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zoom RSS 「理想の高校生」EAST SIDE STORY 1

<<   作成日時 : 2007/12/17 21:23   >>

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EAST SIDE STORY 1

「ちょっと誰か手伝いなさいよっ!」
 朝からさと子はてんてこ舞い。暮れまでパートの休みは今日しかない。年末年始はお饅頭がよく売れる。一年のうちで最も繁忙期だ。だから今日中に大掃除。網戸だって窓ガラスだってキッチンだって風呂だってなにもかもだ。カーテンの洗濯だってしたい。なんたって忙しい。
 ご主人は早朝からゴルフ。パー一号は朝帰りで爆睡中。二号はデートだと言うし、三号はバイトで、四号は頼みもしない部活だと言う。
「どいつもこいつも糞の役にも立ちゃしない!飯だけは食うんだ!ああ、そうなんだ!」
 今年の大掃除もまた一人。バカにしてる。思えば今年、家族がいて助かったことといえば固い瓶の蓋を開けてくれたことくらいだ。
「やめた!やめた!」 
 コタツに首まで潜り込むと読みかけの本を取り出した。「あ〜あ」と溜息。
「こんなとき理想のおにいちゃんがいればなあ」妄想の世界にワープする。




12月25日。

「あしびきの 山鳥(やまどり)の尾の しだり尾の ながながし夜(よ)を 一人かも寝む」プリントを読む直毅。

「あらまたずいぶんと艶(つや)っぽい歌だこと」母さん。

「宿題なんだよ。冬休みの」

「ああカルタ大会の」
  
「そうだよ」

「母さんの頃は小学校で覚えたもんだわ」

「いつの話だよ。あ、オレ昼から出掛ける」

「あらそ」

「じゅんぺいと旗振ってくるわ」

「またクレープス?」

「そう」

「ほんとに反町(そりまち)コーチには頭が下がるわ〜お子さんはすっかり大きくなったというのに」 

「なんかすることあんの?」大掃除のことだ。

「いいよいいよ。出かけるのに。それよりおにいちゃん。あのね」

「なんだよ」

「あんた巻主(まきぬし)君て知ってる?」

「中学ン時の?」

「そう」
 
「なんで?」

「この前のバイクの事件に絡んでるらしいの」

「二ケツで捕まった時の?」

「盗難車だったって知ってるよね。その子の仕業らしいんだ」
  
「それで?」

「うん。会ったら直人のこと、もう誘わないように言ってもらえない?」

「そんなの直人に『つき合うな』って言えば済むことだろ」 

「そうなんだけど。そうね、心配かけちゃったね。いいわいいわ。あっ、やっぱ高いところだけ頼もうかな」

「なんなんだよ」

 いいよと言っておいてやはり頼むと言う親の矛盾。キッチンの吊戸棚の中と照明器具のカバーを引き受けた。

 それにしても直人はいったいどうしたというのだろう。連日の遅い帰宅。以前にも増して反抗的な態度。もともと枠に、はまらないような性格ではある。
 彼は少し血の気の多い父と、そして美人だが片付けられない女だったという亡き実母の、悪いところばかりを受け継いだような子どもだった。

 育ての母とはいえ母さんは心労が尽きない。家族の前では明るく振舞ってはいるが、ここのところ溜息が増えた。





 久しぶりに青いブリッジを越えた。

 ナンジャラタウンの東に広がる埋立地。災害時の緊急避難先に指定されている大きな緑地公園内にスポーツ施設が点在している。
 サッカー場ではS区の少年サッカー連盟主催のクリスマス・カップが開かれていた。
 もちろんグラウンドは芝なんかじゃない。けれども小学生用の正規サイズにラインが引かれた二面は、ふだんの狭い校庭の練習とは桁違いの広さだ。

「おまえ髪切った?」じゅんぺい。

「ハゲとか言うなよ」
  
「言うか。ガキじゃあるまいし。いいじゃん」

「へへ。久しぶりだな、グラウンド。ちいせ〜」

 昨日カットが上手いと評判の美容室に行ったばかりだ。“花よりメガネ男子”新年合併1・2号の割引券でベリーショートになった直毅。頭がスースーする。
 スースーするのはそればかりではなかった。埋立地は風が強い。じゅんぺいと二人部活のアルミジャージのファスナーを思い切り上まで上げて風よけ対策をする。
 今日はサッカーだが、直毅はメガネだった。こんな日にコンタクトだとゴミが入って審判どころじゃない。


 
「こっちよ〜まあまあま二人ともいつもごめんなさいね〜」

 タケのお母さん。同級生だったタケの“妹”が今年“シャーシャークレープス”の6年生だ。男子に交じって頑張っている。だからお母さんもクレープスの代表として、試合の度に世話役を引き受けている。
 クレープスのOBでもある二人は、時々こうして頼まれては旗を振りに来るのだ。

「こんちは〜」「ちわ〜」

「若い人は予定もあるでしょうに、悪いね〜あら!また大きくなったんじゃない?」毎回同じ話。
 
「タケ元気ですか?」

「相変わらずこっちに夢中よ」とバイクのハンドルを握るマネをする。

「ははは」「あはは」

「今日はよろしくね」

「よろしくお願いしまーす」「まーす」
 
「B面のクレープスの試合が終わったら干潮シーガルス対大波ブラックタイガースだから。その試合の副審ね。これ旗。それで、その干潮シーガルスなんだけど」

「シーガルスが何かしたんすか」じゅんぺい。

「うん。今年の保護者がちょっとマナーが悪いのよね。けっこう連盟でも話題になってるんだけど。なんか言われてもあんまり気にしないようにして」

「わかりました」直毅。




「ほんとにわかってんのかよ」

 本部テントに行こうとゴール裏を通った時にじゅんぺいが言った。

「なんだよ」

「なんでもねえよ」

 じゅんぺいはちょっと心配したのだ。ふだんボケっとしてる直毅だが一二年に一度くらいの割でドカンと臨界を越えることがある。
 直人のことは言えない。それも血だ。そしてそれは上から目線の物言いだったりする。
 この前古典の教師にムッとしたのだってそうだ。そこに理屈がなかったりするとなおさらだ。
 じゅんぺいの記憶が正しければ、前回のドカンは中学の卒業式だった。とうに潜伏期間は過ぎている。

 そういう意味では、じゅんぺいの方がずっと穏便派かもしれなかった。ふだん母ちゃんと姉ちゃんに鍛えられているからね。収める術を知っている。

「あっ!」直毅。

「ドシタ?」

「ウンコ踏んだ」

「バカ〜」


<つづく>



■あしびきの 山鳥(やまどり)の尾の しだり尾の ながながし夜(よ)を 一人かも寝む / 柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ )
<口語訳>
夜はおすとめすが、谷を隔てて離れ離れに寝るという山鳥・・・。その山鳥の長く垂れ下がった尾のように長い長い夜を、この私もまた、あなたと離れて一人さびしく寝るのだろうか。私は片時もあなたと離れずにいたいと思うのに・・・。参考
URL



 
 何故に百人一首?とか言うなよ。さすがオバチャンとかも言うなよ。いいんです。いいんです。佐藤さんが百人一首同好会なんです。それにカルタ会を実際にやってる中学もありますしね。
 少しずつ句を紹介していきたいと思います。きっとご存知の句ばかりでしょう。

 今日のBGM→クリックLast Christmas

 年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。




↓好きな句はあれです、あれ。アレ?思い出せない。更年期かな?
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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ラスト・クリスマス。昨年のXmasは大変でした。ノロウィルスにやられてへろへろになっているところへ、腎臓の結石が動き出しまして七転八倒。一年分の罪の報いが一度に利息をつけて払い戻されてしまったのです。
さて、踏んだものが×んこだけに、今後の展開は、いやあな匂いをプンプンさせているようです。なんか心配。
ひさかたの 光のどけき 春の日は かたき×んこも 溶けて薫らん。史人麻呂
だっくす史人
2007/12/17 22:56
おお。ラスト・クリスマスが昨年の悪夢を思い出させてしまったのですね。選曲ミスです。だっくす史人さん、いつもありがとう。今年はいいことがたくさんのX’masだといいですね。
今回はね。xんこ2回でてきますよ。お食事中の方ごめんなさいよ。小学生が絡むとね。どうしても外せないアイテムです。
ちょっと急がないとX’masに間に合わないので今週は毎日の更新です。誤字脱字よろしくです。
つる
2007/12/18 01:41
ちょっと読みにくかったです。書き急いでる??つるさんは会話文のセンスがあるのに(読書感想文は抜群)何度も挿入される説明で途切れちゃうんですよ。流れが。説明文と言うのは悪く言っちゃうと手抜きなんで。そこをいかに描写で見せるかが勝負だと思うんですよ。何度も説明文が入ると粗筋を読まされてる気分になります^^;
レイバック
URL
2007/12/19 01:28
レイバックさん、いつもありがとう。
読みにくかった?
会話が途切れる。なるほど。
説明はいらなくて描写でみせる。わかった。
手直ししてみるね。
やっぱ自分で書いた文章はかわいくて、なかなか客観的に見ることができません。助かるわ。
このシリーズ長いのよ。これで最後だからね。これ以上ネタもないし。途中少し回り道に見えるかもしれないけど必ず収束には向かって行く筈なのでこの後も宜しくです。
つる
2007/12/19 09:05
百人一首なつかしいですね。
最初の三、四字くらいで取るのは、落ち着きがない、趣がないで、いけません。
下の句も最後まで読まれた後に、お手つきをする。これが醍醐味でしょう(笑)
終わったら、坊主めくりで負けを取り返すチャンスをあげるのも忘れてはなりませぬ(笑)
銀河系一朗
URL
2007/12/20 17:27
銀河系一朗さん、いつもありがとう。
>下の句も最後まで読まれた後に、お手つきをする。これが醍醐味でしょう(笑)
うすうす感じてはいたのですが一朗さんやっぱり少し変わってる。
じつはわたしもよくそう言われてたりするけど敵わないかもです。
百人一首って決して古くさいものではないですよね。何気にやりますよ。うち。もっぱら坊主めくりですけど。しかも覚える気0
恋の句が多いので使わせてもらってます。クリスマスまでにロマンチックなところまで持っていけるといいんだけど。なにしろ百人一首ですからねえ。カルタでロマンチックもないだろと突っ込まれそうです。

つる
2007/12/20 21:50

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