ハキダメにつる

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zoom RSS 読書感想文/ドッペルゲンガー

<<   作成日時 : 2007/10/10 22:04   >>

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ドッペルゲンガー
担当編集者「ドッペルゲンガーでもタイムトラベルでも佐藤さんと直毅が話せてよかったです。」

つる「うん。」

担「でももうひとりの佐藤さんはどんな佐藤さんだったんでしょうね。直毅はあまり変わらないようだけど」

つる「ああ、あれね。あれおにいちゃん(直毅)だよ。」

担「ええっ?そうなんですか?」

つる「うん。おにいちゃんもドッペルゲンガーを見たんだよ。こんなふうにね。



朝錬を終えてロッカーを開けたときだった。

(制服がねえ!)

誰かのイタズラかとまわりの連中に聞くけれども誰もが授業に間に合うように自分の支度で忙しい。あっというまにロッカールームはそして誰もいなくなった。

椅子の上には今週号の「花よりメガネ男子」。新しいメガネに変えたばかりの直毅はそれに手を伸ばした。特集は“もしも突然の衝撃でメガネがずれたら?その傾向と対策”だ。思わず腰掛けて読みふける。




<総力大特集〜もしも突然の衝撃でメガネがずれたら?その傾向と対策>

〜あなたの快適ライフを応援・彼女の前でかっこいいあなたでいるために〜


case1メガネが上にずれたら

その1あわてず騒がずいっそそのまま軽くにぎった拳骨の甲でで額の上に押し上げよう!(注)上げた後さあいかにも困ったぞというふうにその拳骨でとんとんと額を軽く叩いて見せろ!チョイ上級者向き 写真参照

その2あわてず騒がず『うんうん』というふうに相手に相槌を打つ要領で自然にメガネを下げよう!(注)頭を振りすぎるな!初・中級者向き 写真参照

case2メガネが下にずれたら

その1オロナミンCの昆ちゃんヴァージョン

あわてず騒がずゆっくりと顎を引きながら体のやや下後方へと目線をやり眉間に皺を寄せながら利き手じゃないほうの親指と人差し指を使って目が疲れたというふうに揉む振りをしながら空いている小指を使ってずり落ちたメガネのフレームを引き上げよう。(注)初心者は田村正和演じる古畑任三郎をイメージすれば失敗は少ないぞ!ガンガレ!写真参照


その2カンニング竹山ヴァージョン

もし不幸にも斜めにずれてしまった時はあわてず騒がず・・・・







とにかくあわてず騒がず対処するのが賢明なようだ。

「へええっ!」

気楽なものだ。

「おっとこうしちゃいられないんだった。」

気を取り直してジャージのまま2年1組の教室へと急いだ。

(ウソだろ?)

直毅の席でもうひとりの制服を着た自分がじゅんぺいたちに新しいメガネを冷やかされながらしきりに頭をかいて座っている。

(マジで?)

どうやらここには自分の居場所がないようだ。今なら尾崎豊の気持ちがよくわかる。授業開始の鐘にうながされるようにとぼとぼと屋上に続く階段の踊り場に向かった。

(ドッペルゲンガー?)

直毅は最近読んだパソ記事を思い出した。

ごろっと横になると今朝からの出来事を思い返してみる。前の晩に遅くまで本を読んでいたから睡眠不足のまま早朝練習に出た。でもその時は自分だった。それからロッカールームに行ってその時もたぶん自分。でもひと足先にもうひとりの自分がオレの制服を着て教室に座っていたんだっけ。

(ありえない現象が見えるほど疲れていたんだろうか。)

睡眠不足を補うかのようにそのまま眠ってしまった。
4時間目の終了を告げる鐘の音で目が覚めた。まだ寝転んだまま考える。

(オレは死ぬんだな。)

ドッペルゲンガーを見た者は数日以内に死ぬと言われているらしい。

ここまで家族の愛情があって大きくなった。志望校にも入った。そこで友だちができて好きなサッカーもやってる。充分幸せだといえるだろう。17才で死ぬなんて思いもしなかったけれど神様がそう言うんならそれもありなのかもしれない。ただひとつ心残りなことがあるとすればあれだ。


直毅は本が好きだ。
かの文豪、太宰治だって心中するほど好きな人がいた。与謝野晶子だって「柔肌の熱き血潮に触れもせで寂しからずや道を説く君」と詠んでいる。
そして敬愛する坂本龍馬。龍馬だっておりょうさんという大事な伴侶がいた。

どうやら人生に恋は不可欠な模様。
このまま何もしないで死ぬわけにはいかない。戦争中ならともかくこの平和な国で死と向かい合うなんてことはまずありえない。特攻隊員は母や婚約者の名を呼びながら突撃したそうだ。さぞ無念だったことだろう。彼らがいて今がある。彼らの意思はオレらが継ぐ。だけどそのオレも、もうすぐ死ぬ。佐藤の名前を呼びながら死ぬんだろうか。しない後悔よりした後悔。

(そうだ!京都にコクりに行こう!)

がばっと起き上がると階段をひと思いに駆け下りて昇降口に走った。



「あれ?松本君。」

下駄箱の前で佐藤さんに呼び止められた。拍子抜けした。

「携帯通じなかったよ。なんで?」

「なんで・て、トイレに落とした。」

昨日落として機種変したばかりだ。だけど佐藤さんとはメールするほどの仲じゃない。

「は?なら一番にわたしに知らせるでしょうが」

は?と聞きたいのはこっちのほうだ。

「ちょっと待てよ。なに言って」

「知らない!きょう自転車じゃないからこっちから帰る!」

直毅の言葉をさえぎってそれだけ言うと出入り口でパッと左へ行ってしまった。

なんなんだろう。いつからメールとかするようになったんだ。さっき踊り場にいる間にもうひとりの自分が何かしたんだろうか。
とにかく追いかけようと右の自転車置き場に走った。
もし本当に死んでしまうなら後悔だけはしたくない。てゆーかまた嫌われた。



「びっくりしたァ!なんだよ。」

「(ひゃああ。)」

いまさっき分かれたばかりの佐藤さんがMyチャリのそばにうずくまっている。

「なにしてんだよ。」

「ドモっ!」

と言って勢いよく立ち上がった佐藤さんに頭突きをくらった。なんなんだ。

「ってえ!」

「ごめん!ごめんね!それからこの前もごめんね!」

衝撃でずれたメガネをあわてず騒がず「花よりメガネ男子」の特集号のマニュアルにあるようにcase2その1古畑任三郎風に直してみた。

「いいよ。べつに」

頭突きで目から出た火花にチカチカする。ぶっきらぼうな物言いになった。

「乗る?」

「へ?」

「自転車ないんだろ?」

「なんで知ってるの?」

「さっき言ってたし」

「さっき?」

乗るのが躊躇(ためら)われるようだ。そりゃそうだ。さっき怒ってたもんな。でも死ぬんだから後悔したくない。一生に一度のふたり乗りだ。

「だから乗るか?って」

「そ・そのママチャリにですか。い・いいです。」

ママチャリが気に入らないようだ。がっかりした。

(な〜〜〜〜お〜〜〜〜とォーーーーっ!!)

直毅の自転車は弟の直人が路上放置で盗難にあってそれきりだ。それ以来母さんの古いほうの自転車を使ってる。マザコンだからじゃない。いや少しだけマザコン。メガネにしてもそうだが彼は物にあまりこだわらない。

ふたりは黙って自転車を挟んで歩き出した。いったいどこへ行くというのか。
佐藤さんが当然のように歩いているのでそれに合わせて自転車を引く。

直毅がメガネを変えたせいなのか彼女は物珍しそうにしきりとこちらを見る。照れくさくて佐藤さんの顔が見られない。
そうだ。どうせ死ぬのなら一度聞いてみたいことがあった。佐藤さんの名前の“ゆみこ”は何故ひらがななんだろう。

佐藤さんの視線を避けるかのように前を見たまま直毅が言った。

「ゆみこってさ」

その途端佐藤さんは敷石に足を取られてつんのめった。
手をついたまましばらく立てない。よほど痛かったらしい。

「ほら」

思い切って手を差し出した。

「い・いいです。いいです。」

めっそうもないというふうに頭(かぶり)を振った彼女を見てまだ怒っているんだと思った。
彼女は産まれたての仔馬のように脚を踏ん張ってそれでもようよう自力で立ち上がった。しかめ面をしている。

「大丈夫かよ。」

「大丈夫です。なんでしょうか?」

丁寧語か。距離あんなあ。名前のことはもういい。無難な話題にしようと思った。

「古典やってある?」

古典の宿題がでていた。勉強を口実にカエル図書館に誘ってみよう。

「や・やってあります。」

ふだんの佐藤さんからは想像できない“ですます”調に

「はは。さっきからへんなの。」

「へん?」

「へん!」

ふたりは顔を見合わせて笑った。いきなり



「な・な・直毅はやってないの?」



「・・・」



呼び捨てにされて心臓が止まるかと思った。佐藤さんは積極的だ。

照れくさくて直毅はそっぽを向く。
鼻がむずむずしたから手の甲でこすった。

「松本君はやってないの?」

「ああ、うん。だから見せてもらおうと思ってさ。」

松本君に戻ってちょっとホッとした。やっぱいきなしは無理。だんだん慣れていこう。

そうと決まったらもう図書館へ向かってまっしぐらだ。佐藤さんも直毅の歩調に合わせる。国道沿いの川に沿って調節池を通り過ぎる時

「カメ、どうしたかな。」

と佐藤さんは言った。

「いるんじゃね?この前もいたじゃん。」

「ああ、」

文化祭の前に来たっけ。その時のことがよみがえる。あの時とは比べようもないくらい、ふたりの距離は縮まった。

「あ・そうだ。携帯貸してみ。」

「へ?」

さっき彼女が怒ったのはメルアドを教えなかったことだと思いだした。

「機種変して番号変わったから」

「機種変・・」

「トイレに落としたんだ。言ったじゃん。」

そう言うと直毅は憩いの場のもう葉ばかりの藤棚の下のベンチに座って右手に自分の携帯を利き手に佐藤さんのを持ち番号を入れはじめた。

「うう」

佐藤さんは立ったまま泣きはじめた。厭(いや)なのだろうか。その涙は機関銃のように発射されている。メルアドを登録されるのがそんなに厭だったったんだろうか。やっぱり嫌われているんだろうか。目の前で女子に泣かれたのははじめてだった。



佐藤さんの涙に困惑する直毅。



やがてカエル図書館が見えてきた。

佐藤さんはSKECHERSの紐がほどけたのかしゃがんで言った。

「先に行ってて。」

「おう。」

直毅は図書館の自転車置場に向かった。ふと図書館の出入り口の方へ目をやるともうひとりの自分が階段の前に腰掛けている佐藤さんに向かって歩いて行くのが見えた。

(やべっ!)

その場にしゃがんで身を隠す。


佐藤さんはもうひとりの直毅に駆け寄ってひとことふたこと何か言った。彼はコンと彼女の頭を軽く叩くふりをして並んで図書館へ入っていく。

(は〜)

トンビに油揚げをさらわれた気分だ。

彼女と歩く自分。自分じゃない自分。直毅は不思議な気持ちで見送った。そして気づいた。

こんなに君を愛していたんだと。






ちがーーーーーーうっ!こんなに君を愛してとかないからっ!ちがうでしょっ!横はいりすんなっ!」

担「いいじゃないですか。だってじれったいんですもん。」

つる「まあいいよ。とにかくそんな感じだったわけだ。」

担「ふうん。じゃ現実に戻ってもふたりはうまくいきますね。きっと」

つる「そうはいかない。佐藤さんはタイムトラベルだと思っているからまた明日からはいつもどおりさ。」

担「あ〜あ。あ・そういえば本屋さんでこんなの見つけましたよ。」

つる「わわ!パクられた!」

担「ちがうでしょ!センセがパクったんでしょ。発売日はこちらのほうがずっと前ですからね。それに一昨日 SEVEN ELEVEN で立ち読みした『頭文字(イニシャル)D』36巻に呼び捨てのほほえましいエピソードが載ってました。それも怪しいな。」

つる「バレたか。でもいちいちパクリとか言うな。」

担「じゃなんて言えばいいんです?」

つる「インスパイアって言って。」

担「インスパイアねえ。」






昨日の佐藤さんのイメージががスウィングガールズなら今日の直毅はさしずめウォーターボーイズといったところでしょうか。

想いを寄せる人からはじめて呼び捨てされると嬉しいもんです。嫌いになると寒気しますけどね。あ・こういうこと言っちゃぁいけません。 

「メガネ男子」全国のメガネ君をはげしく勇気づけていると思われます。

年齢を問わず読んでいただきたくてお目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名を付けます。




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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
つるさん、ほんと参りました。脱帽です。いや、ほんと、この入り組んだストーリーをよくぞここまで書ききったものよ、と感心することしきりです。「めがね男子」ですか。あれがホントに本として存在しているのもビックリです。なんかトリックなのかと疑ってしまいそうです。別世界から無理やり持って来たんじゃないでしょうねえ。実はいろんな世界を自由に行き来できる能力の持ち主だったりしませんか。あのお、わたしに呪いなんか、かけないでください。気が小さいのですから。(いろんなツールを持っているお方だから)、いえ、独り言です。(怒らせないようにしないとなあ)、わっ、つる!(おお、マイ割りのCMだった)。とりあえず、まだ、私は死んでないようです。
あっ、俺がいる、(お、もう一人の俺が死んじゃった)。なんだ、わたしがもともとドッペルゲンガーだったのか。つるさん、こわいよー。
だっくす史人
2007/10/11 00:48
だっくす史人さん、おはようございます。
いつもありがとう。
なんかこの記事へんじゃないですか?ト書きと直毅の一人称のつぶやきがごちゃまぜです。当然、本文からは除外です。メンドクサイのでこのままにしちゃいます。
ところでメガネ男子きてるでしょ?最近ではジョニー・ディップなんかわざとかけてますよね。メガネ君のメリットはなんといってもメガネをはずしたときのそのギャップにあります。たいていメガネをしてると器量が割引かれて見えるもんです。だからはずすとそのぶん男前度がアップして見えるわけなんですよ。一概には言えないけど。
呪いについては「さと子の・・」でそのうち書きますが呪ってもまず効きませんね。ただびっくりするのはわたしに親切にする人は皆良いことが起こるようです。母なんて我家に来る道中に宝くじで10万当たりました。わたし自身には何も起きません。

>なんだ、わたしがもともとドッペルゲンガーだったのか。
わあ、シックス・センスだ。
>つるさん、こわいよー。
勘弁して!
つる
2007/10/11 07:56
いちメガネ男子としては、
気になる記事です。本編より
「花よりメガネ男子」の記事に
集中してしまいました(汗)
レイバック
URL
2007/10/12 00:44
へえ。レイバックさんはメガネ男子だったんだ。
そうなんだ。ふうん。←しばし感心する。

「花よりメガネ男子」の冬の特集号は“もしも好きな子と行ったラーメン屋でレンズが曇ったら?”です。「理想の高校生」の冬ヴァージョンの中のワンシーンなのですが肝心のストーりーよりそんなことばっかり考えてます。読みたいかな。
つる
2007/10/12 01:49

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