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zoom RSS 「理想の高校生」INTERBAL 2/スピッティング

<<   作成日時 : 2007/11/11 20:32   >>

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photo by sports navi
スピッティング
【サッカーはボールを媒体とした格闘技である。】(元清水東高校サッカー部顧問勝沢要) 


 準々決勝の当日。駒沢陸上競技場の天気は晴れ。
 
 対戦相手はドウシタノ高校。ラッキョウ高校と並んで、このブロックの注目株。一度練習試合をしたことがある。
 ナンジャラホイ高校の過去最高成績は都大会でのBEST8。だがそれも十年も前の話だ。常勝チームではない。昨年は一次トーナメントで敗退。練習試合の経験も私立の強豪校に比べてずっと少なかった。ところが今年はどうだ。一次トーナメントから勝ち上がる度に、いろんなチームからオファーが来た。実力が同等もしくはそれ以上。 ドウシタノ高校もそんなチームの一つだ。練習試合とはいえ、なかなか手強いチームだった。
 自チームの紅白戦では、たかが知れている。練習試合に恵まれなかったナンジャラも、こうした試合で力を付けてきた。そして実戦が彼らに自信と度胸を植え付けた。それは相手チームも同じだろう。だが、ナンジャラは今、追い風に乗っている。

 いよいよ試合が始まる。ベンチ入り20名。ベンチ以外の部員は全員立ったままスタンド観戦。ありったけの声援を送る。
 ナンジャラのスタンドは、関係者か知ってるクラスメイト程度の疎(まば)らな応援だ。誰もが、まさかナンジャライレブンがここまでくると予想もしなかった。あれよあれよと言う間に勝ち上がるものだから学校側の応援の手配も後手に回った。いつもなら応援に駆り出される吹奏楽部も大きな公演を控えてそれどころじゃなかった。

 ナンジャライレブンは円陣を組んで気合を入れる。トンとスパイクの底で芝を打つと全力疾走でポジションについた。

 ピーッと笛が鳴ってkick off。
 はじめはナンジャラホイ高校のボール。序盤こそ探り合いだったが、中盤にかけて激しいボールの奪い合いになった。ドウシタノ高校は細かいパスを繋ぐタイプ。ナンジャラと同じだ。似たタイプは、やりにくいものだ。互いに手の内が知れている。
 パスを巡ってインターセプトが続く。なかなかゲームは動かない。
 それでも前半の21分。FW柏木先輩がMFの遠藤先輩からのパスを腿でトラップすると、絶妙のコントロールで相手DFを振り切った。角度のないところから打たれた球は、ぐうぅんと緩い弧を描いてサイドネットに突き刺さった。先制点に湧くナンジャラホイ高校。1-0。

 先制点を上げて少なからず相手にプレッシャーを与えたものの、相手のドウシタノ高校はベスト8に顔を出す常連校だ。
 決してナンジャラも油断したわけではないだろう。だが前半24分。カットされた球を一気にゴール前に運ばれ、クリアとカバーに入った中澤先輩とニイケンが振り切られて、ゴール右隅に決められた。1-1。

「ぁんだよっっ!」

 自分のクリアミスにスパイクを蹴り上げる中澤先輩。余程自分に腹が立ったのだろう。
 ガムを噛む先輩だ。集中力が高まるというガム。いくら監督が言っても聞かない。いつしか、そのプレイで監督のみならず、部員全員に無言でそれを認めさせた。いつもクールなプレイをする彼にしては珍しい。キャプテンのGK楢崎先輩が「次っ!あがれーっ!」と声を掛ける。左腕のキャプテンマークが迅速な切り替えを手短に指示する。そう。ミスを振り返る暇なんてない。
守りきって1-1で前半終了。

 インターバルの10分。監督のゲキが飛ぶ。

「ゾーンの確認!中盤の連係!状況に応じた緩急!ワンタッチのパス!頭を使ったサッカー!」そんなにいろいろできるかてーの。

 後半は序盤からいきなりボールを巡っての攻防が続く。ボールを奪っても足元を狙ってくるので思うように前にボールが運べない。思い通りの形にさせてくれない。チャンスを伺うナンジャラ。時間ばかりが過ぎていく。
 後半の25分。ドウシタノの大きく放った右へのクロスに飛びだした相手FW。オフサイドなし。ゴール前あわやというところで直毅がスライディング。大げさにニ回転して倒れた相手。直毅にイェローカードが出され、相手の直接FK。ナンジャラ壁4枚。楢崎先輩の指示が飛ぶ。相手の放ったボールはクロスバーをかすめてゴールラインを割った。助かった!例えFKが決まったとしても直毅のチャージがなければ、あそこで得点されていたところだ。
だが、前試合とのイェロー累積2枚で直毅は次の試合は欠場が決定。

 この間にドウシタノで二人の選手が入れ替わる。ナンジャラも一人の選手交替。その選手からピッチ上へ、ベンチの指示が伝えられる。
 残り時間は少ない。

 あわや延長かと思われた後半ロスタイム。ハーフラインで奪ったボールを、中村先輩が右へ大きくサイドチェンジ。受け取ったじゅんぺいが相手DF一人かわしてゴール前に切り込んだ。左側から詰めるナンジャラMF二人。じゅんぺいは張り付いたマーク二人にシャツを掴まれる。振り抜いた右足。ゴール前に立ちはだかる相手DFと味方の僅かな隙をすり抜けるボール。GKの肩をかすめたそれは、スパッとゴール左隅のネットを持ち上げた。2-1。そのままホイッスル。BEST4進出。
 よほど嬉しかったのだろう。じゅんぺいは腕を水平にしたまま自陣に走り戻ってくる。駆け寄るナンジャライレブン。皆もう顔がくしゃくしゃだ。




 喜びに湧くロッカールーム。監督が手綱を引き締める。

「おまえらに今日の勝利に酔う暇はない。次の試合に向けて気持ちを切り替えろ。ラッキョウ高校の試合観戦の後、グラウンド16時集合。軽めの練習。以上、解散!」

 簡単に言い終えると連盟に呼ばれているとかでアタフタとコーチと共に部屋を出て行った。彼も人間だ。初のベスト4進出の喜びが勝(まさ)ったのだろう。肝心のことを言い忘れた。

 監督のいなくなったローッカールームでワッと嬉しさを隠しきれない部員たち。盛り上がる。
 レギュラーとはいえ、ニ年生は三年生に僅かだが遠慮がある。たかが一学年されど一学年。いつもなら控えめな筈なのに、この日のじゅんぺいは違っていた。決勝点をあげて気持ちが高ぶっていたのだろう。少し調子に乗っていたかもしれない。同じニ年生に

「すげェな。」と言われて

「オイラも“もちすぎ”と思ったんよ。でも男なら勝負って。で突っ込んでったら刺さってたし〜」

 知らず知らず大きな声を出していた。

「伊藤っ!」

 中澤先輩が言った。皆振り返った。

「おまえ左に柏木と本田がフリーだったの見えなかったのか!」

 空気が止まった。黙るじゅんぺい。

 柏木先輩と本田先輩はゴール前に詰めていた。それは繰り返し繰り返し監督に言われていること。点が決まったからいいようなものの確実にゴールを狙うとしたら、やはりあそこはパスを出すのがセオリー通りの攻撃だ。点は取れたとしても、じゅんぺいに一言釘を刺すべきだった。それを監督は忘れた。
 チーム内の小さな不満も監督が口にすれば、皆の気持に収支がつくものだ。例え一人の選手に恨まれたとしても、チーム全体を考えれば、それが監督の役割でもある。

 三年生は今年で最後。試合は賭けじゃない。確実に狙えるゴールで駒を進めていきたかった。冬の選手権は三年間の集大成。ニ年生とはモチベーションが違う。じゅんぺいにはそれがわからない。彼は気持ちが収まらなかったのだろう。

「点は取りました。」質問に答えてない。

「やめろ!じゅんぺい!」

 ニイケンが言った。直毅もじゅんぺいを諌(いさ)めるかのように彼の前に体を入れた。

 今の三年が入部したての頃まとまらなかったのは、中澤先輩を筆頭に何人かの鼻っ柱の強い選手がいたからだ。監督がその度に彼らを戒(いまし)めたけれど、最後まで彼には手こずった。だが彼も変わった。それでも最終学年の最後の選手権。悔いは残たくなかった。国立が狙えるところまで来て、それを棒に振るかもしれない個人プレイが許せるほど、彼はまだ器が大きくなかった。

「なんだよ!もういっぺん言ってみろっ!」

「よせっ!中澤!」

「よせっ!」

「やめろっ!」

 三年生が中澤先輩の体を抑える。今にもじゅんぺいに飛び掛からんばかりだったからだ。

 凍りついたロッカールーム。

 ベッと中澤先輩がガムを吐き出した。じゅんぺいから視線を外すと乱暴に着替えをバッグに放り込み、出て行った。
 残された部員たちも先程の喜びはどこへやら、ラッキョウ高校の試合観戦の為にゆるゆると帰り支度を始めた。<つづく>





 とほほ。ギャグかます余裕なかったです。それがウリなのに・・・
ところで、実際の高校生部員はガム噛んでないっす。お話ちゅうことで突っ込みは勘弁してください。日本代表の中澤佑ニ選手は噛んでますけどね。題名はつまり中澤先輩がピッチ外で唾を吐いたということでつけました。
 それはそうとニ年と三年の、というよりじゅんぺいと中澤先輩の軋轢(あつれき)には困ったモンです。どうしましょ。それに、おにいちゃん(直毅)は次の試合出られません。何考えているんだ、わたし。
 ところでじゅんぺいのゴール。どんなだったんでしょう。わたしの考える理想のゴールはトントントンとダイレクトパスで相手を翻弄してズバン!です。何言ってんだか。滋賀県立野洲(やす)高校の素晴らしいゴールシーンです。お時間ありましたらご覧下さい。
 
 試合中のナンジャライレブンの心はこんな曲に満ち溢れていたと思いますよ。
動画→夢を信じて」徳永英明


年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。



スピッティング 相手プレーヤーにつばを吐きかける反則。直接フリーキックが相手に与えられる。
MF(ミッドフィルダー) フォワードとディフェンダーの中間のポジション。両ポジションのつなぎ役で攻撃と守備の両方に関わるハーフ。
GK(ゴールキーパー) ゴールを守る役目のプレーヤー。自陣のペナルティエリア内では、ボールを手で扱うことができる。
トラップ トラッピング。転がってきたり、飛んできたボールを止めてコントロールすること。
インターセプト パスをしている相手のボールを奪うこと。カットとも言う。
オフサイド 「オフサイドの反則」は、いわゆる待ち伏せ行為を禁止するルールで、相手サイドでパスを受けるプレーヤーより前に、相手チームのプレーヤーが2人以上いなければならない。
クリア 危険な味方ゴール前のボールを、タッチラインの外などの安全な地域に蹴り出すこと。
カバー 味方プレーヤーが相手プレーヤーのボールを奪うためにチャージやタックルをする時に、こぼれ球を奪ったり、抜かれた場合に備えること。
スライディング 上体を倒した状態で体を投げ出し片脚を伸ばしてタックルすること。 
イェローカード 主審が試合中に「警告」を示すための黄色いカード。危険なプレーや反スポーツ的行為をしたと判断される反則に対して使われる。
直接FK(フリーキック) 反則を受けた側が得られる妨害なしのキック。反則の種類によって直接フリーキックと間接フリーキックがある。
サイドチェンジ 相手ゴールに向かってボールのあるサイドから逆側のサイドにロングパスを送ること。
ゾーン(ゾーンディフェンス) それぞれのディフェンダーが守る範囲(ゾーン)を決めておく守備の方法。「マンツーマン・ディフェンス」の対語。
クロス フィールドの左右の中盤からゴール前やペナルティエリア内を狙ってロングキックをすること。フィールドを斜めに横切る(クロスする)センターリング。
クロスバー ゴールを作っている3本の柱のうち地面と平行な棒。
ロスタイム 試合中、ケガの処置や交代などに費やすに時間は主審が時計を止め、掲示板などにある時計がタイムアウトになっても、主審の時計がタイムアウトになるまで試合が続行される間の時間。
もちすぎ ドリブルなどでボールを保持しすぎ、シュートやパスの機会を失うこと。
フリー 相手プレーヤーが接近していない状態。相手プレーヤーにマークされていない状態。以上参考URL

オファークリック 
モチベーションクリック
決勝点クリック
 FKの際に相手のボールのコースを阻むため自陣のゴール前に立つプレーヤーのこと。
チャージ 反則

 

↓「サッカー無理!」ええ。それでも世界一薄いルールブックと言われるくらい、わかりやすいルールだそうですよ。へえ!へえ!へえ!
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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
細部にこだわった描写ナイス!
サッカーって単純なのに、
観る者を熱狂させますよねー。
プレイヤーも楽しいだろうなぁ。
一コ上の先輩との関係は
ややこしいですからね(笑)
次回が楽しみです。
レイバック
URL
2007/11/12 01:24
image naviにはビックリしました。また「お気に入り」です。
こんばんは、つるさん。今回はギャグが少なかったですね。でも試合の臨場感はよく出ていたと思います。この記事を作り上げるのには時間がかかったでしょうね。お疲れ様でした。
高校生のサッカーがこんなにレベルが高いとはわたくし知りませんでした。
ノス高校の試合、すげ。バックの絢香もえかったなあ。徳永もいいけど綾香も好きです、おじさんは。
ドシタノ ラッキョウ コメントにナカミないのは ナンジャラホイ。
お赦しを。
だっくす史人
2007/11/12 01:26
ノスじゃなくて、ヤスだったかいなあ。たぶん。おせえてね。
だっくす史人
2007/11/12 01:33
レイバックさん、いつもありがとう。
必死で書きました。試合中の描写、今読んだら肩に力はいってガチガチですね。笑えます。
>一コ上
そう、子どもがよくそう言います。一学年て言わないんですよねぇ今は。直そうかなあ。どうしよう。思案中。
なぜか2コ上はよくて一コ上って目の上のタンコブなんです。向こうもそうなんでしょうが。近いとだめなんでしょうね。「目くそ鼻くそを笑う」ってとこでしょうか。
つる
2007/11/12 02:26
ヤス高校です、だっくす史人さん。いつもありがとう。
そしてギャグなしで申し訳!(ナイナイの岡村風に)
記事は3日張り付いてがんばりましたよ。目で見たものを忠実に文にするのがこれほど難しいとは。作り話は楽です。スポーツライターの方はすごいなあと思いました。事実だけでなく、そこに感動を乗せるんですもんね。
高校生のサッカーのレベル高いですね。でもリフティングが上手いからってサッカー上手いわけじゃないのが不思議。あとボール持ってるのに持ってない選手より速く走れるのが不思議。ウンチ(運動音痴←家族曰く)なわたしには、わからなくて不思議なことばかりですよ。
綾香さんは声がいいですね。
つる
2007/11/12 02:42
すやすややすんでおればイイのにまた来ちゃいました。やはりやすでやすね。やーすまぬことしました。(何しに来たんじゃ! )。
ほんと、ボールを持ってるのに周りより速いのは不思議です。乳母車を押しているお母さんが私より速いのと同じかなあ。(ちがう、おめえがおせえのよ)。
おっ?  >ボールを持ってる? ハンドじゃね? キーパーか?
日本語は面白い。失礼しました。
だっくす史人
2007/11/12 03:00
だっくす史人さん
コンチヤース(こんにちは)!風邪をひきヤスい季節ですね。ヤスい肉でつくったハヤスライスでも食って寝ヤス。くヤスぃけれど、ダジャレでは負けね。おっと麦茶を冷ヤスのを忘れていたわ。
・・・
う〜んむずかしい。やっぱだっくすさんはすごいね。

>ボールを持ってる
ほんとだ!ハンドだ!言われるまで全然気がつかなかった。不思議。
つる
2007/11/13 01:18
臨場感ありました。よかったです。
最後の勝ったのに、中澤先輩とじゅんぺいがケンカしそうになるところは、リアル感びしびしありますね。
よくワールドカップ(予選含め)で一戦ごとに強くなると言うけど、日本代表もそうなってほしい。そのためにはオシム監督のままでもいいと思いますよ。不在だからこそ、考えるサッカーになる。
銀河系一朗
URL
2007/12/04 00:46
銀河系一朗さん。いつもありがとう。
この喧嘩ね。今の子は優しいからあんまりしないみたいだけど、あるところにはあるんだろうね。どうやって収束するんだろうね。それとも収束なんて考えずに始めちゃうのか。我慢できる子は実は強いのかそれとも弱いのか。人によって様々だから悩みますよ。なるべく嘘にならないように事実にかすりながら書いてます。
>オシム監督
不在が良い方向に行けばいいですね。
一戦毎に強くなる。これ小学生見てて思いましたよ。昨日と今日で全然違います。崩れるのも早いけど。はは。
監督と言えば裏話であったけれど、トルシェの時なんてピッチに出た選手はもう言うこと聞いてなかったようなところあったらしいですね。
なんか小気味いいじゃないですか。人にやらされてないってところに武士道を感じます。
そんなサッカー見たい。
わたしたち世代の選手は海外の試合に気後れとか入れ込み過ぎの感があったけれど今の若い世代は頼もしいですね。対等に戦いますもの。見ていて気持ちがいい。U-22とか好き。
つる
2007/12/04 08:48

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