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zoom RSS 「理想の高校生」文化祭2/生(な)さぬ仲

<<   作成日時 : 2007/09/06 00:31   >>

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photo by 伊豆の海と海岸に咲く花

生(な)さぬ仲
「ジャンプ買ったよ」

 弟の直人が帰ったばかりの直毅に声をかけた。

「あ、月曜日か」早ければ土曜日発売の“週刊少年ジャンプ”だ。今“銀魂(ぎんたま)”が熱い。

「読む?」

「あとでいい」

 三つ違いの直人がそんなふうに言ってくる時は何かある。
 直毅を味方につけたい時だ。

 食卓につくと、案の定、母さんはシンクに向かって思案中だった。
 たぶん今日、また中学校に呼び出しでもあったのだろう。直人は直毅と違って、やんちゃだ。

「飯、何?」

 ティーンエイジャーになると、“言語規制法”案が可決される。家で直毅は二十語以上喋らない。

「母さん!」

「ああ、おかえり。」

「め・し・な・に?」

 母さんは直毅と直人の実母ではない。
 実母は直人を産んだあと、産後のひだちが悪くて亡くなっている。直毅は三つから、直人は生後間もなくから、母さんと家族になった。

 血の繋がりがないことは直毅も直人も、うすうす知っている。でも面と向かって母親とその話をしたことはないし、実の母が恋しいとも思わない。
 だから、ご近所の訳知りの人が、

「こんなに大きくなって――さぞかしら――ねえ?」

 などと、意味深に言い出すと、

(ウゼ!)

 と思う。そいつは、

(クソ)

 だ。

(母さんは母さん。オレたちは、この母さんしか知らない)

 四国の愛媛出身の母さんはお遍路さんを“お接待”するという土地柄の気質なのか、世話好きで情にもろい。
 実母でもそうでなくても二人にとってうってつけの母親だった。

「煮込みハンバ〜グと、シラタキ〜、ダイコ〜ン、タケノコ〜、トリニク〜、コンブ〜などの〜炊いたものを〜ひとば〜ん味を〜しみこませたものですう」 ←ドランクドラゴンの塚地風に
 へんな抑揚がついているのはわざとおどけて心の内を見せない時だ。

「シラタキぃ?」

「おにいちゃん、好きでしょ」

「いつの話だよ」

「だって」

「いま食ってねーし」

 幼稚園の頃は、白滝ばかり食べたがったそうだ。
 言葉とは裏腹に飯をかっこむ直毅。皿には何が盛ってあったかわからないほど、きれいに平らげる。
 彼はいつもそう。言葉と行動が一致しない。

 直毅が食卓から離れようとしないのを見て母さんが、

「何?」と聞いてくる。

「別に」

 何?と聞きたいのは直毅のほうだ。

“本日の出来事”はかなり深刻な様子だった。何故なら母さんはもともと話好きだ。
 帰宅の遅い親父の代わりに、よく直毅は母さんの話を聞く。聞くだけだ。上手(うま)い相槌を打つ訳でもない。

 でも今日は違う。母さんは肝心な事はいつも一人で抱え込む。

「他に何かねえの」

「ヨーグルト」

「あとは?」

「あと葛餅(くずもち)」

「おう」

 直毅の好物を心得ている。白滝だけミステイク。

「あとは?」まだ食う気だ。

「ネロ」

 ぞんざいな言葉のやり取りは、よくある普通の親子だ。

 違いがあるとしたら何だろう。

 食べ終えた直毅が弁当箱を洗いだすと母さんは、

「ああ、楽ちん楽ちん」

 などと口にする。するけれどホントは直人しでかした事で心が重たいのが直毅にはわかる。
 母さんは母さんで洗いものをする直毅に余計な気を使わせたかと気になる。

 それも普通といえば普通だ。しいて言えば普通よりちょっとだけ踏み込んで互いに心の読みっこをしているかもしれない。

 昔から、母さんがじっと考え込んでいると直毅はその瞳の深いところを汲み取ろうとし、逆に母さんが直毅に向けるじっとした眼差(まなざ)しには、自分の心を読みとられまいとする癖がついた。

 小さいうちは良かった。直毅が嬉しければ嬉しいで母さんも楽しそうにする。だから必要以上に喜んでみせた。だが悲しければ悲しいで母さんも泣きそうな顔になる。そんな時は全然平気な顔をしてみせる。
 だんだん、“振り”が上手くなった。

 中学に入り、そんなあからさまなことも気恥ずかしい年頃になると、それからはずっとポーカーフェイスだ。
 気持ちが大きく動くような時ほど無表情になる。


 だがそれもよほどの場合である。
 普段はボケーとしているし、ほとんどのことは『どっちでもなんでもいい』直毅だった。



(親父は亡くなった実の母親のことをどう思っているのだろう)

 一度だけ直毅は聞いたことがある。

「う〜ん。たいそうな美人さんだったが」

「へえ」

「ありゃあ、いまで言うところの“片付けられない女”ってヤツだったな。あはははっ!」

「……」

 未練はないようだった。


<つづく>




銀魂(ぎんたま)週刊少年ジャンプに連載中の人気漫画ギャグ満載

言語規制法個人によっては発令されなかったりしてるようです

お遍路さん四国イズマイブーム

お接待お遍路さんの項に記載されています

葛餅(くずもち) じつはわたしの好物ですて、そんなことはどうでもいいことでした




説明も野暮なんですが年齢を問わず読んでもらいたくて補足します。
お目障(めざわり)かもしれませんが読み仮名もつけます。




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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
そうだたんですか?
直毅クンとお母さんは”なさぬ仲” ・・
でもその方がいい関係なんでしょうね・・多分
うちなんかの場合、子供を見てると親だからって甘えばっかりで・・
親に対する思いやりの希薄な子供で・・(育て方がまずかった)
(笑)
今更愚痴ってもですが・・
四国のお遍路サンは今ブームになってますが、私の親たちの時代はそれこそ県民皆がお四国まいり(まわり)をしていたみたいで(弘法大師をあがめる風習があったみたいで)はうちには、祖父、祖母、父母などの歴代のの杖が残ってましたよ
昔の人は皆歩いて回っていたんですね
さすがに私たちはそんな事しませんでしたが、幼い頃白い巡礼服のお遍路さんが鈴を鳴らしてものごいに来ていたのを思い出しました・・
mimi
2007/09/06 10:51
mimiさん
いつもありがとう。
この記事いらなくないですか?
直毅の性格を語っていくのに必要かと思ったのだけど、ぐだぐだ書くより説明なしで行動させてもよかったかなって思ってます。
詳しくは次の読書感想文を見てくださいね。

それからリアル四国の話は嬉しいな。
ものすごくイメージが膨らみます。
つる
2007/09/06 20:40
いいんじゃないですか?
こういうのもあっても、登場人物に余計に親近感沸きますよ(^^)
それと弟の直人ですか・・うちの息子と同名で(笑)
mimi
2007/09/06 23:46
mimiさん
この中の直人はかなり悪い子ちゃんです。
同名だと思うと書けなくなりました。
つる
2007/09/07 17:52
遅いコメントで申し訳ない。
かつての自分と母のやりとりを思い出しました。母はこの世で最も偉大で尊敬に値する存在なのに、昔の自分は・・・;;
関係ない感想で申し訳ない。
かつての自分には口縫い付け法を適用してやりたいですね。
小屋
2007/09/09 00:52
小屋たん
>母はこの世で最も偉大で尊敬に値する存在
ずるいですよ。そんなヨン様ファン世代の心をワシヅカミニするような発言は、メッ!←いちおう叱ってみせる。
>口縫い付け法
若い世代には、まだまだわたしたちが知らない法案が可決され続けている模様。メモメモ
来てくださってありがとう。
つる
2007/09/09 02:42

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