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zoom RSS 「理想の高校生」EAST SIDE STORY 7

<<   作成日時 : 2007/12/23 17:38   >>

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EAST SIDE STORY 7
 入口のフックに引っ掛けたダウンを手に飛び出した。
 マフラーを巻くのももどかしく、袖を通しながら駅までの道を走った。いない。戻った。
 国道に出ると遥か彼方を白いコートが行く。
 佐藤さんは埋立地の新興住宅にすんでいる。そこまでは、ひと駅乗っても、またバスに乗らなければならない。このまま歩いたほうがずっと早いのだ。 
 でも川沿いは少し物騒だった。

 ダッと思いきり直毅は駆け出した。難なく距離を縮める。コンクリートに運動靴の音。大きなストライドで猛然と彼女に近づくそれ。あと少しで追いつくというところで後方のただならぬ気配に気づいたのか、佐藤さんはダッシュした。すごく逃げ足が速い。

「待てよっ!」

 真っ直ぐに走っても埒(らち)があかないと思ったのだろう。左手にある広々とした公園に走り込んだ。

「おい!」

 呼べば呼ぶほど逃げて行く。

(何考えてんだ?アイツ)

 彼女は砂場中央の大きなプリンを伏せたようなコンクリ滑り台に駆け上った。追い駆けて登ろうとする直毅にプリンカップの上から、

「きゃああああっ!」佐藤さんが叫んだ。固まる直毅。

「ハア?」

「来んなっ!」仁王立ちの彼女。

「へ?」

「それ以上近づいたら殺すよっ!」

(こ・殺されんのか?オレ)

「アレ?」はあはあ言ってる。

「アレとかじゃねえし」こっちもはあはあ言ってる。
 
「あ〜松本君か。脅かさないでよ〜」

「脅かしてねえよ」

「へんな人かと思ったよ。は〜」

 彼女はプリンカップの上にへたりこんだ。胸に手を当てている。無理もない、お年頃だもの。恐かったのだろう。

「勘弁しろよ」

 そう言うとカップに寄りかかって、下の砂場に足を投げ出した。追い駆けては来たものの、いざ彼女を目の前にするとおっかなびっくりだ。嫌われてはいないかもしれないけど自信がない。



【おもひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり】道因法師(どういんほうし)



「ほんとにびっくりした」覗き込んで言う。

「なに登ってんだよ」見上げて言う。

「逃げれるかなと」

「高鬼じゃねえんだから」顔を見合わせて笑う二人。

「ああ悔しい。走って損した」

「損とか言うか?」

「言うよ。ふつうに」

「そうか」

「帰らなきゃ」

「おう」

 向こう側に滑り下りる気配。慌てて登って佐藤さんの横にトンと飛び降りた。迂回すりゃいいじゃん。

「で、何?」

 コケル直毅。

「何って」

「何か用?」

「い、一緒に帰ろう」

「あはっ!」

「なんだよ」

「だって小学生みたい。『一緒に帰ろう』だって」

「じゃ何て言うんだ」憮然とする長男。

「さあ何て言うんでしょう。自分で考えてください」すました長女。

(言わせるか? ふつう)

「何て言うんでしょう?」佐藤さんは意地悪だった。

TAKE1「お、送っていこうか」

「違う」

TAKE2「お、送りますよ」

「違う」

TAKE3「送らせてください」 

「いやだ」

「なんなんだよもう」

「『送るよ』ちゅうて先に歩き出すんだよ」

「ハア?」

「お・く・る・よ」まだ言ってる。仕方なしに

「送るよ」

 と言って先に歩き出した。気配がないので振り向くと佐藤さんは元のところに立っている。

「ふざけんなよ」

「あはは。面白かった。さっき驚かせたお返しだよ」走って来る。

(さ、佐藤ってこんな奴?)そうだよ。

「勉強になったね」

「……」

 なった。

 そんなことも知らないでいた直毅。格好がつかなくて無愛想に

「行くぞ」

 と首を傾(かし)げると、

「ほいよ」

 と素直について来た。


<つづく>




■おもひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり/道因法師(どういんほうし)
<口語訳>
つれない人のことを思い、悩み、悲しんでいても、それでもやはり死にも しないで命はなんとかとりとめているのに、辛さに耐え切れず、流れてし まうのは涙であったよ。参考URL



高鬼(たかおに)クリック


担当編集者「さ・佐藤さんて」
つる「なに」
担 「こんななんですか」
つる「こんなって言うな。こんなって」
担 「だって」
つる「直毅が小学生みたいなこと言うから
   彼女がお姉ちゃんみたいになっちゃったんだよ」
担 「ああ、これだから」
つる「だからなんだよ」
担 「で・まだ続くんですか?コレ」
つる「うん」
担 「長いな」
つる「だって送って行くのに30分かかるんだよ。
   だったら、読むのも30分かかんだろ」
担 「拷問だ。読まされる方の身にもなってくださいよ」
つる「そうかなあ」


 今日のBGM→「白い恋人達」桑田佳祐
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ほうほう。軽快なテンポでいいすね♪さー次読んできまっす^^
レイバック
URL
2007/12/24 23:40
レイバックさん、ここにもありがとう。
突っ込まれるかと思いましたよ。
「東京ラヴストーリー」でリカがカンチについて行かないようなシーンありましたっけ。
一筋縄でいかないような子ってどうなんだろ。これで佐藤さん離れが進まないといいけど。ちょっとビビリ入ってます。
つる
2007/12/25 00:57
勉強になります。
5文字以下で1行使う書き方(笑)
タメならこんな口もきくかもなと思いつつ、
あんまり熱烈好きにも思えないですね。
銀河 系一朗
URL
2007/12/28 16:50
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
あ〜ほんとそうですね。
気持ちを伝える術を知らないんです。他愛のない話が続くことが重要みたいですね。

ひとつわかったことがありました。わたし自身が気に入った子を困らせたいタイプのようです。
つる
2007/12/29 00:02

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