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zoom RSS 「理想の高校生」BELIEVE〜前編

<<   作成日時 : 2007/08/18 20:15   >>

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photo by SQUALL

BELIEVE〜前編
「おまえさあ」

 ブール底チェックからあがってきた直毅を見て濡れた髪を拭きながらじゅんぺいが言う。二人を遠巻きにしている女子がいる。

 今週の直毅のペアはじゅんぺいだ。彼女を追いかけて沖縄へ行った飯沼さんの替わりだった。じゅんぺいには女子からちょくちょく声が掛かる。

「メガネないほうがいくね?」

「え?」直毅。

「ぜってーそう思う。たぶん」

「見えねえし」

「なんか全然イケてなくなくね?」

「うるせえよ」

 直毅は物に無頓着だ。使えればいいと思っている。そのメガネも従兄が大学入試で上京した時に直毅の家に忘れていったものだ。『いらない』と言うので貰った。度数が合うので、前メガネが壊れた時から使っていた。
 家で口の悪い親父から、「ヤクルト時代の古田みたいだな。」と言われる。

「おまえ誰かに似てるよ」

「誰だよ」

「う〜ん。誰だっけかなあ。韓国の戦争映画にでてた奴」

「知らね〜」




 その日のバイトを終えて二人が通用門へ向かうと門の前に何人かの女子の塊(かたまり)がいた。

「取れ!」とじゅんぺい。

「え?」何を?と彼の顔を見る直毅。

「いいからメガネ取れ!」

 じゅんぺいに言われるまま直毅がメガネをはずすと、その女子の塊が二人に近づいた。

「じゃ行こうか」

 と、彼女達に声を掛けると、じゅんぺいはスタスタと歩き出した。

「え?」合点のいかない直毅。

 じゅんぺいと直毅の後ろを付いてくる四人の女子。
『いったいあれはなんなんだ』と言うふうに、直毅がじゅんぺいを見ると、

「サプライズよ。オレからオマイらにちょっとした真夏のサプライズ」と、じゅんぺいが言った。なんだかご機嫌だ。

「だって」と、直毅。

 だって今日は、予備校の夏期講習帰りのニイケンと長谷川君との四人で、暑気払いにカラオケに行く約束なのだ。
 直毅の疑問に答えるかのようにじゅんぺいは言った。

「あいつらにはもうメールしたし。けっこう喜んでた」

 親友のメガネ君と離れ離れの直毅は、ほとんどへレン・ケラー状態で待ち合わせの場所に向かった。




 カラオケ広場“バナナパンチ”。歓楽街の古いビルの三階にある。ビルの前に、ニイケンと長谷川君がいた。

 ニイケンは直毅と同じナンジャラホイ高校サッカー部のDFだ。直毅が左のサイドバックならニイケンはセンターバック。そして五月人形のような眉にある傷跡が彼のりりしさを際立たせている。三歳の頃に、年子の兄からおもちゃを投げつけられてできた傷だ。その傷のおかげでヤンチャな人から因縁をつけられることも少なくない。

 それに比べると長谷川君はなんて優しく穏やかな顔立ちなんだろう。そして中肉中背だ。そんな彼を見て誰も柔道の有段者だとは思わない。彼は昔で言う『文武両道』だ。勉強は学年トップで柔道部キャプテン。腕前は二段。

 二人ともしゃっちょこばって突っ立っていた。モウカッチカッチデスヨ。ザブングル風にささ・ご一緒に)

“初めてのおつかい”ならぬ“初めての合コン”。誰だって緊張する。

 カラオケルームに入ると、こっち側とあっち側のソファに男子と女子が分かれた。
 じゅんぺいの仲介で簡単な自己紹介が終わると、彼以外の三人は歌詞本をめくりだした。目のやり場に困った。三人にとってあっち側の女子は眩(まぶ)し過ぎる。普段はありふれた女子高生なのだろうけど、四人とも、肌も露(あらわ)に若さを見せ付けていた。
 彼女たちのバックの後光は夏のファッションマジック。

 女子たちは歌詞本を膝の上に乗せてはいるが手持ち無沙汰のようだ。時々口に手を当てて横の子とヒソヒソ話をしたり、頷いたりクスクス笑ったりしている。
「ウォンビンに似てる」だとか「似てない」だとか品定めに余念がない。ちょっと!誰がウォンビンだって?!

 合コンで女子はあまり歌わない。もっぱらお喋り中心だ。じゅんぺいが気をきかせて何度か単発のギャグを言うけれども、ひとしきりワッと盛り上がっただけですぐにシラけてしまった。

 悲しいほど合コン初心者。

 男子が話題に取り上げる“FF”にも“SLAM DUNK”にも女子は興味がなかった。全く食いついてこなかった。男子が興味のあるものは女子はほとんどだめだ。車しかり格闘技しかり。

 とうとう男子たちが腹筋の見せっこをはじめて自分たちだけで盛り上がっていると女子たちは居心地悪そうに目配せをはじめた。

 女子はちやほやするか逆に冷たくしなければ男子にまず関心を持たない。特に無視は絶対だめだ。だけどそんなこともまだわからなかった。

 じゅんぺいがはじめの曲をセットしているうちに一人の女子が、「洗面に行ってくるね」と言って席を立った。二人めがそれに続いた。間を置かずに残りの子もなにげに皆いなくなった。

 そして誰も帰って来なかった。逃げられたのだ。

 ピザの代金どうすんだ――残された四人は触れない。ピザも女子の話もしなかった。傷の舐(な)め合いもしない。せめてもの男のプライド。

 だけどホッとした雰囲気も流れた。慣れないことはするもんじゃない。

 まるで何事もなかったように、じゅんぺいが“忍風戦隊ハリケンジャー”を歌い出した。彼は、ちびっこが好む戦隊ヒーローものを見るような高校生だった。彼女がいたりもするけれど、こんなアンバランスな一面もある。あんまり彼が楽しそうに歌うものだから、

「♪シュシュッと参上ー!♪」

 と、彼が歌うと、皆が

「♪さんじょおーぅ!♪」

 と、後追いする。最後は合唱だ。

「♪シュシュッと今日GO!GO!
  燃え上がれ正義のハ〜リ〜ケェ〜〜ン
  忍風戦隊ハリケンジャー風にな〜れ〜♪」


 直毅も歌った。“リンダリンダ”。本家本元の甲本ヒロトよりノってたかもしんない。

 長谷川君も“柔道一直線”を歌った。お父さんの持ち歌だそうだ。皆がコケるほど知らない歌だったが、長谷川くんの柔道に対する真摯(しんし)な気持ちは伝わった。



 直毅の頭に去年の文化祭が蘇(よみがえ)る。

 招待試合の勝ち抜き戦だった。長谷川君は一年生ながら、アホチャウカ高校の二・三年生を相手に、八人抜きをしたのだった。
 彼のバネのある体から繰り出される技は、全て一本勝ち。九人目の三年生に寝技で押さえ込まれた時は、もう返す力もなくそのまま負けた。男の直毅から見ても、相当かっこ良かった。
 クラスの女子がいたら、気絶するかちびるかの、どちらかだっただろう。でも誰も来なかった。柔道は地味だ。

 それ以来、長谷川君は男子から“古賀”と呼ばれている。

 古賀選手はバルセロナオリンピックで左膝に大ケガをかかえながら、金メダルを取った「平成の三四郎」だ。金メダルが決まった瞬間に彼は天を仰いで男泣きした。男子は伝説のヒーローに弱い。



 それからはもういろいろ歌った。アニメソングありーのJ−POP(ジェイポップ)ありーの。
 マラカスやタンバリンも振った。調子こいてタンバリンを壊した。

 ニイケンは十八番(おはこ)の尾崎豊ばかり歌った。いつだってニイケンの歌う“T LOVE YOU”は心に沁(し)みる。恋を知らない直樹も長谷川君も胸がキュ〜ンとなった。じゅんぺいだって、しおりちゃんのことを思ってあやうく泣きそうになった。

 そして“僕が僕であるために”は、はじめこそニイケンの歌に耳を傾けていた三人も、最後は一緒になって歌った。

 尾崎豊の歌は時代を問わず、十代の心をわしづかみにする。






「馬場が夏期講習の同じクラスにいるんだけど」

 途中でニイケンが思い出したように言った。

「カツアゲにあったらしいよ。『身ぐるみはがされた』ってクラスの奴が言ってた」

「ひゃはは。気取ってるからだよ」とじゅんぺい。

「身ぐるみって?」と直毅。

「“STUSSY”のTシャツとナイキのシューズだって。」ニイケン。

「“STUSSY”? あいつが“STUSSY”? うひゃひゃひゃひゃひゃ」笑いが止まらない。どうやらツボだったらしい。

「あいつ嫌いなんだよ。いい気味」椅子からずり落ちてまだ笑っている。

「あははは」「はははっ!」

“STUSSY”が何なのか良くわからない直樹も長谷川君も、そんなじゅんぺいを見てつられて笑った。



 時間がせまったころ長谷川くんがトイレに立った。

 じゅんぺいが歌ってニイケンが歌った。長谷川君の入れた曲のイントロが流れた。




 おかしい。




 長谷川君が戻って来ないのだ。




<つづく>






忍風戦隊ハリケンジャークリック

僕が僕であるためにクリック

「リンダリンダ」クリック

柔道一直線「アニメ・特撮館」の右下の方「柔道一直線」をクリックすると歌が聞けます。

韓国の戦争映画たぶんじゅんぺいくんは「ブラザーフッド」のことを言ってるのだと思います

サプライズ誕生日なんか嬉しいものです

DF(ディフェンダー)守備

サイドバック左右にあるディフェンダーのポジション

センターバック同じくディフェンダーのポジション

文武両道理想ですがなかなかいませんね前日本代表のDF(ディフェンダー)宮本なんてどうでしょう?

ウォンビン映画「ブラザーフッド」にでてくる韓流スター

FFゲーム名「ファイナルファンタジー」

SLAM DUNK(スラムダンク)週間少年ジャンプに連載されていたバスケットボールの人気漫画ですカッコいい男子がたくさんでてきます


十八番(おはこ)ありますか?

尾崎豊若い世代のカリスマです「15の夜」はいつ聞いても胸を突き動かされます

STUSSY(ストゥーシー)SMAPのキムタク(木村拓哉)が身につけたことで有名になったブランド



説明も野暮なんですけど年齢を問わず読んでもらえたらと思い付け足します。



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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
わ〜い・・・合コンですか・・
前回までとは時代のずれがあるみたいなんですが(笑)
まぁ、そんなこと、ど〜でもいいコトですよね(^-^*)

でもひょっとしたらつるさん、この年代の方なんでは??
なんて思っちゃいました(^^)
はじめての合コンってこんなものなのでしょうね きっと!!
男性のほうが純情って言うじゃあれいませんか・・(笑)
mimi
2007/08/18 23:57
↑訂正です・・”言うじゃありませんか”って書きたかったんです(笑)
mimi
2007/08/19 00:00
ぎゃっ!やっちまいました。
mimiさんご指摘ありがとうございます。
そもそも10年くらい前を想定していたんだけど完全に現代物になっちまってます。とほほ。
またあのふたりに登場してもらって言い訳してもらいます。
年代は文中にちらっとでてくる直毅や長谷川君のお父さんと同じくらいと思います。プロフィールに書いちゃってます。
ああ年はとりたくないもんだ。
つる
2007/08/19 10:17
レイバックさん
先回りしてお待ちしてましたよ。
わざわざ手の込んだマネをしたのは
1アクセス数をかせぎたかったから
2レイバックさんならジョークが通じると思ったから
<答え>両方。

では毛根情報!
朝シャンを止めることです。洗髪は夜がいいそうですよ。
深夜に毛根が活動するそうです。
その時に頭皮にホコリや脂があると邪魔なんですって。

コメントいつもありがとう。
つる
2007/08/24 00:27

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