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zoom RSS 「理想の高校生」INTERBAL 4/サイドアタック

<<   作成日時 : 2007/11/17 21:05   >>

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photo by sports navi



サイドアタック

 夕練の時のことだ。

 紅白試合に見立てたセットプレイ中に、じゅんぺいのシュートがサイドバーにはじかれた。
 
 その途端、ハーフラインにいた中澤先輩が猛ダッシュした。振り向いたじゅんぺいに、まるでコーナーからのセンタリングをヘディングで押し込むように突っ込んだ。ネットまで吹っ飛ぶじゅんぺい。馬乗りになろうとする先輩の腹に、仰向けで両足を蹴り出す。後ろにのけ反る先輩。その間に身をねじって体を起こそうとした。その背後から又飛びかかった先輩が、あとはもうボコボコに殴り続ける。

 グラウンドの誰もが呆気に取られた。回りの部員が慌てて駆け寄る。

「やめろっ! 中澤っ!」

「なかざわっ!」

「やめろっっ!」「やめろって!」

「じゅんぺいっ!」「伊藤っ!」「やめろ!」

『やめろ』と言われて、止むもんじゃない。グラウンドから集まってくる部員。何人かが2人を引き離す。ジタバタと足が空回りしている2人。

 中澤先輩は相変わらずのじゅんぺいのプレイにキレた。じゅんぺいはじゅんぺいで必死にやってた。それだけだ。

「なんだよっ! ふざけんなっ!」じゅんぺい。

「おまえこそふざけんなっ! 言ってんのがわかんないのかっ!」

 監督とコーチが慌てて走ってくる。

「やめろっ中澤! 伊藤もやめないか!」

 聞いてない。

「口で言え、口で! バカ!」

「言ってわかんないからだろっ! このばかっ!」

「バカはそっちだろ! バカっ!」

「おまえがばかだっ! ばーか!」

 監督は間に入って大声を張る。

「よせっ! いい加減にしろっ!」

 まるで小学生のケンカ。仲間に取り押さえられたまま2人は監督に事情を聞かれ、グラウンドはそのまま長〜いミーティングルームと化した。





 ミーティングという名の監督のメンタルトレーニング? いやお小言。ここまできて今更練習でもないだろう。ヘンな話、個人レベルのメンタル強化よりも“チームのメンタル”(そうは言わない)に重点を置いた方が賢明かもしれない。何故なら2人が揉めたことでチームの気持ちはバラバラになった。
 監督の話は続く。

 その最中に、二イケンは考えていた。
 今日観戦したラッキョウ高校の試合は、完全なプレッシング・サッカーだった。
 前半に高い位置で3−0と相手を突き放すと、後半は低い位置で守備に徹した。その沈黙は相手に恐怖を与えただろう。こじ開けられないゴール前。底知れない力を秘めたチーム。そんな印象だった。
 地方予選から勝ち抜いてきたナンジャラホイ高校。どんな試合も完全燃焼してきた。例え失点もなく有利に進めた試合でも手を抜くことはなく最後まで攻め続けた。それが相手チームに敬意を表することだと思っている。
 ラッキョウ高校はシード校。1次トーナメントからここまでナンジャラに比べて、試合数も3つ少ない。まだまだ余力がある。屈強そうなラッキョウイレブンが浮かぶ。
 あのチーム相手に今のナンジャラの連携でやっていけるのか、それを考えている。

 監督の話は終わった。誰もが小さな引っ掛かりを感じている。





「2年、残ろうぜ」

 帰り支度のロッカールームでニイケンが言った。彼は2年の責任者だ。今日の反省会のつもりだった。
 2年生のサッカー部員は22名。入学当初はこの倍もいたけれど、この1年で半分になった。皆、苦楽を共にした仲間だ。
 思い思いに狭い部室のあちこちに場所を取る。壁に寄りかかる者。机に腰掛ける者。床に足を投げ出す者。ニイケンが口火を切った。

「今日のこと、どう思うか聞かせてくれないか?」

「ありゃ先輩が悪いだろ」 

「オレもそう思う」「オレも」「おれも」

「手を出さなくってもいいんじゃね?」「ホント。ホント」

「それにじゅんぺいは実際、点取ってるし」「そうだ。そうだ」

「入れたモン勝ち。言われたかねぇ〜」

 黙っているじゅんぺい。皆、じゅんぺいの手前、彼を擁護(ようご)する。
 DFの加藤君が言った。

「手ぇ出すのはどうかと思うけど、センパイの言ってることってまともじゃね? 言いたくないけど、じゅんぺいも悪いよ」

 彼は2年生の中でニイケン・じゅんぺい・直毅と共にベンチ入りしている選手だ。試合後のロッカールームの出来事も知っている。次の試合は直毅の代わりに出場する。

「伊藤の悪いとこってどこだよ」「そうだよ」「言えよ」

「やっぱサッカーって、ある程度システムが機能してないとだめだと思うんだ」

「何だよ。それ。結局、点だろ」「そうだよ。1点は1点」「ゴールだよ。ゴール!」

「そうなんだけどさ。じゃ監督のやってることは何なんだ? 決まるか決まらないかわからないサッカーを肯定するのか?」

「決まらないとは限らないだろう」「そうだ、そうだ」「決めればいいんだろ。ゴールをよ。決めれば」

「そういうのアリかよ」

「そうだよ」「もう何でもよくねぇ? メンドイよ。こういうの」

 なんだか収支がつかない。

「じゅんぺいも何か言えよ」誰かが言った。

「オレはいいよ」

 ふてくされている。口の中を切ったんだろう。喋るのも億劫そうだ。口角に血が滲(にじ)む。

「二イケンはどうなんだ。言ってくれよ」

 直毅が言った。ニイケンがどう思ってるかなんて、わかっていた。だけど皆の前で言って欲しかった。言って皆で確認したかった。

 二イケンはいつも聞き役だ。あまり自分の意見を言わない。受け留めるだけだ。だがそれが皆の信頼を得たようで、たびたび愚痴や相談を持ちかけられるようになった。
 そんな彼を見て、監督は2年の責任者に彼を指名したのだ。

 しばらくどうしようかというふうに皆を見ていた彼が、おもむろに口を開いた。

「俺はみんなより1コ上だ」

 しん、とした。いきなり何を言いだすんだろうという空気。皆知ってることだ。

「本当だったら来年は今の3年と同じで出れない。

 だけど今2年で、来年もここにいるみんなと出れる。

 それがすごく嬉しいんだ」

 ああ、改めて彼が1コ上なんだ、とじゅんぺいと直毅は思った。この2人だけは皆と少し違っていた。そのことを、つい忘れてしまうからだ。だからニイケンも、この2人とは気兼ねなく付き合える。

「俺、思うんだ。

 誰がいけないとかいけなくないとか。

 みんな欠点を持ってる。

 肝心なのは、

 来年の俺らがどんな2年となら、やっていきたいか。

 それだけだって思う」

 皆、もう何も言わなかった。じゅんぺいも所在無げにスパイクの紐をいじっている。

「オケーイ(OK)。解散だな」

 沈黙を破って加藤君がそう言うと、部員たちはガタガタと帰り支度を始めた。




<つづく>




 題名の「サイドアタック」。何なの? と、お思いでしょう。
 中澤先輩が「再度アタック」してきたってことで……。ええ。ええ。ダジャレです。くだらないです。ほんとすみません。

 ニイケンのセリフの「出れる」「出れない」→「出ることができる」「出ることができない」です。マチガットルと重重承知しております。若い子の口語ですし、流れが悪くなるので敢(あ)えて使っちゃいます。そのうちこの言葉も口語として市民権を得てしまうかもしれませんね。
 口数の少ない彼。そういえば、こんな作文書いてましたっけ。
→今日はハイスタ気分。『CLOSE TO ME / Hi-STANDARD』
 
年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。


サイドアタックタッチライン側のスペースを使って攻撃する戦術。主としてサイドバックやウィングバックが走り込むことが多い。「オープン攻撃」とも言う。
タッチラインフィールドの長い方の端のライン。
センタリング(センターリング)相手陣地のタッチライン付近から中央のゴール前にいる味方プレーヤーに出すパス。
以上参考URL
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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
サッカーってシンプルなようで
戦術面で色々複雑なんですかね。
上下関係もなかなか難しいなぁ、
僕らが見てた限り、サッカー部は
縦関係が厳しくない雰囲気でしたが。
(悪く言うとなぁなぁ?)
関係ないですがラグビー部の時は、
FWとBKが仲悪くてねぇ。
試合中に味方でケンカしたりして、
困ったもんでした(笑)

>じゅんぺいの「ゴール」
は「ボール」or「シュート」
or「ヘディング」?
他の意図があるのかな??

レイバック
URL
2007/11/18 00:58
うんうん、レイバックさんはするどいなあ、ホント。
>ゴール。よか、シュートがいいかも。
なんて、今晩はのコンコン。
風邪をひいちゃいました。ポチだけして帰りまああす。また、来ます。風邪治してから。
だっくす史人
2007/11/18 01:13
レイバックさん。
きゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!!!!!!
て・て・て・訂正です。何人見た?何人見た?え?7人?ほとんどじゃん!くゎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
ちょっと行って来ます。待っててね。
つる
2007/11/18 01:24
レイバックさん。
只今戻りました。どうもありがとう。どうやら西が丘から調子に乗ったまま帰って来たようです。

ところでサッカー部がなぁなぁ?ホントですか?ピッチ上で喧嘩腰で怒鳴り合ってるとか聞いたものですから。でもラグビー部もそうなんだ。だいたい格闘系に気が荒くない奴なんているか?って思います。ベッカムだって顰蹙買う様な事してましたもんね。若かりし頃は。

レイバックさんからいただいたお題で楽しく執筆中。キーワードに「サッカー」なんて無粋なことを言ってしまって大いに後悔。みんな困ってるだろうなあ。どうして「雲」とか「海」とか「ラジオ」とか想像力を膨らませるような事が言えなかったのかしらん。だめだなぁ。
つる
2007/11/18 01:44
だっくす史人さん。
わたしも鼻水でます。こういう時って閃きませんよね。
だから昨日そちらに伺った時も気の利いたコメントが残せませんでした。
それからポチありがとうございます。
わたしも毎日0時にリンク先の皆さんへのポチを忘れないように心がけています。お大事に。
つる
2007/11/18 01:51
スポーツに上下関係はつきものですよね〜。だからこそ運動部出身の人間は会社でも割と上司に気に入られたり・・。オシム監督大丈夫かな・・・;;
小屋
2007/11/18 02:20
小屋たん。来てくれたのですね。ありがとう。
ナシテ運動部?とわたしもいつも思いますよ。根性に関して保障書が付いてるみたいな感覚なんでしょうね。わかりやすいものね。
でも入社試験ほど3年くらいかけてやってほしいですよ。その人となりを見て欲しいって意味で。だってわたしのOL時代、東大卒の鳴物入りで入社した男性が社員の旅行積立金百万使い込んで辞めていきました。ははっ!実にくだらない。

オ・オシム監督に気づいてくださってありがとう。心配です。
今オリンピック世代(U−23)の日本代表が面白いよ。役者が揃ってる感じ。しかし変わったなあ。昔と比べて。いろんな意味で。(独り言です。)
つる
2007/11/18 02:41
すごいですね、ニイケンの台詞、ちょっと感動ものだった。
普通あんなうまいこと言えないすよ。
じゅんぺいを傷つけることなく、気付かせ引っ張ってやる。すごいです。

出れるはもう市民権だと思いますね。
言葉は生き物ですから。
銀河系一朗
URL
2007/12/06 00:12
あ・嬉しいな。銀河系一朗さん、こんばんは。
ニイケンのセリフにそう言っていただけて素直に嬉しい。なんたらかんたら喋らせてもよかったんだけど、実際の男子は短いですね。言葉が。だから効果的な言葉を考えました。考えるサッカーをする子たちだからダイレクトな言葉よりずっと心に響くと思いますよ。
>市民権
得てる?ほんと?大丈夫かしら。
子供たちに伝えていく役割を背負ったわたしたち世代は、遅れていると言われても、敢えて使わないでいようと決めていたのですが口語となるとそうもいかない。援護射撃いただけてよかったです。
つる
2007/12/06 00:27

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