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zoom RSS 「理想の高校生」EAST SIDE STORY 3

<<   作成日時 : 2007/12/19 22:30   >>

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EAST SIDE STORY 3
 配られた弁当をフェンスに寄りかかって食べていると、金網の向こうから一輪車に乗った女の子たちの一人が声を掛けてきた。

「ねえ。何してんの?」

「見りゃわかんだろう」とじゅんぺい。

「ふふっ」

「やろうか。卵焼き」

 ワアッと歓声が上がって三四人の女の子がグルッとフェンスを回ってやって来た。囲まれるじゅんぺい。彼女たちは卵焼きが欲しかったわけじゃない。

「おまえ守備範囲広いな」直毅。



「あ、いたいた。今日はどうもありがとう。これ連盟からと、あとおばちゃんたちの気持ち。クリスマスだから」

「え」「お」

「いいからいいから」

「あざーっす!」「あざーす!」遠慮なく受け取ることにした。

「うわ! 二枚入ってるし」さっそく封を覗くじゅんぺい。二千円だって嬉しい高校生。



「にーちゃーーん!」ヒカルとマモルが走って来た。直毅の守備範囲はこっち。

「おう」

「来てくれたんだ」

「おまえ言ったかよ。試合って」

「だって」

「言えよ」

「見た? オレのゴール?」

「ああ、すごかったな。マモルもうまかったじゃん」嬉しそうなマモル。

「ねえ。うちにケーキ買いに来てよ」

「?」

「佐藤んちってニッコリマートなんだって」じゅんぺい。

「あ〜」納得の直毅。「行けたらな」

「バイバイ」「さようなら」「おう」





「ニッコリマートってあんまり売れないんだってな。中澤先輩が言ってた」

「え?」

「ほらすぐそばに“SIX TWELVE”ができたじゃん。あそこにほとんど客取られちゃってるんだって」

「ふ〜ん」

「エロ本もあんまり置いてないんだってさ。それって致命傷じゃね?」

「はは」

「寄ってみようぜ。オレ買うもんあるし」

「いいよ」

 じゅんぺいは昨日のイヴにしおりちゃんと揉めた。
 ユキ姉に頼んで買ってきてもらったプレゼントが気に入らないと言うのだ。じゅんぺいに選んでほしかったと言った。彼が選んでくれたものなら例えコンビニのお菓子の詰まったクリスマス・ブーツだって構わないと泣いた。
 女子って難しい。





「いらっしゃいませえぇ。X’masケーキぁいかがですかぁ」

「本日10%(テンパー)引きで〜す。いらっしゃーせー」

 店の前の長テーブルに山積みのケーキの箱の前でX’masのコスプレの女子二人が売り込みに精を出していた。
 佐藤さんと酒井さんだ。メーカーの赤いベンチコートを着て頭のカチューシャには立派なトナカイの角がついている。 

「お、 売ってる売ってる」じゅんぺい。

「あっ! 買ってよ、伊藤君(じゅんぺい)」佐藤さん。

「そうだよ。新妻君(ニイケン)も来たんだよ。大家さんにプレゼントするって」酒井さん。

「おまえらつき合ってるからだろ」

「へへっ」

「昨日のイヴだってラブラブだったんじゃね?」自分が揉めたもんだから人のことが気になるらしい。

「今日だよ。今日X’masパーティに行くんだ。日本だけだってよ。イヴだイブだって大騒ぎするの。聖夜は今夜だよ」

「どうせ受け売りだろ、ニイケンの」

「へへ」

「だけど25日でも売れんだ。ケーキ」

「うん。いくらかはね。でもだめ。特に大きいのは毎年残るよ」佐藤さん。

 コンビニ経営もなかなか大変だ。新商品はもとよりこうした季節商品にも各店毎にノルマが課せられる。

 じゅんぺいが買物すると言って店に入った。佐藤さん、まさか面と向かって直毅には『買ってくれ』と言えないでいる。それでも、

「松本君はもう食べたの?ケーキ」頑張って言ってみた。

「いや、う、うん」

 彼は和菓子党。松本家男子全員生クリーム無理。ケーキは今年も母さんの焼いたプレーンシフォンケーキだった。

「そうだよね。もう食べちゃってるよね」

「佐藤なら売れんだろ。かわいいから」

 彼女目当てにケーキを買う人だっているだろうと素直に口にした。
 酒井さんが目をまん丸くして佐藤さんを肘で小突いた。

「顔で売れるなら苦労しないよ」

 プイっと横を向き睫毛を瞬(しばたた)かせる佐藤さん。顔、否定しない。

「ちょっとお姉さん。アイスのケーキあらへんのん?うちの子それがいい言うんやけど」パンチパーマのおばさん。

「少々お待ちください。中を見て参ります」

 店内に消えた佐藤さんと入れ違いに、じゅんぺいがクリスマス・ブーツを抱えて出て来た。直毅は彼の肩に腕をまわすと言った。

「貸せ」

「何?」

「金貸せ」

「いくら?」

「いくら持ってる?」

「に、二千円くらい?」

「じゃ全部」

 呆気に取られるじゅんぺいを尻目に特大ケーキに向き合った。

「アイス売り切れです。ごめんなさい」

「あらほんま?どないしよう。うちの子これ食べれるんかいな」

「これください」パンチパーマを差し置いて佐藤さんに言った。

 ショートケーキとはいえX’mas用のトッピングが乗ったそれは5号のホールでも三千円だ。それが9号っていうんだからいくら10%引きでも五千円近くする。

「いいよ。無理しなくて」

「いいんだ」

「いいってば」

 聞いてない。貰ったばかりの“薄謝”の封筒を逆さまに振った。じゅんぺいに借りたのとポケットの中身ありったけをバラバラとテーブルの上に乗せた。

「好きなんだ。ショートケーキ」

「プッ!」吹き出すじゅんぺい。

「いいの?」

「おう」

「ありがとう! ロウソクいっぱい入れるよ」誕生日ちゃうから。

 佐藤さんは今どきのコンビニ店員のようにお釣りを手に触れないように渡すとケーキの底を持って、

「ありがとうございました」思いっきし、つむじでお辞儀をした。

 直毅の鼻にトナカイの角が思いっきし、刺さった。



【かくとだに えやはいぶきの さしも草(ぐさ) さしも知らじな もゆる思ひを】
藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん )



<つづく>




■かくとだに えやはいぶきの さしも草(ぐさ) さしも知らじな もゆる思ひを/藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん )
<口語訳>
あなたを好きだと言うことさえ、言うことができないのだから、 ましてや、伊吹山のさしも草が燃えるように私の思いの火がこんなにも激しく燃えているとは、あなたは知らないだろう 。参考URL



 じゅんぺい優しいです。なんだかんだ言って元クラスメイトのところで買物してます。女兄弟のいる子はどことなく人当たりがソフトなんですよね。そこが守備範囲の広さに繋がる。

 今日のBGM→「All I Want For Christmas Is You」
 動画→「All I Want For Christmas Is You」

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。


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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは、つるさん。
じゅんぺいも直毅もエライなあと思いますよ。2000円だけでも大変な出費なのに、借金をしてまでも、というのが憎いですねえ。
私も高校生の時に女の子から毛糸で編んだ得体の知れぬ代物を貰って、そのお礼にぬいぐるみを買ったことがあります。(女子高生にぬいぐるみかよ、今ならKYより悪いだろなあ)。
そのぬいぐるみがやたらにデカクて商店街を背負って歩き、さらに電車に乗って帰った記憶があります。みんなに指を指されました。
「悪魔の人形だ! 」
そう、クマのぬいぐるみだったのです。
青春とはときに愚かさの代名詞となるものなんでしょうか。それとも私だけなのかな。
だっくす史人
2007/12/19 23:51
だっくす史人さん、いつもありがとう。
男って潔いお金の使い方しますよね。そのへんのところが伝わるといいな。
あら!だっくす史人さんの素敵な思い出聞かせてもらいました。お返しの「ぬいぐるみ」“あり”でしょう。「得体の知れぬ代物」で思い出したことあります。高校の頃とても変わった女子がいて彼のために手編みしたのが襟と袖のパーツだけ。それも色違いで三色。制服から見える部分だけ編んだわけです。「セーター3枚持ってるように見えるでしょう?ってアンタ!彼?大変喜んだそうです。ま・そんな彼女の彼ですから変わっていたのでしょうね。やはり。
「クマのぬいぐるみ」は喜んでもらえたのでしょうか。
今はつき合ってないとプレゼントなんてしないそうです。それも欲しいものをあげるんだそうです。なんか合理的。
あっそうそう忘れもしない19才のクリスマス。わたしケーキ売ってましたわ。約束のある人が羨ましかったです。それも青春。
つる
2007/12/20 00:53
こんばんは^^関西弁いいんじゃないすか?違和感感じなかったですよ。まぁついつい関東人の使う関西弁ノリで読んじゃいますけど、それはしょうがないでしょう(笑) >「もう食べちゃてるよね」「っ」が抜けてない?意図的やったらごめんなさい^^;
レイバック
URL
2007/12/21 00:23
レイバックさん、いつもありがとう。
関西弁大丈夫でしょうか。京都弁のようでもあります。でもOKでたのでこれでよしとします。
>「もう食べちゃてるよね」
抜けてます。抜けてます。意図的なんかじゃ全然ありませんて。丁寧に読んでくださってありがとう。助かってます。
つる
2007/12/21 02:24
そういえば25日にケーキは売れてなさそうですね。大手は一週間も前から大量生産してるんだから、味に大差はなさそうですが。
ショートのホールて買ったことないですね。
直毅すごいな。

銀河系一朗
URL
2007/12/22 20:57
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
ケーキはね。わたしが売ってた頃はバブルがはじける前でしたから遅い時間でもけっこう売れたんですよ。おじさまがオネエチャンにプレゼントしたりね。
大手はほとんどひと月もふた月も前からスポンジ台を冷凍しておくわけです。クリームを塗るときに解凍するんです。だから町のケーキ屋さんが一番信頼できます。
>ショートのホール
ほんとにいいケーキってモタレませんよ。ん?それはわたしが女だからか。
ショートケーキじゃないけど、あそこのタルトは絶品ですよ。「キルフェボン」たいていの女性なら知っています。へたな花贈るよりか、ここのホール買った方が株上がります。
HP→
http://www.quil-fait-bon.com/top/top.html
つる
2007/12/23 01:02

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