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zoom RSS ほんとうの読書感想文〜壺井栄『母のない子と子のない母と』高校生編

<<   作成日時 : 2007/08/28 11:20   >>

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壺井栄『母のない子と子のない母と』を読んで

二年二組   新妻 健一

 この物語は、はじめ「海べの村の子供たち」として小学生新聞に連載され、その後、改作・改題されて『母のない子と子のない母』で刊行された児童向けの文学作品である。

 これを読むきっかけは、祖父の書棚にあったから、それだけだ。僕は、両親の海外赴任で、東京で一人暮らしだ。だから、夏休みは父方の故郷、高知に帰った。そこで見つけた。本を手に取ると、いきなり文頭に、

「小豆島を知っていますか。」

 とあって、イッキ読みになった。ちょうど僕は祖父につき合って、小豆島の墓参りから帰ったばかりだった。海峡の向こうに横たわる陸地。毎朝、当たりまえに見える島影。しかし、その島に渡ったのは初めての経験だった。
 本の中の、島の暮らしぶりは、僕の知らないことばかりだった。

 祖父も、物語にあったように、親の厄年に生まれた鬼っこだった。「熊雄」と言う。祖父母共、この島の生まれだ。

 冬の刃物のような痛さの風、一年のうち青や黄色にと何度も帽子をかぶりなおす丸山、麦を植えた段段畑、女郎(じょろう)ぐものドンブス、鰯(いわし)のいろ、季節の移り変わりの中で島の子どもたちの生活は営まれていく。
 祖父母たちはそれを知っている。彼らが見つめる小豆島は、僕に見える景色とはきっと違うだろう。

 僕は登場人物の中の一郎に、特別強い思い入れを感じた。彼は、遠い関東平野の熊谷から親類を頼って島に渡って来た少年だ。

 僕もイギリスから転入してきた時は戸惑った。
 家族は家で普通に日本語を話したので、会話に不自由しないつもりだった。でも、どこかズレていたのだろう。同級生と話していると、よく怪訝(けげん)な顔をされた。うまく話せたと思ったら、こんどは高知弁が出る。そういうのを真似されたりした。
 正直言って、入学当初は誰とも話したくなかった。一郎もそうだったと思う。

 その一郎が友だちに誘われ、麦のあいよせや女郎ぐもを取りにいくうち、だんだんと島に馴染んでいく。すると、それまで暗い顔をしていた彼が一変し、笑ったり、お喋りになっていく。その過程を読んで嬉しかった。

 僕も部活の仲間ができて、それまでの街や学校が、僕によそゆきの顔をしなくなった。心が腰を落ち着けたみたいになって、見える世界が変わった。

 その土地に馴染んだり、人と知り合って親しくなるには、それなりのプロセスがある。
 特に人との交わりは一朝一夕には紡(つむ)げない。空間の共有・共通体験を通して互いの理解と信頼を積み重ねていく。それらは実際に目にすることはできない。
 そこで気づくのは、親しさはタメグチの会話やメールの数といった表面に表れるものだけでは推し量れないということだ。

 話の焦点がずれてしまったが、ここで作者の言おうとしていることに戻りたい。

 作者の壺井栄は、この作品の他にも「二十四の瞳」「坂道」「あたたかい右の手」など戦争を背景にした作品が多い。だが、真っ向から戦争を否定をするような文章を書いているわけではない。

 そのことは「母のない子と子のない母と」を例にとると、一郎がある日のおとうさんを回顧する場面に表れている。

 それは防空演習がだんだん激しくなってきたころの熊谷の思い出で、おとうさんが一郎に詩を読んで聞かせるところだ。



『亀はかなしい動物です。あおむけになってねむることもできない。』



 と一郎に読んだ後、おとうさんは冗談のように言うのだ。



『人はかなしい動物です。あおむけになってねむることもできない。』



 つまり、この部分で、いつ空襲警報が鳴るかわからないから、亀だけでなく人間だって、のほほんと上を向いて寝ることができないと言っている。

 祖父母によると、空襲のありそうな夜は、防災頭巾や持ち出し用の袋を枕元に置いて、いつでも防空壕に避難できるように普段着で、体を丸めて寝たそうだ。

 こうして作者は一郎を通して静かに戦争を批判している。静かだが痛烈だ。


 そして、どの作品も子どもにもわかりやすいように「説話体」で書かれている。壺井作品の特徴だ。
 それらは物語の形をとりながら、揺るぎない戦争批判を、読み手に訴えかけている。

 僕が注目したいのは、この作品のように、誰もが理解し共感できる文章というのは、ものすごく簡単な語句で構成されているいうことだ。

 これは文章についてのことだけではなく、言葉についてもまた同じことが言えるだろう。

 この発見は僕にとって、部活の仲間と目標をひとつにしていく上で、大きな意味のあることに感じた。



 短いけれどそれがこの本を読んだオレの感想です。   <おわり>


【評価:B´】
よく書けているが、この延長に小論文があると考慮し、もう少し長さがほしい。
二学年現代国語担当    館林 秀夫




――ほんとうのおわり――



鰯のいろ山から見える海のいろ鰯がたくさんいるところ
あいよせ麦のよせあいのことで、みぞのあいだを軽くたがやしながら、両側の麦の根元に土をかけていく作業


惜しい!ニイケンたら、感想文の最後で「オレ」って書いちゃいました。
ニイケンというのはニックネームで「理想の高校生」の新妻健一君のことです。彼ならこんな文章を書きそう。

<明日はつる先生と担当編集者が読書感想文で読書感想文について語り合います。>



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ニイケンのB´判定に納得のいかない→でポチっとやっておきましたよ
新妻健一クンは帰国子女だったんですね
高校生の書いた感想文としては、坪井栄を反戦作家として捉えてる点などからして立派なもんです

子どもにもわかりやすいように書いてる・・ってことで思い出したのが妹尾河童さんの「少年H」です・・
(大人も充分楽しめる小説でした)
mimi
2007/08/28 17:12
mimiさん
こちらへもありがとう。
二イケンが帰国子女なのは、はじめてさと子の妄想に出てきた時、そういう設定にしちゃったんですね。この先ほころびがでないように気をつけなくては。

>妹尾河童さんの「少年H」
ですか。
少年ものなら、わたしは石田衣良の「4TEEN」とか湯本香樹実の「夏の庭」とかですかね。
なかなか男の子の気持ちは書ききれないのだけれど男の子のほうが物語としては圧倒的に面白いんですよね。困ったもんだ。
つる
2007/08/28 22:02

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