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zoom RSS 「理想の高校生」高校生ウルトラクイズ選手権〜後編

<<   作成日時 : 2007/07/07 17:33   >>

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photo by NEO HIMEISM 
http://neo-himeism.net/

高校生ウルトラクイズ選手権〜後編
ジャジャン!効果音がはいる。

「では数学の問題です!スイスの数学者オイラーがはじめて表記した虚数単位『i』」

ピンポン!

「ナンジャラホイ高校!」

「imaginary unit!」

ニイケンが言う。きれいなクィーンズ・イングリッシュだ。
相手チームはすこし鼻白む。ちょっとこちらをなめてかかっていたようである。このすきに少しでもポイントを重ねていきたい。

「虚数単位『i』はなんの略でしょう?『imaginary unit』 正解です!ナンジャラホイ高校1ポイントゲット!」

ジャジャン!

「国語問題!中国の作家魯迅(ろじん)が書いた『故郷』の中で主人公の『わ」

ピンポン!

絶妙のタイミングでじゅんぺいが押す。ヒントぎりぎりだ。

「ナンジャラホイ高校!」

「閏土(じゅんど)!」おにいちゃんが答える。

「『故郷』の中で主人公の『わたし』が20数年ぶりにあった幼馴染の名前は誰でしょう?『閏土』正解!ナンジャラホイ高校1ポイント追加で2ポイントゲーットォーッ!!」

ジャジャン!

「次は歴史問題!戦国時代に敵に塩」

ピンポン!

相手の動きを察してじゅんぺいが早めに押してしまった。

「またナンジャラホイこうこうーっだぁーっ!」

「う」答えようとするニイケンを制しておにいちゃんが答える。「武田信玄!」

「戦国時代に敵に塩を送ったという逸話のある上杉謙信ですが送った相手というのは誰?『武田信玄』せいくわぁーいっ!!」
じゅんぺいとニイケンが小さな声で「サンキュ。」とおにいちゃんに言う。
「さあナンジャラホイ高校が追い上げてきたぞ!1ポイント追加され3ポイントゲットだ。ラ・〇ール高校うかうかしていられないぞ!石井くん!先攻していたけど少々敵に塩を送ったか!?」
「・・べつに。」
ラ・〇ール高校の3人は眼鏡をかけている。それぞれ得意のジャンルで担当が決まっているようだった。真ん中のぽっちゃりしている石井くんが理系、右隣のひょろっとした鈴木くんが文系、左隣の小柄な平くんが一般問題担当のようだ。ここまで石井くんがほとんど解答しておりチームのリーダーであるようだ。正解する度(たび)に右手で小さく拳を握り「よし!よし!」といったふうにガッツポーズをする。立て続けに5ポイント獲得していたことでちょっと油断したようだ。まだ2ポイントの差があるのにその表情は硬い。しきりに眼鏡を指で押し上げている。真面目で融通がきかなそうな印象である。ちょっとプライドも高そうだ。
5ポイント対3ポイントからナンジャラホイ高校は音楽のイントロクイズで2ポイント、美術問題で1ポイントを獲得したもののラ・〇ール高校も確実に取れるポイントを刻でんくる。なかなかその差の2ポイントが縮まらないまま8ポイント対6ポイントになった。ラ・〇ール高校があと1ポイントとれば優勝までリーチだ。
ジャジャン!
「つぎの問題!毎年夏と冬に神社で行われる厄払いの大祓い式といえば」
ピンポン!ピンポン!両校の解答ボタン横のパネルが立ち上がる。
「ラ・〇ール高校が早い!」リーチを急ぐあまりラ・〇ール高校も早押しで勝負に出た。
「茅の輪くぐり!」平くんが答える。
ブブー!「チッ!」石井くんが小さく舌打ちする。平くんは少し「しまった」というような顔だ。
「残念!不正解です!まだ問題が途中だがナンジャラホイ高校も押している!ナンジャラホイ高校!」
「8の字!」ニイケンが答える。
ブブー!
「問題を続けます。厄払いの大祓い式といえば『茅野の輪くぐり』ですが別名は何という?正解は『胎内くぐり』でした。残念!『茅の輪くぐり』はたしかに8の字にくぐりますがナンジャラホイ高校深読みしすぎたかぁああっ!」 
じゅんぺいが小さく「ドンマイ」とニイケンに声をかける。ニイケンはそれに頷く。おにいちゃんは大きな声で「ドンマイ!」と言った。その視線の先の平くんに言うように、そしてじゅんぺいに言うように。視線が合った平君は困ったように少し笑ったような気がした。ニイケンは「おう。」と言った。
これで両校お手つきのペナルティがつき7ポイント対5ポイント。
ジャジャン!
「次は四択問題!東京と言えば江戸。江戸時代に 徳川家康が好んで行った鷹狩は、5代将軍綱吉の「生類憐れみの令」以降、8代将軍吉宗が再興するまで行われませんでした。綱吉はそれまで飼っていた鷹も処分するよう命じましたが、どのような処分だったでしょう?
1「生類憐れみの令」に反するが殺された 。
2すべて朝廷へ献上された 。
3伝馬町の牢屋に収監された 。
4 」
ピンポン! まだ問題が言い終わらないうちに解答ボタンが鳴った。
「ラ・〇ール高校!」
「4の伊豆七島の新島に放たれた!」鈴木くんが答える。
「正解!」ラ・〇ール高校8ポイント。
鈴木くんは文系問題のなかでも特に歴史に強かった。作者名や作品名を丸暗記することが多いなか彼は本を読んだり調べたりしなければわからないことをよく知っていた。おにいちゃんは本選が始まってから鈴木くんのことはずっと一目置いてきた。頭がいい人というのはほんとうにこう言う人をいうんだろうなあと何度も舌を巻く解答を見てきた。でも今はこっちのチームも負けるわけにはいかない。さっきはエールをおくったけれどもそれはそれこれはこれだ。
ジャジャン!
「もうひとつ江戸問題!遠山の金さんといえば遠山金四郎景元のこと。天保の改革に時の北町奉行ですが その時の南町奉行は誰?」
ピンポン!ピンポン!両校とも解答ボタンが鳴る。じゅんぺいに競り勝とうなんて10年早い。もちろん、
「ナンジャラホイ高校!」
「鳥居耀蔵!」ニイケン答える。ナンジャラホイ高校6ポイント。
「正解!さあ次いこう!
超新星は恒星がその一生を終える時に引き起こす大規模な爆発現象です。銀河系内で最後に」
ピンポン!
「ラ・〇ール高校っ!」
「ケプラーの超新星!」と石井くん。鼻が異様にふくらんでいる。酸素が足りなくなってきたのかもしれない。携帯用酸素ボンベをプレゼントしたくなるじゅんぺい。
「銀河系内で最後に発見された1604年の超新星は何?『ケプラーの超新星』正解!!ラ・〇ール高校9ポイント獲得で優勝に王手がかかったぁあああ!!!」

ここまできたらラ・〇ール高校もお手つき覚悟の早押しはないだろう。三連覇がかかっているのだ。期待と重圧でいっぱいいっぱいのようだ。ここからはこちらもじっくり問題に取り組むことができる。こちらもミスはできないが精神的にかなり有利だ。
「慎重にいこうぜ。」とニイケン。「OK。」と二人。

「ナンジャラホイ高校!相手はリーチがかかった。このまま指をくわえて終わるわけにはいかないだろう!ニイケン!じゅんぺい!おにいちゃん!どうだ!君達の最後の意地を見せてくれぃっっ!!ヒイィ〜!!!」
司会者もこちらチームに肩入れしているのかはたまたこの番組に出世がかかっているのかもはや脳の血管が切れそうな勢いである。
「ここで両チーム深呼吸しようかぁっ!」おまえがしろよとじゅんぺいは思った。
「石井くん。あと1ポイントだ。ここまでチームを引っ張ってきて今の心境を聞かせてくれ!」
「かんばります。」
「さああとがないナンジャラホイ高校!ニイケン!遠いロンドンで君のお父さんも応援している。気持ちを聞かせてくれっ!」
ロンドンで放映するかよと思いながら
「楽しんでます。」とニイケンは答えた。
「ていうか。」とじゅんぺい。「野球だって9回裏ノーアウト満塁からがおもしろいっしょ。」
会場からはひゅーひゅーと冷やかしの口笛が鳴った。
でもけっして負け惜しみなんかじゃなかった。お兄ちゃんチームは三人ともこの状況にわくわくしていたのだ。
ジャジャン!
「問題!4年に一度開催されるサッカーワールドカップでまだ優勝していない国は次のうちどれ?
1ドイツ2イタリア3フランス4イングランド」
ピンポン!
「ナンジャラホイ高校!」
「1のドイツ!ちなみ1990年西ドイツが優勝しましたが1991年以降東西ドイツが統一されてからは優勝したことはありません。」ニイケンが答える。7ポイント。
「なんだよ。」マイクにはいらないようにじゅんぺいがニイケンに言う。
「なんだよ。」とニイケン。
「西ドイツの決勝ゴール決めた奴なら答えられた。」
「誰だよ。」
「ブレーメだよ。相手はアルゼンチンでマラドーナ出てた。」
「知るかよ。」
「あはは。」おにいちゃんが笑う。

そのあと信じられないことだが相手がミスをおそれて手をださないうちにナンジャラホイ高校は2ポイント取って9対9としてしまった。両校とも優勝にリーチ。
「さあっ!泣いても笑ってもこれが最終問題になるのくわぁぁ!!!よおぉぉっく聞いてくれぃっ!!!
問題ですぅっ!フェルマーの大定理といえば360年の長きにわたって証明されることはありませんでしたが1994年ついにアンドリュー・ワイズによってそれに終止符がうたれました!
ワイズは前年の1993年に谷山・志村予想に基づいて論文を発表したのですがそれには一箇所間違いがありました!最終的に1994年ある証明に基づいて完成をみるわけですがその証明とは何でしょう!?」
難しい問題だった。少しの沈黙のあと静かに解答ボタンが押された。
ピン・ポン。
「ラ・〇ール高校だあぁっ!」
ふううっといったふうに大きく息をふいて平くんが言った。
「コリヴァギン=フラッハ法と岩澤理論です。」
「せいくわぁ〜いぃ〜!!!!
ラ・〇ール高校ゆうぅしょぉおおおおおおっ!!!!!!三年連続でラ・〇ール高校が全国高校生選手権の頂点にたちましとぅわぁああああ!!!!」
大きなガッツポーズをする石井くん。そのまま左の平くんにハイタッチを求めそのテンションにたじろぎながら求めに応じる平くん、右を向いて同じように鈴木くんともハイタッチ。石井くんはよほど嬉しかったのかピョンピョンと飛び跳ねたあと崩れ落ちんばかりにテーブルに突っ伏して号泣している。かと思ったらしたたかテーブルに鼻を打って鼻血をおさえているようだ。全国に鼻血ブーはプライドが許さないだろう。眼鏡も吹っ飛んだ。その石井くんの頭上で平くんと鈴木くんは笑顔で握手を交わしている。会場の人々もスタッフもは勝者と敗者に惜しみない拍手を贈っている。

喜びの勝者の横で悔しがるどころかすがすがしい笑顔で互いの健闘を称えあう敗者は印象的だった。涙はない。むしろあっけらかんとしているくらいだ。だがその姿は逆に人々の心の中に深く刻まれる事になるのである。このあと一浪したおにいちゃんが大学3年の就活中に名もない小さな、がしかしその業界では知る人ぞ知る世界的シェアを誇る技術を持ったとある企業の面接で人事担当官から一発採用をいただく決め手になるのがこの決勝戦であったことはここではまあいい。

ニイケンが言う。
「さすがに最後の問題は難しかったな。」
「ありゃイジメだ。」とじゅんぺい。
「あはは。」とおにいちゃん。
「やっぱあいつらスゲーな。」ニイケン。
「ほんとスゲーよ。」おにいちゃん。
「俺なんだかものすごく数学の勉強がしたくなってきたよ。」ニイケン。
「ああ。」おにいちゃん。
「マジで?」とじゅんぺい。
おにいちゃんは高く遠い空を見上げている。
ああそうだ。ニイケンとじゅんぺいは思った。おにいちゃんがこうしている時はいつもそうだ。
何も言わなくともおにいちゃんがそうしているとまるで明治維新の志士達のように高い志と強い信念を感じる。竜馬が懐手(ふところで)をして太平洋を臨んでいるかのようだ。こいつといるとなんでもできるような気にさせてくれる。はじめて会った時からそうだった。そしてこれからもそうだろう。三人はいつまでも夏の終わりを告げている空を見ているのであった。




喉の渇きをおぼえて枕元の水筒に手を伸ばす。この水筒もこどもがすっかり大きくなってしまったいまとなっては使わなくなって久しい。麦茶を入れて持ってきてあった。なんだか少々カビ臭いでもないが鼻が詰まっているせいかよく味もわからない。スポーツ飲料かと思えばそんな気がしないでもない。ああそうだ。これはさっきおにいちゃんが雨の中マイチャリで坂の下の自販機で買ってきてくれたものだ。ウトウトしている間にそっと入れ替えてくれたのだろう。

それのしてもさっきはほんとうに腹が立った。やっとの思いで階下へ下りてゆくとさと子に気がついた家人が大丈夫かなどと声をかけてくれたのだがしかし決してTVのスポーツニュースから目をそらせることもない。居間も洗濯機の前の洗濯篭もキッチンのシンクも想像通りの有様だった。眠っているさと子を起こさないようにと物音をたてないよう気遣いしてくれたのであろうか。いやそれは大きな間違いだろう。小腹が減って下りていったもののしゃくにさわって何をしに行ったのだかすっかり忘れてドンドンと当てつけに大きな足音をたてて二階に戻ってきたのだった。

だがひとしきり腹をたて終わるとやはりすこし小腹がすいている。どうしたものかと考えあぐねていると思いだした。
そうだ、そうだ、すっかり忘れていたけれどもうすこしするとおにいちゃんがさと子の好きな塩分9パーセントのはちみつ梅干を乗せたレトルトのおかゆをチンして枕元に届けてくれるはずだった。どうも最近忘れっぽくていけない。
待遠しい気持ちでおにいちゃんのことを考えていると心が晴れ晴れとしてくるのだった。なぜならおにいちゃんにはいやなところがひとつもないのだから。


もうすぐ熱もひくだろう。





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