!』と叫ぶキャディさんのような帽子をむしり取ると、一目散に声のする方へと駆け出した。緩やかな丘を転げる勢いだ。直毅も走った。

「松本君っ!」

「佐藤っ!」

 ドスン! 上から降ってきた佐藤さんを受け止める直毅。佐藤さんはすっぽりと直毅の腕の中に収まった。

「会いたかったよ!」

「オレも!」

「来てくれたんだ」

「ああ」

「でも遅いよ。遅過ぎるよ」 佐藤さんは直毅を責めた。

「何でだ? 何でそんなこと言うんだ。 佐藤!」

「アタイはね。アタイは汚れちまったのさ。もう松本君の知ってる昔のアタイなんかじゃない」

「嘘だ! そんな嘘つくな! だって佐藤は佐藤だろ!」

「ううん。本当さ。本当にアタイは汚れちまった。害虫退治の名目で農薬散布という地球にちっとも優しくないミッションに関与し、罪もないカイガラムシ及びカメムシたちを大量虐殺してきたアタイだよ。いや虫だけじゃない。花たちにだって摘蕾(てきらい)・摘花(てきか)というドメスティック・バイオレンスを繰り返してきたんだ。桃の木を護(まも)るためならどんな汚い事だってやったさ。その挙句の果てがこれだ。土方焼けの男みたいな女。それが今のアタイ。アンタにこんなふうに抱かれる資格も筋合いもないんだよ」

「そんなこと言うな! 佐藤、オレだって、オレだってここに来るまでこの手をどンだけ汚(けが)してきたことか。おまえに会いたくて、ついさっきも人を殺(あや)めてきたところだ」

「ア、アタイの為に、こんなアタイの為にアンタっていう人は……アンタっていう人は……」 首に巻いたタオルでゴシゴシと溢れる涙を拭う佐藤さん。

「佐藤……」

「松本君……」

 抱き合ったまま見つめ合う二人。真昼間の桃畑のど真ん中。ところどころに作業の手を休めて二人の成り行きを見守る人たちがいる。でも、愛という名の下に今まさに結ばれんとする二人にとっての彼らは、最早“箱根〜彫刻の森美術館”の敷地内に点在する数々のオブジェでしかありえない。
 うっかり鍋に放り込んでしまった二枚の豚肉バラしゃぶしゃぶ用カッコアメリカ産カッコ閉じる内容量200g価格\298グラム単価\149のように固く抱き合った二人は、もうテポドンが落ちたって離れやしないだろう。
 やがて二人の視線が互いの口元に落ちる。そして今までの思いをぶつけるかのような熱いK――」




つる「ーーーーっ!!! やめてえぇーっっ!!! しないしない! ○ISSはしないんだってば! ほんとやめてっ!」

担「じゃ、はるばる岡山まで行った直毅はどうなるんです」

つる「うん。逢えなくて、明石海峡に向かって『佐藤ーっ!』って言ったよ」

担「それで?」

つる「そんだけだよ」

担「ハア〜?」

つる「ははは。おにいちゃんらしいやね」

担「フ〜ン」

つる「『フ〜ン』て何さ」

担「『フ〜ン』は『フ〜ン』ですよ。わかったぞ!」

つる「何が」

担「センセは長谷川くんに優しい」

つる「そうだよ。長谷川くん、だ〜い好き」

担「ニイケンにもそうだ」

つる「うん。男らしいよ」

担「じゅんぺいにも」

つる「だっていい奴なんだもの」

担「直毅」

つる「あれはだめ。ほんと煮えきらない男さ。意気地もないくせして偉そうで、そのくせに人の顔色ばかり伺うのさ。それに女の子を見た目で判断する奴なんだ。佐藤さんのことだってそうだよ。ちょっと綺麗だとすぐそう。彼女がいい子だったから良かったようなものの、あんなんじゃ性悪な女にコロっと騙されるよ。そうそう、そんなわけで大学一年の時に年上の女に振り回されるんだ。その女は悪い病気持ちで――」

担「わーっ!わーっ!聞きたくない」

つる「聞きたくなくたってそうなんだよ」

担「そう、って。よくもまあ、そこまで彼に過酷な試練を与えられるもんだ。だから『わかった』って言ったんですよ。もしかしたら逆に彼の事が、すごく好きなんじゃないですか? よくいますよね。好きな子をイジメるタイプの人間て」

つる「……」

担「図星でしたか」

つる「ごめんね」

担「いいんですよ。じゃ、逢えましたね?」

つる「うん。実はこうだったんだよ――






<桃の木の下で〜つづく>





 ああ、二人のこういうのと、


 

《あっ。パパ? もう帰って来る?》

「あ、オレオレ。意外と早く会議終わってさ。今電車乗るとこ。そんでさ、牛乳だけでいいの? 朝ゆみこが言ってたじゃん、買ってくもの。え?」

《片栗粉だよ》

「あ? カタクリて、何だよ。買っとけよ、そんくらい。え?」

《片栗粉! だって熱出ちゃったんだもん、直史。あとオムツね》

「 オムツ? 何だっていいんだろ? あ〜? バンパースじゃなくてメリーズのM? え〜、それじゃなきゃダメなの? うん、わかった。じゃ、それと牛乳とあと片栗粉ね。 メンドイな」

《ナニ? 今何て言った?》

「うん? いや、こっちの話。わかった。そんでさぁ、オレのお気に入りのYシャツ、アレ、クリーニング屋から――」



 とかいうのは見たくないですねえ。ホント。


 今日のBGM→クリック




 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。
 

 ガンバレ!日本!
 汚ねえファールに負けンな!あ、すいません。
 21:09ひゃははははははははは!日本1-0中国

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
まだネタ引きずってますね(笑)
タイトル見たら一瞬、新しいの始まるかと思った。
そろそろ、つるさんの、ミス・ピーチ体験小説が華麗に始まるとばかり(笑)
そちらはまだですか?

銀河系一朗
2008/02/21 20:46
みたくないのかよ(笑)ミス・ピーチ体験小説!!わくわく( ´艸`)
レイバック
2008/02/21 21:18
ミ、ミス・ピーチ体験小説ですか……。
ギブです。
銀河系一朗さん、いつも本当にありがとう。
なんかね。細菌、いや最近ね、意欲が湧かないんですわ。ネタは思いつくんですけどね。文章力がね。追いつかないっていうんですか?て疑問文だよ。落ちてます。
つる
2008/02/21 23:26
見たくねえよ!
レイバックさん、いつも本当にありがとう。
ミス・ピーチね。コメ↑同上。
だって書いたらきっと協賛企業のお偉方が佐藤さんに体の関係を迫ってきますよ。そんなのも、見たくねえーっ!
つる
2008/02/21 23:31
ちょいと雑談を。先日のサッカー。ラフプレーひどかったっすよねー(怒)まったく勝てて良かったよ。蹴られて怪我した安田のブログが結構いい事書いてるし面白いので貼り付けちゃいます。ttp://blog.lirionet.jp/yasuda/2008/02/post-7cda.htmlこのコメ具合が悪けりゃ削除しちゃってくださいね^^
レイバック
2008/02/22 00:35
ごめん。なんかレイバックさんのコメがspam扱いになって反映されてなかった。
そう!そうなんです!
そのこと言うの忘れてました。それだ!原因は!怒り心頭で燃え尽きました。
なんかねえ。ああいうの見せられるとフェアプレイとかスポーツする原点て何なんだろってね〜。後半、熱かったですよお。鈴木啓太、男でしたねえ。ロスタイム5分が長かったですよ。中澤もいい仕事してましたよ。あれ、中澤先輩の一番上のおにいちゃんなんですよ。安田、痛かったね〜。うちの2番目と3番目の間の年齢です。この子たちにもう日本を背負わしちゃってるんですね〜。安田のURLありがとう!お気に入りに入れました。この世代の子たちは本音が少しでるから読んでて楽しい。もうチット大人になると聞けなくなるもんね。
審判、シネ!とか言ってましたよ。だって、レッドでいいところあったでしょ。人として恥ずかしくないのかしらん。ああ、このコメント欄て狭くないですか?
つる
2008/02/22 01:09

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