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zoom RSS 「理想の高校生」EAST SIDE STORY 21

<<   作成日時 : 2008/02/17 20:29   >>

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EAST SIDE STORY 21

 あれから1年が経った。

 直毅たちは今日、晴れてナンジャラホイ高校を卒業する。 

 ♪白い光のな〜か(中)に〜 山並みは萌えて〜
  遙かな空の 果てまでも〜 君は飛び〜立つ〜♪

 体育館に卒業生の歌声が響いた。卒業式の歌が、“仰げば尊し”から、この“旅立ちの日に”に取って代わったのは、ここ何年かのことだ。
 
 サビの部分で女子のメロディラインを男子が後追いする。

 ♪今 わ〜か(別)れの〜時 飛び立とう〜飛び立とう 未来信じて〜
  はずむはずむ わ〜か(若)い 力信じて〜 この広い〜♪

「♪このキモイ〜♪」

 直毅の隣のじゅんぺいが、感傷的な気分を紛らすように、ふざけた調子で声を張った。

  ♪この広い〜♪

「♪このキモイ〜♪」

 ♪おぉお〜(大)空に〜♪

 斉唱しながら直毅はちょっと思った。

 佐藤と一緒に卒業したかったなあ、って。

 



「じゃな!」

「おう!気ぃつけてな」「じゃあな」「またな」「またっ!」 
 式が終わると、直毅はクラスメイトとの記念写真もそこそこに自宅に直帰だ。これからツーリングに行く。
 それを知ってるサッカー部の仲間とは、昨夜のうちに別れを惜しんだ。
 じゅんぺいと二イケンは進学が決まったが、直毅は今年浪人する。そんなで長い春休みを利用して、母方にあたる四国の祖父母の所まで行こうというのだ。
 
 ツーリングの足になるバイクは従兄(いとこ)の友也兄ちゃんが置いてったものだ。2ヶ月ほど前のことだった。日本一周の帰りにフラリと立ち寄った兄ちゃんがもういらないからくれると言う。そのあと海外生年協力隊員としてザンビアに行くそうだ。
 郵便局のアルバイト貯めた金で中免を取った。名義変えもした。
 「KAWASAKI BALIUS(バリオス)U」 ネイキッドタイプのそれは、総排気量250ccのパールロイヤルブルーのバイクだ。走行距離約18,000キロ、まだいけンだろう。
「ほんとに大丈夫なの? 保険証は持った? 着替えは足りるの? 何かあったら電話しなさいよ――」
「行って来ます」
 見送りに出てくる母さんに、直毅は振り向かないで言った。ぎりぎりまで反対された。父さんはまあまあ承知だ。弟の直人にさんざん羨(うらや)ましがられた。
 どるる〜ん! セルスタータを押すと、ちょっとそこらへんまでくらいのあっけなさで出発した。





 駅前のロータリーに着くと、黒の「しびこちゃん」が待っていた。クラスメイトの鈴木君の愛車「HONDA CB750」だ。文化祭の白雪姫で小人6の役だった彼とは偶然に教習所で会った。鈴木君は大型を取りに来ていた。
 直毅がツーリングのことを話すと、彼はその相談に乗ってくれたり「途中まで見送る」と言ってくれたりした。心強かった。なにしろ始めてのロングツーリングだ。
「お待たせ」
「おう。なんだ。意外と荷物少ないじゃん」
「そうか。こんなもんだろ」
「じゃ、行くか」
 鈴木君を先頭に国道246を南西に向かう。いい調子でしばらく車の流れに乗って走った。

 ピュィ〜〜ン!

 あと少しで瀬田の交差点という所で、一台の白バイが二人の横に並んでマイクだ。
「はい、そこのCBとバリオス。止まってください」
 あっという間に前に回り込まれて2台は路肩に誘導された。 シールドを上げた鈴木君が、何でー? と言う顔で振り返った。
 白バイを降りた女性隊員を見て直毅が言った。
「あっ! ユキ姉」 
「よっ!」
「あわわ」
 鈴木君は慌てた。以前ニケツでパクられた時の婦人警官だと気づいた。
「水くさいなあ。四国まで行くんだって? じゅんぺいに聞いたよ」
「あ〜、まあ、そうかな」
 直毅の返事は曖昧だ。
 四国に行くことは行くのだが、その前に岡山へ寄るかどうしようか迷っていた。
 鈴木君は不思議そうにそんな2人を交互に見ている。直毅が婦人警官にタメ口だったからだ。
「じゅんぺいの姉ちゃん」と直毅が説明すると、「あ〜」と鈴木君は言った。
「なに。そんで、高速(道路)とか大丈夫なの」
「一応高速教習と、あと鈴木と1回だけ首都高、乗った」
 直毅の言葉に鈴木君もコクンコクンと頷いた。
「ま、いいや。途中まで一緒に行くよ。送ってく」
「え? いいの」
「これも市民の安全確保だよ」
「だって、バレたらクビとかならない?」横で鈴木君もコクンコクン。
「なったらなったで――」とか言ってユキ姉は笑った。
 彼女は隣県の管轄で行なわれる技術講習に行くついでだた。しかし彼女なら例えクビになったとしても、その抜群の容姿でどこでも食っていけそうだ。伊東美咲そっくりなのだ。
「あと、これ渡しておく。困ったら電話するといいよ。みんないい連中だからさ」
 ユキ姉から受け取ったメモには、彼女の交遊歴の広さを物語るアドレスが並んでいた。
「ありがとう、ユキ姉。助かる」 
「それから高速はね。キープレフトじゃなくていいよ。一般車両と同じラインでいい。それとトンネルなんだけど――ま、いいや。来て」
 そう言うと白バイに跨ってもう後方確認してる。直毅と鈴木君も慌てて後方確認だ。
 ドン! と走り出したユキ姉の白バイ。2人はそれを追った。

 第三京浜から渋滞の横浜バイパスを抜けて東名高速へ入った。ドカン! 東名に出た途端にユキ姉の「HONDA VFR800」はロケットダッシュのようにぶっ飛んで行く。
「マジかよぉ」
 シールドの下の直毅。その横を鈴木君がすり抜けた。メットの下の彼必死の様子だ。
「排気量がちげえだろ。排気量がぁ」
 そういう直毅も回転数を上げてトップに入れた。二人に離されまいとアクセルもめいっぱいだ。タコメーターはとっくに1800(rpm)振り切った。いつレブるかドキドキだ。
 それでもユキ姉は、まだ全然余裕があるんだろう。後続の二人がついてこれるギリギリのスピードで飛ばしながら、走行車線から追い越し車線、又はその逆、加速のタイミングを教えてくれる。リズムカルな彼女のライディングは美しくてそして潔(いさぎよ)い。

 やがて御殿場 IT(インターチェンジ)の出口が見えた。ユキ姉と鈴木君はエンジンブレーキをかけながら、車間距離の空いた直毅の前に下がってきた。
VFR800のテールランプが「気・を・つ・け・て」というふうに5回点滅すると、鈴木君のそれも同じように5回点滅した。
 ここは間違っても「あ・い・し・て・る」のサインじゃないな、と苦笑しながら、直毅も左手を上げてお別れした。
 それをミラーで確認したのか、前の2台はスルスルと左へ降りて行った。





 「懐かしいなあ。俺もそれの黒、転がしてたんだよ」

 直毅が富士川 SA(サービスエリア)でトイレ休憩をして戻ると、隣のHARLEY(ハーレー)軍団の1人が話しかけてきた。髭面のサングラス。いかにもハーレー乗りっていう恰幅(かっぷく)の彼は、年の頃で言ったら30代だろうか。

「はあ」

 こんなふうに話しかけられるなんて初めてのことだったので、直毅は間の抜けた返事になった。

「バリオス、去年で生産中止になっちゃったんだってな。俺ら、初期型ンときゃ燃料計なんかなくてよ、走りながら何度ガソリンコックをRESにしたかわかんねえよ」

「あはは! 燃料計ついててもオレもそうです。渋滞とかくらうとケッコーいっちゃうんで」

「リッター(1ℓ)どんくらい走るよ」

「18(km/ℓ)いけばいい方で、町乗りで15くらいっス」

「ははっ! それじゃたまんねえなあ。うまくブン回しゃ、20いくだろ」

「だといいんだけど」

 走行距離を見たハーレーは、

「けっこう乗ってんじゃん」と言った。

「あ、貰い物なんで」

「カスタムとかしないんだ」

「あ、まだ全然わからなくて」

「ふん、そのうちいやでもわかるようになるさ。BALIUSて400(cc)並みのパワーがあンだけど、走行距離7000(km)越えンとオイル漏れすっから気をつけな」

「あー。ありがとうございます」

「俺のは『くろすけ』ってんだ。そっちは」

「?」

「そのじゃじゃ馬娘のことだよ」

 バリウスのタンクのエンブレムは馬だ。それを見てそう言っった。つまりバイクの愛称のことだ。

「あ『みさとゆうこ』て言います。『ゆうこりん』です」要するに、佐藤ゆみこ、の組み換えだ。

「ははっ! 苗字までついてるんかい」

「はあ」

「変わってんな。ま、あっちの奴のも『リンリン・オブ・ジョイトイ』てんだから似たようなもんか」そう言ってまた豪快に笑った。

「で、兄ちゃんはこっから何処まで行くんだい?」

「四……」言いかけて、心を決めた。「岡山です」

「岡山かあ。きびだんごでも食いに行くってか。わはは」

 ハーレーの後ろの仲間たちからも失笑が漏れた。

「違います。オレ――」

「?」

「好きなやつに逢いに行くんです」

「ひょお。言ってくれるねえ」

「逢えるかどうかわからないけど」

「わからないて。ふーん、そうなのか。あーでも、きっと逢えんだろ」

「だといいけど」

「そう思うよ。兄ちゃん、きっと帰りはタンデムよ。わはは」

「まさか」つられて笑う直毅。

「そしたら彼女に見せてやるといいよ、あれ」

 ハーレーが直毅の背後に目をやると、見ろ、というふうに顎をしゃくった。


 直毅が振り返る。


 そこにオレンジを背負った富士山があった。白い頂は何も言わない。



【君がため  惜(を)しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな】 
藤原義孝(ふじわらのよしたか )




「ハ〜」とさと子さん。「やっぱ大掃除するかな」

 う〜んと、伸びをしながら独り言をつぶやくと、さと子さんはコタツから抜け出した。
 理想の高校生もいいけど、いくら妄想してても彼らが大掃除しに来るわけじゃない。
 来るのは泥だらけのサッカーストッキングをお土産にした腹ペコの高校生。それが現実。







<おわり>




■君がため  惜(を)しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな/藤原義孝(ふじわらのよしたか )
<口語訳>
あなたとお会いするためになら、たとえ捨てても、けっして惜しくない命だと思っていました。しかし、こうしてあなたとお会いできた今はちがいます。あなたともっとお会いするために、いつまでも生きていたいと思います。
※長くもがな・・・長生きしたいなあという意味。


「旅立ちの日に」
 →合唱2年2組をクリック。
 →歌詞


KAWASAKI BALIUS(バリオス)U
クリック
クリック 

HONDA CB750クリック

HARLEY DAVIDSON(ハーレー)クリック

中免(普通自動二輪免許)→排気量400cc以下の普通自動二輪車が運転できます。

大型(大型自動二輪免許)→普通自動二輪免許に加え、総排気量が400ccを超える自動二輪車が運転できます。

レブるクリック

カスタム→カスタム(custom)とは、メーカーなどによって生産された商品を自分の趣味に応じて改造(カスタマイズ)すること。


 さと子さん、まだ大掃除中でしたね。この記事を書くのに、バイクの動画を見たり、実際の白バイ隊員に突撃インタビューしたりと、回り道ばかりしていました。
 さて、これで「理想の高校生」はお終いです。長い連載を最後までおつき合いくださって本当にありがとうございました。
  
 今日のBGM→クリック
 おにいちゃんと一緒に首都高を走ってみよう→クリック05:29ナゲ〜よ。 
 おにいちゃんの初ツーリング→クリック00:53
☆おにいちゃんとZEPHYR( ゼファー)→クリック01:07どひゃああ!
 BALIUSで峠を走る→クリック02:15見ると酔う。
☆ユキ姉の挑戦→クリック02:47すげっ!
 全国白バイ安全運転競技大会 →クリック06:40

☆印お薦め

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。
 

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
あ〜、とうとうラストですか。
最後がバイクネタというのが意外でしたが、佐藤さんに会えるのか(くどいか?)
レイバックさんとこで「カタナ」デザイン最高風なコメしたけど、
バリオスは、いかにもベストセラーな顔してますね。
音的にはホンダのV気筒も好きです。
しかし、バイク免許はねえですだ(笑)

あ、そうそう、誤字を見つけましたよ
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
おわり→つづく のまちがいでは。
むちゃコメ失礼しました!
連載楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます!
お疲れ様でした!
銀河系一朗
2008/02/18 16:46
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
ラストというよりは20と21はおまけですかね。バイクネタにしたのはBALIUSの赤に乗ってたからです。おにいちゃんに黒を乗せたかったんだけど黒タンクのエンブレム画像がなくてやむなく青です。「カタナ」使いたかったなあ。漫画「バリバリ伝説」のヒデヨシが乗ってましたよね。でも「カタナ」の750ccは鈴木君が今乗るには古すぎなんです。だからCB750で妥協です。
>佐藤さんに会えるのか
そうそう、そう言えば「読書感想文」担当編集者の羽鳥君も次の記事でそんなこと言ってましたっけ。この二人は十年後に新橋駅前で偶然会うんですよ。
>おわり→つづく のまちがいでは。
嬉しいこと言ってくださってありがとう。
>お疲れ様でした!
あ、どもども恐縮です。「小説」のステージでは連載が終わるとこういうふうに言うんですか。だったら、わたしは系一朗さんに言ったことがありませんね。ごめんなさい。
つる
2008/02/18 20:27
おつかれさまでした☆余韻の残るいいエピローグでしたね。ZEPHYR(西風)を突っ切って走れ直毅(笑) バリオス僕も好きだなぁ。同じ250マルチでもホーネットとかJadeとかは軟派な感じがするもん。今ってVFR800があるの?? ちなみに僕が乗りたいのは、カタナとSR500と隼。誰かくれ^^
レイバック
2008/02/18 22:01
レイバックさん、おつかれと言ってくださってありがとう。
>ZEPHYR(西風)
ええっ!に、西風?そんなシャレた意味だったのか。(←無知)「族」専用自動二輪かと思ってました。バリオスいいよね。
>VFR800
突撃白バイインタビューで隊員が言ってました。750はもう古いんだそうです。女性隊員のほとんどが800だそうですよ。
>SR500と隼
ググったらこの二台のタイプ、全然違うじゃないですか。SR500が好き。隼は高価ですね。リッチなマダムにネダルしかなさそうですよ。あ、リッチなマダム=おふくろ、ね。
つる
2008/02/18 22:45
おつかれさまです。

思えば楽しい連載でした。

僕はつるさんのことは忘れない。

いつまでも心の中にある。

ありがとう。

お元気で。

……
……

……あ、えーと。礼儀正しく挨拶してみただけです(笑)
火群
2008/02/23 23:05
や、やだ!火群さん!ちょっとあわてましたよ。「おつかれさま」と言ってくださってありがとう。

>いつまでも心の中にある。
いい言葉ですねえ。もうすぐ春になると別れの季節だから、ぐっときました。

そうそう、全然関係ないけど、火群さんのプロフにある◆好きな食べ物◆ 油で揚げた翼の生えた生物。これが、わからなくて眠れないんだ。
つる
2008/02/24 02:02
唐揚。期待はずれでしたねヽ(。´ω`)ノ
眠れない……
なんと!これは、ある意味「今夜は寝かせないよ」ではないか!
↑アホだ…。こんなこと言ってるからダメ人間なんだな(笑)
春になると別れの季節…で思い出したけど、最近、♪あおげば尊し♪は何をあおいでいるのでしょう? って年下に問題出したら知らない子がいた……。
火群
2008/02/25 01:14
あ、火群さん。何度もすみません。
>唐揚
ああ、今夜からゆっくり眠れそうです。唐揚ズッキーならあれ知ってますか。名古屋の名物らしいんだけど、東京にもお店がある「世界の山ちゃん」の手羽先。これが実に美味しそうなんです。一度食べてみたいのだけどなかなかチャンスに恵まれません。
>「今夜は寝かせないよ」
このセリフが似合う火群さんと妄想。
>♪あおげば尊し♪
うちの下二人、わからないかも。怖くて聞けません。怖さ的に言ったら、へたなホラーよっかよっぽど怖い。
つる
2008/02/25 01:40

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