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zoom RSS ほんとうの読書感想文〜壺井栄『母のない子と子のない母と』中学生編

<<   作成日時 : 2007/08/27 18:44   >>

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壺井栄『母のない子と子のない母と』を読んで

二年三組    佐藤 ゆみこ

 私は夏休みに壺井栄の『母のない子と子のない母と』を読みました。それは、今から約60年位前の小豆島の村の話です。
 
 壺井栄の小説は『二十四の瞳』がいちばん有名ですが、その他にも心を打たれる作品がたくさんあります。短編もあるし、読みやすいのでお薦(すす)めの作者です。

 私は読んでいくうちに自分が「平成のおとら小母さん」じゃないかと思いました。

 なぜなら私には五人の弟がいます。いつも誰かが喋っていて賑(にぎ)やか――というより、うるさい――です。取っ組み合いのケンカもします。まるで、おとら小母さんの庭で繰り広げられるような光景です。

 でも私はおとら小母さんのように優しくはありません。

 弟たちをぶっとばしたくなるようなことなんて、しょっちゅうです。正確にいうと、ぶっとばします。でも弟たちがケンカをしない時は、いっしょにいて楽しいです。

 おとら小母さんのことで、わたしと同じできごとが二つありました。

 一つ目は、小母さんのが仕事の合間に、史郎たちが庭に遊びに来たところです。小母さんは、子どもたちがなぞなぞをしているのを聞いているうちに、亡くなった獅子雄(ししお=息子)の小さい頃を思い出します。

 一番年下の獅子雄が、大きい子たちに言います。

「あのな、川のとこに橋あったやろ。あしこ(原文まま)に花、さいとっやろ、あれなんや?」

 その後で、みんなが大笑いをするのです。

 子どもって本当にそうなんです。

 背伸びでなぞなぞの仲間に入れてもらうけど、意味がわかってないから、ただの名前当てになったりします。それから、答えを用意しない問題だって平気で出してきます。完全に知ったかです。

 二つ目は、一郎がねんねこばんてんで弟の四郎をおぶっていて、おとら小母さんに会うところです。
 お母さんが病気になって心細くなった一郎は、もしやと思ってお父さんを迎えに船着場へ向かう途中でした。小母さんに声をかけられて、気がゆるんだ一郎は、小母さんの顔を見て涙が湧きだしてくるのですが、そっぽを向いて海の方を見ているフリをします。

 弟もそうです。痛くて涙がでても、五年生くらいだと格好をつけて、泣いていないフリをするのです。

 壺井栄という人は子どものことがよくわかっていると思いました。

 この話で私が羨(うらや)ましかったのは、島中が子どもたちの遊び場所のように書かれていたことです。
 
 うちの弟たちが外で遊んでいると、お向かいの婆さんはいつも障子に半分だけ顔を出して見ています。時々その婆さんから、「うるさい」と叱られます。子どもが外で遊んでどこが悪いのでしょう。道路は人の迷惑なんだそうです。公園に行って遊ばなければいけないのだそうです。

 外に子どもの声がしない町なんて、それは死んだ町です。
 決まりきった場所で遊べと言う大人は、同じ口で想像力を持てと言います。想像力が限りないものだとしたら、限りある空間に押しやられた子どもたちは、想像力の持ちようがありません。

 弟たちがこんな目にあうと、東京にはもう、小豆島のように優しくて面白い大人の人なんて、いないんだなと思います。子どもは注意されるばかりです。そして、注意する人は、決まっていつも一方的な言い方をします。

 この物語には、おとら小母さんの他にも、優しくて面白い大人がたくさんでてきます。

 史郎のおじいさんやおばあさん、山ん場(やまんば)の米(よね)さん、漁師の亀さん、一郎のおとうさんの友だちの大場さんなどです。

 中でも私が一番好きなのは史郎のおばあさんです。こんなおばあさんがいて史郎は幸せです。私の家の向かいの婆さんとは雲泥の差です。

 史郎のおばあさんがどんな人かというと、うまく説明できないので、おばあさんの人柄をよく表している私のお気に入りの部分を書き出します。いえ、決して感想文の枚数の水増し目的ではありません。
それは、史郎がおばあさんに転校してきたばかりの一郎の文句を言うところです。

「おばあさん、一郎くん、あんまり感じがよくないよ。生意気だって、みんな言ってるよ。熊谷(くまがや)のじまんばっかりして、小豆島をちっともおもしろがらないんだよ。なんだろう、あれ。ぼくも、すこしいやになりかけた。」

 すると、おばあさんは、

「そんなこと、いうもんでない。おかあさんに死なれたりして、小豆島が、よっぽどつらかったんだよ。生まれて十年もくらしたところと、まだここの村にきてひと月もたたないのと、もし史郎だったって、考えてごらん。じぶんが一郎さんと同じ身のうえになったとして、十年いた熊谷のことより、話しようがないだろう。」

 と、言いました。
こんなふうに言われて史郎はすぐ気もちを入れ替えます。続けておばあさんは言いました。

「じぶんはじぶん、人は人。達夫さんがどう言ったって、史郎は一郎さん好きなんだろ。それでいいじゃないか。」

 と、いう部分です。こんな大人がいたら、きっといじめなんてなくなるでしょう。そう思いませんか。

 私はいつか小豆島へ行ってみたいです。家族みんなで行きたいです。両親は店(コンビニ経営)が忙しいから、なかなか家族旅行に行けません。アルバイトの人件費が高くつくので、夜は両親が交代で店に立ちます。

 小豆島に行けたら、弟たちに風の吹き渡るオリーブ園や、青々とした段々畑、それから大亀を見せてあげたいです。きっと喜ぶでしょう。


 この物語には、戦争で身内を亡くしたり行方のわからない家族がいる子どもがたくさんでてきます。戦争はいやです。でも、島の暮らしの中で、いやな人はでてきません。なのに読んでいて、途中で何度も鼻の奥がツンとしました。

 登場人物のみんなが良い人なのに泣きたくなる不思議な本です。 
 
 電車の中では絶対読まないほうがいいと思います。 

 今、自分の文を読み返したら、弟のことばかり書いてあって、ちょっと照れくさいです。



おわり


佐藤さん。弟さんたちを甲斐甲斐しく世話する、あなたの暮らしぶりが目にみえるようです。なかなかできないことですよ。立派です。
あなたのその経験が、あなた自身を大きく成長させるだろうと信じています。
佐藤さんはお向かいのお婆さんが嫌いなようですね(笑)

二学年国語担当   丹下いつ子




――ほんとうのおわり――





知ったか:知ったかぶり屋さんのこと佐藤さんは作文に口語を使ってしまいました使用例「ハイ!知ったかぁー」などと言います

この佐藤さんも「理想の高校生」の登場人物です。聡明な彼女のことだから、中学生でも大人の矛盾を突いてくるかなって想像しました。

そうそう。佐藤さんの弟たちが婆さんに受けた仕打ちは、ウチの実話です。言われても仕方ないくらい、うるさかったんですよ。ネタにつかえてよかった。

<明日は新妻君の書いた「ほんとうの読書感想文」高校生編です。>


↓佐藤さんの家族思いにぐっときたらお願いします。
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
昔、昔の四国の私のいなかも、そうですし、きっと日本中が・・小豆島と同じ状況だったと思います・・
そこここに人情が溢れていましたし・・村全部、島全部が子供の遊び場だったということもよくわかりますね
私もそうやって遊んできた一人ですから・・
小豆島の岬の分校(映画村)を訪ねたとき、昔、私たちも食べていた野草のスカンポまでおいてあったのにはびっくりでした・・
あの頃のような日本にはもう戻れないかもしれませんが・・
それでも人と人との本当の交わりは、大切にしてゆかねばならないし一番大切なことのような気がしています・・
mimi
2007/08/28 17:28
mimiさん こんばんは。
小豆島をはじめ自然の豊かな場所から子どもたちが育っていけば、もうちょっと日本も変わると思うんですよね。
効率とか合理化とかそんなんばっかですよ。

文中の佐藤さんも心にゆとりのない大人を皮肉ってます。
つる
2007/08/28 21:51
私は55年ほど前に学校の校庭で映画を見ました、子供の頃見たこの映画がなぜか忘れる事が出来ません、先にコメントを書かれている佐藤ゆみこさんの文が印象的です時代が変われどかわらないのは子供の心この本読みあのようなコメント書くゆみこさんの様な子供がよい時代を作ってほしい。
神崎
2007/11/13 12:11
神崎さん
来てくださってありがとう。
>私は55年ほど前に学校の校庭で映画を見ました
「二十四の瞳」ではなく、この物語も映画になっているんでしょうか。知りませんでした。わたしの頭の中の映像と見比べてみたいです。
わたしは壺井栄の書く世界が好きです。いつも手元に置いてあります。気持ちが落ち込むと開きますね。そこは優しいです。
ゆみこさんは「理想の高校生」の中の一人の登場人物なのですが、ちょうど夏休みだったものですから、この「読書感想文」とうたった小説と小説の合間に設けたお喋りの場所にアクセスが集中したんです。そんなわけでアクセスくださっているだろう小中高校生に向けてサービスで書いてみました。
時代変わってもピアスだったりヒップボーンジーンズ姿のゆみこさんはいる筈です。きっとそう思います。
是非またいらしてください。
つる
2007/11/13 13:08
つる殿
1952年若杉ミツオ監督と有りました、またおじゃまさせていただきます。
神崎
2007/11/13 18:28
神崎さん
情報ありがとうございます。何かの機会に観ることはできないものだろうかと考えています。
また来てください。ご希望に添えないかもしれないけれど、しばらくは子どもたちの物語を書いていきます。今の高校生ものが終わったら、たぶん小学生ものを書く予定なんです。壺井栄のような優しい世界が書きたいな。
つる
2007/11/13 20:42
映画の話だが、前にテレビで放映されたことが有るよ、事務の女性がゆう、それならば局をあたれ、ただし作業時間外でだぞ、いっておいた、あてにならんが期待しないでお待ちあれ。
神崎
2007/11/15 21:02
神崎さん。テレビで放映されていたとは知りませんでした。
お手数をかけます。果報は寝て待つと致しましょう。
つる
2007/11/15 23:04
小学校の同級生が二人 この映画にでています。一人は史郎君の役です。
今年で古稀になります。先月 クラス会が島(小豆島)でありました。
史郎君役の同級生に映画のことを話したら、「放映をビデオに撮っている」
「DVDにダビングしてくれんかな」

本日そのDVDが届きました。
この映画に出演した もう一人の同級生は昨年鬼籍に入りました。

映画の物語も大切なのですが、私にとっては背景も宝なのです。
自分ちの段々畑も映っています、泳いだ波止場も遊んだ醤油工場も・・・・・。

一つ一つの画面を繰り返し繰り返して、脳裏にある風景と比較しています。
苗羽小学校
2010/04/17 23:22
苗羽小学校さん
懐かしい記事にコメントをくださりありがとうございます。
同級生が史郎役だったなんて驚きです。
しかもクラス会が小豆島でひらかれただなんて、なんて素敵なことなんでしょう。
わたしの小学校時代の担任の先生は四国出身で、瀬戸内海がどれほど素晴らしいかを聞かせてくれましたから、この物語と相まって、わたしにとってそこは憧れの地です。
DVDの背景が宝とありますが、他の人には見えない心象風景が、苗場小学校さんには見えるんでしょうね。
コメントをいただいて、久しぶりに壺井栄のワールドにひたりました。そう。ここがわたしの原点だった。忘れちゃだめね。
チャンスがあったら、この映画を観たいなあ。
つる
2010/04/21 00:11

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