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zoom RSS 「理想の高校生」EAST SIDE STORY 9

<<   作成日時 : 2007/12/28 00:01   >>

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EAST SIDE STORY 9
 あくる日のことだ。

 直毅は郵便局のアルバイトから戻ると、横になって本を読み出した。その上を直人の影が通る。

「跨(また)ぐな」

「おう」

「どこ行くんだ。もう飯だろ」

「ん」行こうとする直人。

「オイ」

「すぐ戻る」

「オレの貯金箱減ってんぞ」500円玉貯金箱のことだ。

「……」

「足りないのはわかっけど」

「……」

「聞いてんのかよ」

「聞いてる」

「母さんのとこは止めとけ」

「オウ」

 流行(はやり)のストリート系ファッションで出かける直人。奥手の直毅に比べて、とうに思春期を迎えた直人は身体(からだ)つきこそ中学生だが、気持ちだけいっちょまえに男して、粋がっている。
 直人の方が亡くなった美人さんだったという母親に似て、今どきのイケてる男子かもしれない。だけど心の持ちようが表情に出るのか、とてもそうは見えなかった。
 他の全てにおいても対照的な二人だった。いや比べるのはよそう。
 それでも直毅はそんな直人が嫌いじゃなかったし、不思議なことに直人もそうだった。
 二人は違い過ぎて相手を認めているのかもしれない。




 司馬遼太郎も読み飽きて、今週の“花よりメガネ男子”新年合併1・2号を手に取った。今週の特集は<もしも好きな子と行ったラーメン屋でメガネが曇ったら>だ。

特集<もしも好きな子と行ったラーメン屋でメガネが曇ったら>
「あ〜それやだなあ。なになに、その1――」

〜入店前に君にできること〜
その1メガネの裏に唾を塗って曇り止めを施しておく。

「ゴーグルかよっ」 

*但し君の唾が臭くないことを祈る。
「……」

その2ポケットにホカロンを忍ばせて何気な口実でメガネを温めておく。
「何気て」

〜入店後の君にできること〜
その1いっそ曇ったメガネで彼女に振り返り「見てみ」と言ってみる。彼女の反応次第では次のステップ「拭いて拭いて」のおねだり可。

「ははっ」

*但しふだんのキャラ設定が重要。
「アニメかよっ」

その2曇ったメガネのまま「神様がこれ以上君を見つめることを許してくださらないようだ」と言う。
「ドン引きだろ」

*ただしドン引き覚悟で。
「ほらな」

その3曇った瞬間に秒速でかなぐり捨てる。
「へ〜」

*但しマラソンでラストスパートを掛けたQちゃんのように、あくまでもワイルドにね。
「オッセーな、母さん。腹減った」独り言。

 トゥルー、トゥルーと電話が鳴った。

「はい。松本です」

《こちらニッコリマートのイーストサイド店ですが》

「ハ?」佐藤さんのところだ。

《お宅に松本直人さんというお子さんはいらっしゃいますか?》

「はい……何か」

《失礼ですが保護者の方ですか?》

「いえ、でも家族の者です」

《至急、保護者の方に連絡を取りたいのですが》

「兄です! 成人してます、ホントです! 母はまだ戻らないので代わりに話を伺います!」

《そうですか。わかりました。実は今さっき、店で万引き事件がありましてですね。それに絡んで弟さんから事情を聞いているところなんですよ。何人かいるんで、まずは親御さんに連絡を取ってるわけなんですが、こちらに》

「行きます! すぐ行きます! 母にもすぐ連絡を取ります!」

 言い終えるとすぐに玄関のダウンを引っ掛けダッシュで飛び出した。途中、母さんが働いているフライデーストアに寄った。暮れの買い物客でごった返す店内。
 鮮魚売り場の母さんは長トレイにタコのパックをいくつか乗せ、品出しをしているところだった。

「あ、おにいちゃん。遅くなってごめんね〜。夕(ゆう)パートの人がインフルエンザになっちゃって、あと少しすれば代われ――」

 話を遮(さえぎ)って簡単に事情を説明すると、母さんの顔からみるみる血の気が引いた。タコを落としそうになる母さん。トレイを支える直毅。

「悪いけどおにいちゃん、先に行ってもらえる? すぐあがるから、すぐマネージャーに言ってあがらせてもらうから」

「わかった。任せろ」

「悪いね。頼むね」

 背中で聞くと、勢いよくペダルを漕いだ。こんな形で青いブリッジを越えるなんて思いもしなかった。





 じゅんぺいはSAGEのこちら側でずっと立っていた。もう小一時間にもなろうか。

「なんだよ。今日はいねえのかよ」



【陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり たれゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに】河原左大臣(かわらのさだいじん)



 焦(じ)れ始めた時だった。

「お」

 中から数人の仲間と巻主君が出て来た。すぐわかった。きれいな顔をした彼はそれほど目立つ。ダッと駆け出して、

「巻主っ!」

 そう言ったかと思うと、もう相手に飛びかかっていた。胸ぐらを掴んでまず一発。直毅の分をお返しして、グラついたところを思いきり前足で蹴り飛ばした。
 倒れた相手の体を跨いで「へへ」と鼻をこすると上から言った。

「ケーキ代、払ってもらおうか」

 そのじゅんぺいの後ろから仲間が飛びついて、フードごと引き倒された。「ふざけんな!」「やれ!」「うるせえっ! ひっこんでろっ!」あとはもう殴られたり蹴り返したり、わけのわからないことになった。

 遠くからサイレンの音が聞こえてくる。

「おい、大丈夫かよ」

 植え込みに半分埋まったじゅんぺいに声を掛けたのは、偶然通りかかった中澤先輩だった。巻主君たちはとっくにいない。
 先輩の手に引かれて立つと、じゅんぺいは顔をしかめた。

「あたた」

 サイレンが近い。

「ヤバイ! 行くぞ!」

 先輩の声に、じゅんぺいは落ちた財布と携帯を拾い上げると野次馬の脇をすり抜けて走った。



<つづく>



■陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり たれゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに/河原左大臣(かわらのさだいじん)
<口語訳>
陸奥のしのぶもじずりの乱れ模様のように、わたしの心はひどく思い乱れています。こんなになったのは、いったいだれのせいでしょう。わたしのせいではありません。みんなあなたのせいですよ。
※しのぶもぢずり・・・福島県の旧信夫郡あたりで、乱れ模様に染められた布のこと。家の周りをこれで覆った。参考URL


フードたぶんヴィンテージのフライトジャケットの下からパーカーのフードを出してたんじゃないでしょうかね。彼オサレみたいですよ。



 あれ? 巻主君、こんなところに。もう登場がないはずでしたが、じゅんぺいの気持ちがおさまりませんでした。
 殴ったり殴られたりのシーンが多いです。でも決して暴力を肯定しているわけではありません。男子はなかなか厳しい世界にいるとご理解ください。

 年末年始の更新どうしようかと思ったのですがネットの世界で年末年始もないだろうと、筆にまかせて気ままに更新することにしました。正月番組に飽きたら見てやってください。

 今日のBGM→クリック


 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。




↓ケーキ代・・・
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
やっと追いついた。
直人が数人と万引きですか困りましたね。
てっきり巻主グループかと思ったら、巻主はゲーセンのあたりにいてじゅんぺいとケンカしてたのか。
ケンカも素手ならまだいいですが、ナイフや棒を持つと大変なことになりますね。
銀河 系一朗
URL
2007/12/30 10:43
すみません。
まだ追いついていません。
いつも読み逃げで申し訳ないです。
来年はきっと感想入れますのでお許しをm(__)m

今年はお知り合いになれて嬉しかったです。
来年も変わらずお仲間でいさせてくださいね。
取り急ぎ今年の御礼とご挨拶です。
良いお年をお迎えください。

2007/12/30 11:24
銀河 系一朗さん、いつもありがとう。
>ケンカも素手ならまだいいですが、ナイフや棒を持つと大変なことになりますね。
あ〜凶器とか全く考えていませんでした。街中ですから、ちょこちょこっとした小競り合いですね。うちの子もやられましたよ。ええ、泣き寝入りです。男子は大変です、ほんと。
つる
2007/12/30 22:16
舞さん、来てくださってありがとう。
連載が長いので、どうか追いつくとかそのへんはお気遣いなく。しかもそう面白くもないと思う。見て↑このアクセス数。
このシリーズがもう少しで終わるのですが、そうしたら小学生ものを始めようかなと思っているんです。ますます面白くもなんともないと思うんだけど、また意地で連載します。良かったらそっちから見てやってください。
今年はご縁ができて嬉しかったです。また競作企画があったらご一緒しましょう。来年もよろしくです。
つる
2007/12/30 22:24
つるさーん♪今年はありがとうございました。
小学生ものがはじまるんですね。今年はつるさんをはじめ素敵な方々と知り合えてよかったです。来年もよろしくお願いします。
(↑これ見るの、来年かもしれないですね……)
七花
2007/12/31 00:41
どーも。はじめのころから来てるくせに、コメント少ない火群ですm(_ _)m
今年はありがとう。
来年もがんばりましょー(。-∀-)ニヤリ
火群
2007/12/31 18:47
そうですか、来年は小学生ものか。
がんばってください!
今年はお世話になりました。
来年もよろしくお願いします。
銀河 系一朗
URL
2007/12/31 19:57
七花さん、間に合った、今日に間に合いました。こちらこそ刺激になって楽しい思いをさせていただきました。訪問先が増えるとね、なんか視野も広がったような気になります。あくまでも「ような気がしてる」だけなんですがね。
これからもわたしがいいなと思ったり感動した話を伝えていきたいです。すべったらごめんなさい。来年もよろしくです。
つる
2007/12/31 22:33
火群」さん、来てくださってありがとう。
火群さんの気持ちが嬉しいです。開設当初のことを思えば夢のようですよ。
来年はもっとうまくなりたいなあ。気持ちだけが空回りしてなかなか伝わりません。
ほんと頑張りましょう。
来年もよろしくです。
つる
2007/12/31 22:39
銀河 系一朗さん、ありがとう。
>小学生もの
つまらないんです、たぶん。

だいたい、めんどくさがりのわたしがここまでよくやってるよという感じです。
一朗さんは細かい描写や会話を手抜きすることなく丁寧に書かれますね。そこらへんを見習っていきたいと思っています。人の作品に触れる機会が増えて、自分に足りないところが少しずつ見えてきましたよ。
こちらこそ来年もよろしくです。
つる
2007/12/31 22:51

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